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三章〜クレール・ベルクール編〜
50 ヴィクトールの戦略
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一度、再会を果たしつつも、更にそれから二年間も会えなかった僕とヴィクトール様は、片時も離れず発情期の期間を過ごした。
二人で肌を寄せ合い微睡んでいつだけでも心地よい。
二人の会話はもっぱら今後の計画だった。
ヴィクトール様は、番になれたからマルティネス邸で一緒に住んで欲しいと言う。
しかし、研究室に引き篭もりがちな僕は、すぐに同棲とまで考えが及んでいなかった。
嬉しい気持ちもあるし、一緒に暮らせたらどんなに楽しいだろうか……と思いを馳せる。
目を覚ました時、目の前で眠るヴィクトール様を眺めて過ごしたり、時間が空いたらお茶をしたり、一緒に出かけたりもしたい。
それでも、僕は研究室で新薬の開発に携わっている。
深夜に及ぶ研究、休日にもすることは沢山あった。
僕にとっては仕事もヴィクトール様と同じくらい大切なのだ。
それを伝えると、ヴィクトール様も「仕事は大切にしてほしい。例え私と結婚した後だって、君は働くべきだ」と言ってくれている。きっとエリアスお父様や、マルティネス王子を通じて、いかに僕が研究に没頭しているかを聞いているのだろうと思われた。
その上で、やはり深夜に屋敷に帰ったり、誰も起きていないような時間から研究室に出向いたりしなければならないので、気を使わなくても出入りできる環境にいたいと正直に話した。
すると、ヴィクトール様は急に閃いたと言って僕に向き直す。
「私が、クレールの屋敷に引っ越そう。それで万事解決じゃないか」
「え? ヴィクトール様が我が家に住むのですか?」
「結婚すれば、もちろんマルティネス邸に引っ越してもらうが、それまでは自由だ。クレールとの時間は少しでも確保したい。そうなると、どちらかの屋敷に住むのが手っ取り早い」
「でも、我が家はヴィクトール様の家のように広くありませんし、窮屈な思いをなさるのでは……」
「そんなことはない。私は学生の頃は寮にも入っていたことがある。それに、ベルクール邸だって立派じゃないか。部屋なんてどうだって良い。クレールのベッドで寝られるならそれで十分だ」
ヴィクトール様は突然子供の頃の話を持ち出した。
初めてベルクール家で泊まった日、どうやら僕から「今日は泊まって」と誘ったんだそうだ。
当時のヴィクトール様は、一緒のベッドで寝たいと言いながらも、本当はドキドキしていたのだと言った。
「あの頃から、クレールはいい香りがしていたからね」
それでも実際隣で眠ると、これまでに経験がないほど安らげた。
「今でもあの時の感覚が忘れられないんだ。そして今また、このホテルのベッドで並んで寝ている。あの時の記憶の通りの安らぎを、クレールは私に与えてくれているのだ。いや、子どもの頃以上だ。だから、私はこの先クレールの隣で眠りたい。そうじゃなければ眠れない気がする。なるべく早く一緒に暮らすことを目標にするなら、どちらかの家に住むのが一番手っ取り早い」
ヴィクトール様は全く引く気がない。それだけ真剣に考えてくれているのと伝わってくる。
彼だって、今後はマルティネス王子に付いて仕事をこなしていくわけだから、引きこもって仕事をする僕と離れて過ごしても、一緒に暮らせば直ぐ側で僅かな時間でもいられる。
うまく言いくるめられた気もするが、確かに理に適っている。
「では、僕の屋敷に住みますか?」
これ以外の言葉は、見つからない。
二人で肌を寄せ合い微睡んでいつだけでも心地よい。
二人の会話はもっぱら今後の計画だった。
ヴィクトール様は、番になれたからマルティネス邸で一緒に住んで欲しいと言う。
しかし、研究室に引き篭もりがちな僕は、すぐに同棲とまで考えが及んでいなかった。
嬉しい気持ちもあるし、一緒に暮らせたらどんなに楽しいだろうか……と思いを馳せる。
目を覚ました時、目の前で眠るヴィクトール様を眺めて過ごしたり、時間が空いたらお茶をしたり、一緒に出かけたりもしたい。
それでも、僕は研究室で新薬の開発に携わっている。
深夜に及ぶ研究、休日にもすることは沢山あった。
僕にとっては仕事もヴィクトール様と同じくらい大切なのだ。
それを伝えると、ヴィクトール様も「仕事は大切にしてほしい。例え私と結婚した後だって、君は働くべきだ」と言ってくれている。きっとエリアスお父様や、マルティネス王子を通じて、いかに僕が研究に没頭しているかを聞いているのだろうと思われた。
その上で、やはり深夜に屋敷に帰ったり、誰も起きていないような時間から研究室に出向いたりしなければならないので、気を使わなくても出入りできる環境にいたいと正直に話した。
すると、ヴィクトール様は急に閃いたと言って僕に向き直す。
「私が、クレールの屋敷に引っ越そう。それで万事解決じゃないか」
「え? ヴィクトール様が我が家に住むのですか?」
「結婚すれば、もちろんマルティネス邸に引っ越してもらうが、それまでは自由だ。クレールとの時間は少しでも確保したい。そうなると、どちらかの屋敷に住むのが手っ取り早い」
「でも、我が家はヴィクトール様の家のように広くありませんし、窮屈な思いをなさるのでは……」
「そんなことはない。私は学生の頃は寮にも入っていたことがある。それに、ベルクール邸だって立派じゃないか。部屋なんてどうだって良い。クレールのベッドで寝られるならそれで十分だ」
ヴィクトール様は突然子供の頃の話を持ち出した。
初めてベルクール家で泊まった日、どうやら僕から「今日は泊まって」と誘ったんだそうだ。
当時のヴィクトール様は、一緒のベッドで寝たいと言いながらも、本当はドキドキしていたのだと言った。
「あの頃から、クレールはいい香りがしていたからね」
それでも実際隣で眠ると、これまでに経験がないほど安らげた。
「今でもあの時の感覚が忘れられないんだ。そして今また、このホテルのベッドで並んで寝ている。あの時の記憶の通りの安らぎを、クレールは私に与えてくれているのだ。いや、子どもの頃以上だ。だから、私はこの先クレールの隣で眠りたい。そうじゃなければ眠れない気がする。なるべく早く一緒に暮らすことを目標にするなら、どちらかの家に住むのが一番手っ取り早い」
ヴィクトール様は全く引く気がない。それだけ真剣に考えてくれているのと伝わってくる。
彼だって、今後はマルティネス王子に付いて仕事をこなしていくわけだから、引きこもって仕事をする僕と離れて過ごしても、一緒に暮らせば直ぐ側で僅かな時間でもいられる。
うまく言いくるめられた気もするが、確かに理に適っている。
「では、僕の屋敷に住みますか?」
これ以外の言葉は、見つからない。
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