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三章〜クレール・ベルクール編〜
65【完結】 幸せな日々を……
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「ジェイド。良い名前ですね」
ヴィクトール様らしいな、なんて思った。
きっと生まれてきてくれたことや、元気に出産を終えた僕に対しての気持ちを、そのまま名前にしたのだ。
“感謝”という意味の名前は、するりと溢れるようにヴィクトール様の口から発せられた。
ヴィクトール様は何度も「ありがとう」と言って、そのうちに感極まってしまい、喋れなくなってしまった。
「赤ちゃんが何事かと思いますよ?」と少し揶揄うと、何度も涙を拭いながらも、結局はしばらくは声が出ないでいた。
若くして父親になったヴィクトール様。プレッシャーになってなければ良いと内心思っていたけれど、それは僕の杞憂に終わった。
ヴィクトール様は、僕とジェイドを守るからと言って、最後の涙を拭いた。
その後からは、賑やかそのもの。
ジェイドを見せてとみんなが部屋に押し寄せる。
「小さい……良く眠っていますね」
「早く、起きないかな?」
アシルお母様とノアが、ジェイドに顔がくっつきそうなほど近寄っている。その後ろからノランが背伸びをしてみようとしているが、どうにも見えなくてだんだんとイライラしてきている。
エリアスお父様やマルティネス王子、クララ様は、先にジェイドを堪能して部屋の隅に移動していた。
アシルお母様たちは、なかなかジェイドから離れないだろうから、後で会いに行くと言ったようで、それは正解だったと僕も思う。
「ノア、アシルお母様、私にもジェイドの顔を見せてください!!」
「ごめん、ノランが見えてなかったね。眠ってるからそっとね」
「アシルお母様が、一番はしゃいでいたじゃないですか」
「だって、赤ちゃんってこんなに小さかったんだって思って。ほら、こんな小さな手。足だって。ノアやノランもこんなに小さかったなぁ……とか、色々思い出しちゃった」
「ノアもこんなに小さかったんだ」
「特にノアはね。ノランの奥に隠れてるみたいにいたんだ。でも、今はノランと変わらないくらい大きくなってるけどね」
考えてみれば、ノアとノランが生まれてから、もう十五年ほど経っている。ジェイドもこんなに成長する時が来るのだろうか。今はまだ、想像もできないけれど。
「クレールお兄様は、目が開いているところを見ましたか?」
「生まれた直ぐはね、この部屋や僕たちのことを、不思議そうに見ているみたいでしたよ。ヴィクトール様と同じ、琥珀色の瞳で」
三人が頷きながら聞いている。
「金髪はクレールお兄様と同じですね」
「両方のパーツを綺麗に受け継いでるんだね」
僕はヴィクトール様に似て欲しいなんて思うけど、ノアとノランは僕に似てほしいみたいだ。
二人が生まれた時は、ベルクール公爵様が、自分と同じダークブラウンの髪だったのをとても喜んでいたが、今回はアシルお母様が、どこか隔世遺伝をしていないかと期待していたらしく、自分と似ているところを懸命に探していた。
「だって、クレールの金髪はエリアス様譲りでしょ? だったら、ジェイドの金髪だってエリアス様の要素が含まれているじゃない。マルティネス王子だって金髪だし。目はヴィクトール様、僕に似てるところもあって良いのに」
鼻はまだ誰に似てるかは分からないけれど、口元は……なんて観察している。
「アシルお母様、それは烏滸がましいのでは……」なんて、ノランから言われる始末だった。
「クレール、もう疲れているだろう? みんなもそろそろ寝た方がいい」
エリアスお父様の一声で、解散となる。
結局、深夜にまで及んだ僕の初めての出産は、無事に乗り越えられた。
「クレール様、今夜はぐっすりお休みください」
侍女のエヴァが世話をしてくれることなっている。このまま抱いていたいが、気が抜けると眠くて眠くて仕方がない。
医師と助手もこのまま泊まってもらい、エヴァに色々とお世話の留意点も伝えておいてくれるとの事だった。
他の侍女も手早く着替えやシーツ交換をしてくれ、今夜はヴィクトール様と一緒に寝られることに安堵した。
「クレール、本当にお疲れ様」
「あんなに痛いとは、想像を遥かにこえていました。でも、無事に生まれてきてくれて良かったです」
「アシル様はずっと泣いていたよ」
「アシル様が? 自分に似てる所はないかと必死でしたけど」
「生まれるまで、不安で不安で仕方がなかったようだ。クレールを心から愛しているのだと伝わってきたよ」
無事に生まれた赤ちゃんを見て、安心したのと小さくて可愛いのとで、逆に興奮したのかと、想像しただけで笑ってしまいそうだ。
「さぁ、今夜は眠ろう。目覚めてからは、今までとは全く違う生活が始まる」
さっきまでジェイドを腕枕をしていた僕が、今度はヴィクトール様に腕枕をされている。
洸希、アシル、ちゃんと夢を叶えたよ。
今、とっても幸せだ。
この先の未来も、この人となら乗り越えていける。
これで僕の転生は終わり。
この命を、全うするよ───。
───完───
ヴィクトール様らしいな、なんて思った。
きっと生まれてきてくれたことや、元気に出産を終えた僕に対しての気持ちを、そのまま名前にしたのだ。
“感謝”という意味の名前は、するりと溢れるようにヴィクトール様の口から発せられた。
ヴィクトール様は何度も「ありがとう」と言って、そのうちに感極まってしまい、喋れなくなってしまった。
「赤ちゃんが何事かと思いますよ?」と少し揶揄うと、何度も涙を拭いながらも、結局はしばらくは声が出ないでいた。
若くして父親になったヴィクトール様。プレッシャーになってなければ良いと内心思っていたけれど、それは僕の杞憂に終わった。
ヴィクトール様は、僕とジェイドを守るからと言って、最後の涙を拭いた。
その後からは、賑やかそのもの。
ジェイドを見せてとみんなが部屋に押し寄せる。
「小さい……良く眠っていますね」
「早く、起きないかな?」
アシルお母様とノアが、ジェイドに顔がくっつきそうなほど近寄っている。その後ろからノランが背伸びをしてみようとしているが、どうにも見えなくてだんだんとイライラしてきている。
エリアスお父様やマルティネス王子、クララ様は、先にジェイドを堪能して部屋の隅に移動していた。
アシルお母様たちは、なかなかジェイドから離れないだろうから、後で会いに行くと言ったようで、それは正解だったと僕も思う。
「ノア、アシルお母様、私にもジェイドの顔を見せてください!!」
「ごめん、ノランが見えてなかったね。眠ってるからそっとね」
「アシルお母様が、一番はしゃいでいたじゃないですか」
「だって、赤ちゃんってこんなに小さかったんだって思って。ほら、こんな小さな手。足だって。ノアやノランもこんなに小さかったなぁ……とか、色々思い出しちゃった」
「ノアもこんなに小さかったんだ」
「特にノアはね。ノランの奥に隠れてるみたいにいたんだ。でも、今はノランと変わらないくらい大きくなってるけどね」
考えてみれば、ノアとノランが生まれてから、もう十五年ほど経っている。ジェイドもこんなに成長する時が来るのだろうか。今はまだ、想像もできないけれど。
「クレールお兄様は、目が開いているところを見ましたか?」
「生まれた直ぐはね、この部屋や僕たちのことを、不思議そうに見ているみたいでしたよ。ヴィクトール様と同じ、琥珀色の瞳で」
三人が頷きながら聞いている。
「金髪はクレールお兄様と同じですね」
「両方のパーツを綺麗に受け継いでるんだね」
僕はヴィクトール様に似て欲しいなんて思うけど、ノアとノランは僕に似てほしいみたいだ。
二人が生まれた時は、ベルクール公爵様が、自分と同じダークブラウンの髪だったのをとても喜んでいたが、今回はアシルお母様が、どこか隔世遺伝をしていないかと期待していたらしく、自分と似ているところを懸命に探していた。
「だって、クレールの金髪はエリアス様譲りでしょ? だったら、ジェイドの金髪だってエリアス様の要素が含まれているじゃない。マルティネス王子だって金髪だし。目はヴィクトール様、僕に似てるところもあって良いのに」
鼻はまだ誰に似てるかは分からないけれど、口元は……なんて観察している。
「アシルお母様、それは烏滸がましいのでは……」なんて、ノランから言われる始末だった。
「クレール、もう疲れているだろう? みんなもそろそろ寝た方がいい」
エリアスお父様の一声で、解散となる。
結局、深夜にまで及んだ僕の初めての出産は、無事に乗り越えられた。
「クレール様、今夜はぐっすりお休みください」
侍女のエヴァが世話をしてくれることなっている。このまま抱いていたいが、気が抜けると眠くて眠くて仕方がない。
医師と助手もこのまま泊まってもらい、エヴァに色々とお世話の留意点も伝えておいてくれるとの事だった。
他の侍女も手早く着替えやシーツ交換をしてくれ、今夜はヴィクトール様と一緒に寝られることに安堵した。
「クレール、本当にお疲れ様」
「あんなに痛いとは、想像を遥かにこえていました。でも、無事に生まれてきてくれて良かったです」
「アシル様はずっと泣いていたよ」
「アシル様が? 自分に似てる所はないかと必死でしたけど」
「生まれるまで、不安で不安で仕方がなかったようだ。クレールを心から愛しているのだと伝わってきたよ」
無事に生まれた赤ちゃんを見て、安心したのと小さくて可愛いのとで、逆に興奮したのかと、想像しただけで笑ってしまいそうだ。
「さぁ、今夜は眠ろう。目覚めてからは、今までとは全く違う生活が始まる」
さっきまでジェイドを腕枕をしていた僕が、今度はヴィクトール様に腕枕をされている。
洸希、アシル、ちゃんと夢を叶えたよ。
今、とっても幸せだ。
この先の未来も、この人となら乗り越えていける。
これで僕の転生は終わり。
この命を、全うするよ───。
───完───
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