【完結】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

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一章~伊角光希編~

60 ベルクール家とりんご

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「りんごのシャンパーニュ」
 ポツリと復唱する。
「シャンパーニュが、どうした?」
「あ、いえ。そう言えば、僕はアルコールが苦手なのに、パーティーの日に渡されたドリンクがりんごのシャンパーニュだったなって、紅茶の香りで思い出したんです」

 でも、誰もが僕がアルコールが苦手だと知っている訳でもない。
 ただ思い出しただけだと、付け加えた。

「アシルが記憶をどの程度失っているのか、私も判断が難しい。ベルクール家が代々りんごのシャンパーニュを製造しているのは忘れているようだね」
「そうなんですね。忘れてしまっています。それで、庭にりんごの木が?」
「あぁ、あれは四代目が妻の為に植えたものだ。趣味の多い人だったと聞いている。りんごとシャンパーニュが好きな妻の為に、どうにか両方を一度に楽しめる方法がないかと思い立ったのが始まりでね、今ではこことは別の場所にりんご園まである」
「じゃあパーティーで飲んだのも、ベルクール家が作ったシャンパーニュだったんですね」
「あぁ、そうだ……そうだな。甘い香りとアルコールで、薬の匂いを消すに丁度良かったということか。ようやく、アシルの言っている意味が理解できた。私としたことが……」

 エリアス様の言葉で、僕もやっと“アシル“が何を言いたかったのかが、理解できた。

「知っていたんですね。犯人は」
「そういうことになる」

 アシルが自然に発情誘発剤を飲む、絶好の機会を狙っていたんだ。
 最初から狙われていたとは分かっていても、現実を突きつけられて身震いをした。
 エリアス様の表情からは、何を考えているのか読み取れない。

「あの、りんご園は遠いですか? 僕も見たいです」

 せっかくの朝食が暗い雰囲気になるものも嫌なので、話題をズラす事にした。

「馬車を使えばすぐに行ける。体は本当に大丈夫なのか?」
「お尻を打ったので、そこはじっとしててもズキズキしますが、ただの打ち身なので大丈夫です」
「では、近々視察も兼ねて行くとしよう」

 朝食を終えた頃、さっきの侍女が顔のガーゼを交換すると言うと、エリアス様が自分がすると言ってガーゼを受け取った。

「キレてますか?」
「擦り傷程度だ。それよりも鬱血の方が目立つから、隠しておいた方がいいだろう」

 僕が鏡を見ないように配慮してくれている。
 キリアン様に叩かれた左頬は、触れられると痛むが、消毒液が染みることはなかった。

「……やはりまだ、キリアンの匂いが取れていないな。昨日は、そんなに上書きができなかったから」
「匂い? 上書き? なんのことです?」
「私の匂いの上からキリアンがマーキングをしたのだろう? わざとらしく、唇や首筋にしっかりとね。昨日はアシルが眠っていたから、最低限しか匂いの上書きが出来なかったんだ。今から完全にマーキングさせてもらう」
「はい、お願いします」

 エリアス様からマーキングされていたのさえ知らなかったが、キリアン様の匂いを付けると言うのも本当だったんだと、今になって理解した。
 αはΩに自分のフェロモンの匂いをつけられるのか。
 思い返せば、確かに無理やり唇を奪われ、執拗に首に顔を埋めていた。
 あれがマーキング。

 ん? ってことは、これから僕はエリアス様からそれをされるということ?

 理解まで時間がかかり過ぎていた。
 もう返事をしてしまっているではないか。

 エリアス様はソファーへと移動しようと手を取る。
 急にドキドキしてきた。

「ろ、ロラの所へは、まだ行かないんですか?」
「そう焦るな。ロラだって、朝イチから尋ねられては困るだろう。それにロラの見舞いは、この後湯浴みもして、綺麗に整えてからだ」

 そう言えば、お風呂に入らないまま寝てしまったことも思い出した。

「エリアス様、先に湯浴みを……」
「いけない。一刻も早く、キリアンの匂いを消さなければ、私の気が狂いそうだ。さぁ、ここへ座って」

 指示されたのは、エリアス様の腿だった。
 あんなに体を重ねても、ヒートも起こしてない時に引っ付いているのは照れてしまう。
 それでもエリアス様はスマートに僕を引き寄せ、腿に座らせた。

「ん……んん、ふぅ……ん」
 座るや否や、唇を舐め取られる。
「アシルに触れるなど、愚かな奴め。完全に匂いが消えるまで続けさせてくれ」
「は……い……」
 アップルティーの味がしたが、それもすぐにエリアス様のフェロモンの香りに掻き消された。

 エリアス様は容赦なく口腔に舌を侵入させ、蹂躙していく。
 淫靡な音を立て、ヒートを起こすよう誘われているかのようなキスを続けた。
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