【完結】公爵様を寝取った悪役令息に転生しましたが、子供が産まれるので幸せになるために、この事件解決させていただきます。

亜沙美多郎

文字の大きさ
152 / 235
三章〜クレール・ベルクール編〜

1 初めての発情期

しおりを挟む
「ねぇ、お兄ちゃま。とっても甘い香りがする」
「本当ですね。もしかして、何か菓子を隠してますか?」

 ノアとノランのこの一言から、僕のバース性が発症したと悟った。
 一緒にいたアシルお母様も、目を丸くしてこっちを見た。

「クレール、部屋へ……」
「分かりました。二人をお願いします」

 リビングを出て、自室へと急ぐ。
 廊下の途中でライリーに会ったので、発情期だから誰も部屋に近づけないよう頼んでおいた。
 きっと、ノアとノランは大人の隙を見て会いに来るだろう。

 十六歳になってすぐだ。
 バース性を発症するに、概ね平均的な年齢だと言える。

「アシルと同じくらい、オメガ性が強いかもしれない」
 頭の中で呟きながら、自室のドアの鍵をかけると、すぐさまベッドに移動した。

 クレールになって初めての発情期。
 まだ体が熱っぽさを感じる程度ではあるが、初めてでここまで急速に症状が出るということは、バース性が安定する頃には強いヒートを起こすと覚悟をしておくのが賢明だ。

 コーキとしての人格は残っている。
 っと言うより、クレールの成長が、コーキに追いついてきたと言う方が正解だ。
 やはり生まれたばかりのあの頃は、子供の体に大人の人格が入っても、適合しなかったと考えられる。

 人格が分裂したような症状を患ったのも、一種の拒否反応だったと考えるのが妥当だろう。
 今でも意識を失うことがあるが、子供の頃に比べれば、その回数は減っている。
 なので、コーキとしての意識のままクレールとして生活できているということだ。

「しかし、アルファの匂いもないのはキツイな」
 ベッドに潜り込み、自分で慰めるが、前世ではエリアス様がいてくれたし、そのまた前世では発情期をほぼ経験していない。

 一から発情期を経験するのは、これが初めてなのだ。

 幸い、一度果てれば一息つけた。
 まだこんな感じが続くかもしれないが、アシルの時の程、意識を失うレベルのことはなさそうで安堵した。

 オメガらしいオメガには、やはりアルファの存在は必要なのだろう。

 アシルお母様は運良く運命の番に見つけてもらったけれど、そんな都合よく見つかるものではない。貴族故、アルファと出会うのは容易い環境にいる。しかしアルファなら誰でもいいわけでもないし……。

「って、我が儘はいけないよな。アシルお母様は僕に幸せになってほしいんだもん。もしも縁談が入った時は、断れないや」
 まだ高等部を卒業もしていないから、そんな話もまだ先のこと。
 でも、相性のいいアルファと巡り会えるまで、このヒートを一人で乗りこなければいけないのか。
 それは結構辛いものがあると、早くも落胆する。
 
 もっと社交的でいれば良かったと後悔した。
 初等部に入った頃から、周りに馴染むのには苦労しなかったが、誰とでも当たり障りなく付き合って来たので、親しい友人と言えるまでの学友はいなかった。
 それをズルズルと今まで同じ感じで中等部、高等部と来ている。

 唯一同じ薬学研究部で気の合う友達はできたが、その子はベータだと言っていた。まず彼は僕の恋人にはならないだろう。いや、ずっと友達でいられれば、それに越したことはないのだが……。
 
 それよりも、ノアとノランは誰よりも早く僕のフェロモンの香りに気付いた事には驚いた。
 二人とも、もしかするとアルファかもしれない。
 先週バース性の検査を受けたと言っていたから、その結果もそろそろ分かるだろう。

「あぁ、もう一緒には寝られなくなっちゃったな」
 僕の方が少し寂しいと思ってしまった。

 念願の弟が産まれてからと言うものの、完全に弟バカなお兄ちゃんだ。
 これを機に、弟離れをしろと神様に言われているのかもしれない。

 ベッドで仰向けに寝転ぶ。
 まだ軽い症状で済んでいるとはいえ、これは三日は部屋から出られないだろうな。
 不貞腐れていると、ドアをノックする音が聞こえた。

『お兄ちゃま』
『クレールお兄様』
「え? ノアにノラン? もう大人をすり抜けて来たの!?」
 二人の身のこなしに驚きを隠せない。
 でも、ドアは開けてあげられないよ……。

 ドアの向こうで必死に僕の名前を呼ぶ二人の姿を思うと、胸が痛む。これを僕自身が耐えなければいけない。

「あぁ、もうノアとノランに会いたい」
 シーツを頭から被って聞こえないふりをした。
 早くライリーが誰かが見つけて連れて行ってくれないと、すぐに意志を曲げそうだ。
 やっぱりオメガじゃない方が良かったかもしれないなんて、早くもバース性を恨む僕だった。

 
しおりを挟む
感想 200

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...