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三章〜クレール・ベルクール編〜
1 初めての発情期
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「ねぇ、お兄ちゃま。とっても甘い香りがする」
「本当ですね。もしかして、何か菓子を隠してますか?」
ノアとノランのこの一言から、僕のバース性が発症したと悟った。
一緒にいたアシルお母様も、目を丸くしてこっちを見た。
「クレール、部屋へ……」
「分かりました。二人をお願いします」
リビングを出て、自室へと急ぐ。
廊下の途中でライリーに会ったので、発情期だから誰も部屋に近づけないよう頼んでおいた。
きっと、ノアとノランは大人の隙を見て会いに来るだろう。
十六歳になってすぐだ。
バース性を発症するに、概ね平均的な年齢だと言える。
「アシルと同じくらい、オメガ性が強いかもしれない」
頭の中で呟きながら、自室のドアの鍵をかけると、すぐさまベッドに移動した。
クレールになって初めての発情期。
まだ体が熱っぽさを感じる程度ではあるが、初めてでここまで急速に症状が出るということは、バース性が安定する頃には強いヒートを起こすと覚悟をしておくのが賢明だ。
コーキとしての人格は残っている。
っと言うより、クレールの成長が、コーキに追いついてきたと言う方が正解だ。
やはり生まれたばかりのあの頃は、子供の体に大人の人格が入っても、適合しなかったと考えられる。
人格が分裂したような症状を患ったのも、一種の拒否反応だったと考えるのが妥当だろう。
今でも意識を失うことがあるが、子供の頃に比べれば、その回数は減っている。
なので、コーキとしての意識のままクレールとして生活できているということだ。
「しかし、アルファの匂いもないのはキツイな」
ベッドに潜り込み、自分で慰めるが、前世ではエリアス様がいてくれたし、そのまた前世では発情期をほぼ経験していない。
一から発情期を経験するのは、これが初めてなのだ。
幸い、一度果てれば一息つけた。
まだこんな感じが続くかもしれないが、アシルの時の程、意識を失うレベルのことはなさそうで安堵した。
オメガらしいオメガには、やはりアルファの存在は必要なのだろう。
アシルお母様は運良く運命の番に見つけてもらったけれど、そんな都合よく見つかるものではない。貴族故、アルファと出会うのは容易い環境にいる。しかしアルファなら誰でもいいわけでもないし……。
「って、我が儘はいけないよな。アシルお母様は僕に幸せになってほしいんだもん。もしも縁談が入った時は、断れないや」
まだ高等部を卒業もしていないから、そんな話もまだ先のこと。
でも、相性のいいアルファと巡り会えるまで、このヒートを一人で乗りこなければいけないのか。
それは結構辛いものがあると、早くも落胆する。
もっと社交的でいれば良かったと後悔した。
初等部に入った頃から、周りに馴染むのには苦労しなかったが、誰とでも当たり障りなく付き合って来たので、親しい友人と言えるまでの学友はいなかった。
それをズルズルと今まで同じ感じで中等部、高等部と来ている。
唯一同じ薬学研究部で気の合う友達はできたが、その子はベータだと言っていた。まず彼は僕の恋人にはならないだろう。いや、ずっと友達でいられれば、それに越したことはないのだが……。
それよりも、ノアとノランは誰よりも早く僕のフェロモンの香りに気付いた事には驚いた。
二人とも、もしかするとアルファかもしれない。
先週バース性の検査を受けたと言っていたから、その結果もそろそろ分かるだろう。
「あぁ、もう一緒には寝られなくなっちゃったな」
僕の方が少し寂しいと思ってしまった。
念願の弟が産まれてからと言うものの、完全に弟バカなお兄ちゃんだ。
これを機に、弟離れをしろと神様に言われているのかもしれない。
ベッドで仰向けに寝転ぶ。
まだ軽い症状で済んでいるとはいえ、これは三日は部屋から出られないだろうな。
不貞腐れていると、ドアをノックする音が聞こえた。
『お兄ちゃま』
『クレールお兄様』
「え? ノアにノラン? もう大人をすり抜けて来たの!?」
二人の身のこなしに驚きを隠せない。
でも、ドアは開けてあげられないよ……。
ドアの向こうで必死に僕の名前を呼ぶ二人の姿を思うと、胸が痛む。これを僕自身が耐えなければいけない。
「あぁ、もうノアとノランに会いたい」
シーツを頭から被って聞こえないふりをした。
早くライリーが誰かが見つけて連れて行ってくれないと、すぐに意志を曲げそうだ。
やっぱりオメガじゃない方が良かったかもしれないなんて、早くもバース性を恨む僕だった。
「本当ですね。もしかして、何か菓子を隠してますか?」
ノアとノランのこの一言から、僕のバース性が発症したと悟った。
一緒にいたアシルお母様も、目を丸くしてこっちを見た。
「クレール、部屋へ……」
「分かりました。二人をお願いします」
リビングを出て、自室へと急ぐ。
廊下の途中でライリーに会ったので、発情期だから誰も部屋に近づけないよう頼んでおいた。
きっと、ノアとノランは大人の隙を見て会いに来るだろう。
十六歳になってすぐだ。
バース性を発症するに、概ね平均的な年齢だと言える。
「アシルと同じくらい、オメガ性が強いかもしれない」
頭の中で呟きながら、自室のドアの鍵をかけると、すぐさまベッドに移動した。
クレールになって初めての発情期。
まだ体が熱っぽさを感じる程度ではあるが、初めてでここまで急速に症状が出るということは、バース性が安定する頃には強いヒートを起こすと覚悟をしておくのが賢明だ。
コーキとしての人格は残っている。
っと言うより、クレールの成長が、コーキに追いついてきたと言う方が正解だ。
やはり生まれたばかりのあの頃は、子供の体に大人の人格が入っても、適合しなかったと考えられる。
人格が分裂したような症状を患ったのも、一種の拒否反応だったと考えるのが妥当だろう。
今でも意識を失うことがあるが、子供の頃に比べれば、その回数は減っている。
なので、コーキとしての意識のままクレールとして生活できているということだ。
「しかし、アルファの匂いもないのはキツイな」
ベッドに潜り込み、自分で慰めるが、前世ではエリアス様がいてくれたし、そのまた前世では発情期をほぼ経験していない。
一から発情期を経験するのは、これが初めてなのだ。
幸い、一度果てれば一息つけた。
まだこんな感じが続くかもしれないが、アシルの時の程、意識を失うレベルのことはなさそうで安堵した。
オメガらしいオメガには、やはりアルファの存在は必要なのだろう。
アシルお母様は運良く運命の番に見つけてもらったけれど、そんな都合よく見つかるものではない。貴族故、アルファと出会うのは容易い環境にいる。しかしアルファなら誰でもいいわけでもないし……。
「って、我が儘はいけないよな。アシルお母様は僕に幸せになってほしいんだもん。もしも縁談が入った時は、断れないや」
まだ高等部を卒業もしていないから、そんな話もまだ先のこと。
でも、相性のいいアルファと巡り会えるまで、このヒートを一人で乗りこなければいけないのか。
それは結構辛いものがあると、早くも落胆する。
もっと社交的でいれば良かったと後悔した。
初等部に入った頃から、周りに馴染むのには苦労しなかったが、誰とでも当たり障りなく付き合って来たので、親しい友人と言えるまでの学友はいなかった。
それをズルズルと今まで同じ感じで中等部、高等部と来ている。
唯一同じ薬学研究部で気の合う友達はできたが、その子はベータだと言っていた。まず彼は僕の恋人にはならないだろう。いや、ずっと友達でいられれば、それに越したことはないのだが……。
それよりも、ノアとノランは誰よりも早く僕のフェロモンの香りに気付いた事には驚いた。
二人とも、もしかするとアルファかもしれない。
先週バース性の検査を受けたと言っていたから、その結果もそろそろ分かるだろう。
「あぁ、もう一緒には寝られなくなっちゃったな」
僕の方が少し寂しいと思ってしまった。
念願の弟が産まれてからと言うものの、完全に弟バカなお兄ちゃんだ。
これを機に、弟離れをしろと神様に言われているのかもしれない。
ベッドで仰向けに寝転ぶ。
まだ軽い症状で済んでいるとはいえ、これは三日は部屋から出られないだろうな。
不貞腐れていると、ドアをノックする音が聞こえた。
『お兄ちゃま』
『クレールお兄様』
「え? ノアにノラン? もう大人をすり抜けて来たの!?」
二人の身のこなしに驚きを隠せない。
でも、ドアは開けてあげられないよ……。
ドアの向こうで必死に僕の名前を呼ぶ二人の姿を思うと、胸が痛む。これを僕自身が耐えなければいけない。
「あぁ、もうノアとノランに会いたい」
シーツを頭から被って聞こえないふりをした。
早くライリーが誰かが見つけて連れて行ってくれないと、すぐに意志を曲げそうだ。
やっぱりオメガじゃない方が良かったかもしれないなんて、早くもバース性を恨む僕だった。
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