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三章〜クレール・ベルクール編〜
49 アルファ性の強いヴィクトールと、オメガ性の弱いクレール。
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ヴィクトール様と番になった。
頸に疼痛を感じる。発情を促された時、ヴィクトール様のアルファ性の強さを実感した。
ラット状態に入っても、その瞳の奥までは獣にはなっていなかった。しかし、僕の発情を呼び起こしたあのほんの数分の間は、何かに取り憑かれたように見えた。
本能に支配されていたかのようだった。
ヴィクトール様は僕の体を拭きながら、自分が特別なアルファだというのは検査をした時点で分かっていたと言う。僅か十歳でそこまで診断されるのは珍しい。それほど、アルファ性が強いということだ。
「しかし、どんなオメガに対しても私のアルファ性が反応するわけではない。余程オメガ性の強い人なら反応したかもしれないが、街に出ない限りはオメガ自体が殆どいない環境だろう? だから、クレールに再会するまでは、本当に自分のアルファ性が強いのかを疑っていたほどだ」
「そうだったんですね」
僕と再会した瞬間、自分の中の猛獣に脳を支配されたような感覚に陥ったと話した。
そしてそれは、僕の発情を促した時も同じ症状だったと。
ヴィクトール様は、たった一回僕のフェロモンに当てられただけで、アルファ性をコントロールできるようになったということか。
大抵のアルファは、自分の意思をコントロールできずにオメガを襲うというのに。
ヴィクトール様は当たり前のように言うが、研究者としては彼のコントロール能力には驚きと興味を隠しきれない。
つい色々聞きたくなってしまう研究者としていけない癖を、なんとか抑え込んだ。
「これ、本当に番になれてるんですね」
そっと自分の首元に手を添える。鏡で見ると、きっと痛々しい痕になっているだろう歯型が刻まれている。
「異例だろうが、番になれてるはずだ。クレール、キスをさせてくれ」
ビクトール様が隣に寝転び、裸のままで抱きしめ、口付ける。
「もし今日、クレールが私を見てヒートを起こした時は、番になると決めていた。返事を急がしてしまってすまなかった」
「そんな、僕も番になれて喜んでるんです。オメガ性があまりにも弱くて、研究室にも自分から申し出るまで、誰にも気付かれないほどでした。ヴィクトール様と再会して、ヒートを起こしたとしても、オメガとしての機能が働かなかったらどうしようかと心配していました。もし、この体が使い物にならなければ、ヴィクトール様に嫌われてしまうんじゃないかって」
「私に嫌われたくないから、無理矢理でも一つになろうとしたというのか? 私はそんなことでクレールを嫌いになったりしない。もう何年、君を想って過ごしてきたと思ってるんだ。四歳の頃からだぞ? クレールが存在してくれていることだけで、幸せだと言える」
ヴィクトール様は、どうやら僕のオメガ性の弱さで中々挿入できなかったことが、今後トラウマになると勘違いをしたようだった。
「クレールにトラウマを与えなくてよかった」
と言ってくれたので、胸を撫で下ろす。
「ヴィクトール様ほどアルファ性が強いのがよかったのだと思います」
「違うよ、私たちが運命の番だからだ。そう捉えた方がロマンチックじゃないか。真実は神様しか知り得ないのだから」
「そうですね。僕もそうだと信じます」
ヴィクトール様の言葉に救われる。
「クレールの発情期が明けるまではこの部屋で過ごそう。後で滞在期間を延長してもらう。その後で、みんなに報告をしよう」
「じゃあ、一週間近くヴィクトール様と二人きりでいられるんですね」
「そうだ。嬉しくて仕方ない。今まで我慢した甲斐があったよ」
休憩をした後、湯浴みをしようと話し合った。
無理をさせたから、今はまだ危ないと、僕の体を気にかけてくれる。
僕は内心ホッとした。
すごく気持ち良かったし、満たされた。もう、前世の僕ではない。
頸に疼痛を感じる。発情を促された時、ヴィクトール様のアルファ性の強さを実感した。
ラット状態に入っても、その瞳の奥までは獣にはなっていなかった。しかし、僕の発情を呼び起こしたあのほんの数分の間は、何かに取り憑かれたように見えた。
本能に支配されていたかのようだった。
ヴィクトール様は僕の体を拭きながら、自分が特別なアルファだというのは検査をした時点で分かっていたと言う。僅か十歳でそこまで診断されるのは珍しい。それほど、アルファ性が強いということだ。
「しかし、どんなオメガに対しても私のアルファ性が反応するわけではない。余程オメガ性の強い人なら反応したかもしれないが、街に出ない限りはオメガ自体が殆どいない環境だろう? だから、クレールに再会するまでは、本当に自分のアルファ性が強いのかを疑っていたほどだ」
「そうだったんですね」
僕と再会した瞬間、自分の中の猛獣に脳を支配されたような感覚に陥ったと話した。
そしてそれは、僕の発情を促した時も同じ症状だったと。
ヴィクトール様は、たった一回僕のフェロモンに当てられただけで、アルファ性をコントロールできるようになったということか。
大抵のアルファは、自分の意思をコントロールできずにオメガを襲うというのに。
ヴィクトール様は当たり前のように言うが、研究者としては彼のコントロール能力には驚きと興味を隠しきれない。
つい色々聞きたくなってしまう研究者としていけない癖を、なんとか抑え込んだ。
「これ、本当に番になれてるんですね」
そっと自分の首元に手を添える。鏡で見ると、きっと痛々しい痕になっているだろう歯型が刻まれている。
「異例だろうが、番になれてるはずだ。クレール、キスをさせてくれ」
ビクトール様が隣に寝転び、裸のままで抱きしめ、口付ける。
「もし今日、クレールが私を見てヒートを起こした時は、番になると決めていた。返事を急がしてしまってすまなかった」
「そんな、僕も番になれて喜んでるんです。オメガ性があまりにも弱くて、研究室にも自分から申し出るまで、誰にも気付かれないほどでした。ヴィクトール様と再会して、ヒートを起こしたとしても、オメガとしての機能が働かなかったらどうしようかと心配していました。もし、この体が使い物にならなければ、ヴィクトール様に嫌われてしまうんじゃないかって」
「私に嫌われたくないから、無理矢理でも一つになろうとしたというのか? 私はそんなことでクレールを嫌いになったりしない。もう何年、君を想って過ごしてきたと思ってるんだ。四歳の頃からだぞ? クレールが存在してくれていることだけで、幸せだと言える」
ヴィクトール様は、どうやら僕のオメガ性の弱さで中々挿入できなかったことが、今後トラウマになると勘違いをしたようだった。
「クレールにトラウマを与えなくてよかった」
と言ってくれたので、胸を撫で下ろす。
「ヴィクトール様ほどアルファ性が強いのがよかったのだと思います」
「違うよ、私たちが運命の番だからだ。そう捉えた方がロマンチックじゃないか。真実は神様しか知り得ないのだから」
「そうですね。僕もそうだと信じます」
ヴィクトール様の言葉に救われる。
「クレールの発情期が明けるまではこの部屋で過ごそう。後で滞在期間を延長してもらう。その後で、みんなに報告をしよう」
「じゃあ、一週間近くヴィクトール様と二人きりでいられるんですね」
「そうだ。嬉しくて仕方ない。今まで我慢した甲斐があったよ」
休憩をした後、湯浴みをしようと話し合った。
無理をさせたから、今はまだ危ないと、僕の体を気にかけてくれる。
僕は内心ホッとした。
すごく気持ち良かったし、満たされた。もう、前世の僕ではない。
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