3 / 68
第一章
3、言い渡された仕事
しおりを挟む
ブランディーヌと公爵であるゴーティエは、結婚こそ早かったもののなかなか子宝に恵まれず、ようやく授かったのが息子のエリペールなのだと言った。
「あの子は親の贔屓目なくとも優秀よ。だけど一つだけ……夜に一人じゃ眠れなくてね」
概ね一歳頃からは自分の部屋が与えられ一人で寝るようになるのだが、エリペールに関しては三歳まで両親と同じベッドで眠っていたそうだ。
けれどもゴーティエもブランディーヌも仕事が忙しく、毎日子供に合わせて眠るわけにはいかない。そこで従者に頼み、添い寝をさせてみたが、どの人を宛てがっても泣き喚く一方で効果が得られず、その後、あの手この手を使っても寝付けなかった。
最終手段が奴隷を買う……というものだったと説明した。
「それでね、貴方にはあの子の添い寝役として働いて欲しいの。世話役も兼ねてね」
「添い寝……? とは、なんですか?」
「添い寝も分からないの?」
「ご、ごめんなさい」
慌てて深く頭を下げた。
以前は少しでも口答えをすると、番人から手や足が飛んできていた。
反論してはいけない、訊ねてもいけない。ただYESとだけ返事をしろ。そう教えられてきたのに、場所と人が変わったことで油断してしまったのだ。
あろうことか公爵夫人の前でそれをしてしまうなんて……。
『ヘマをするんじゃねぇよ』と言われたのを早くも破ってしまった。
「どんな罰でも受けます。どうか、どうか、追い出さないでください」
一層深く頭を下げ、肩と膝を振るわせる。
「マリユス?」
ブランディーヌが困惑したように話しかけるが、頭を上げられなかった。
「なんでも言われた通りに働きます。泥も運びますし雨の日も風の日も休みませんから」
「何を言っているの?」
ブランディーヌが歩み寄り、そっと背中に手を置いた。
「つっ!!」
背中がびくりと戦慄いた。
今朝番人から蹴り飛ばされた所に触れられたのだ。
こんなのは日常茶飯事で、痛くても反応してはいけない。
『どんなに苦しくても外の世界はもっと過酷だ。お前たちに優しくしてくれる人などいない。これは訓練だ』番人はそう口を揃えて言っては奴隷を殴り、蹴った。
「痛むのね? 背中だけ?」
「どこも痛みません。殴られてもきちんと我慢できます。罰は受けます。どうかお許しを」
「マリユス、先ずは顔を上げなさい」
ブランディーヌに促され、ソファーに座った。
「貴方がどんな仕打ちを受けてきたのか、今ので理解しました。でもね、ここでは誰も貴方に暴力などふわないし、泥なんて運ばせません。雨の日や風の日に外で仕事をさせたりしませんよ」
ふわりと包み込まれ、じんわりと体が温かくなった。
ブランディーヌは僕の頭を撫でながら、見た目以上に華奢な体に驚いた。
「先に食事にしましょう。話はその後で構わないわ」
「滅相もございません。僕は残り物で十分です。何も残らなければ……その次に残った時に……」
「マリユス、貴方は家族の一員になったのです。残り物など与えるはずもありません。同じ食事を一緒に摂るのです。さぁ、参りましょう。そろそろエリペールも湯浴みから上がる頃よ」
手を引かれ、ダイニングへと案内された。
どこまでも続く長い廊下の両脇に、幾つものドアがある。
この広い屋敷のどこに何があるのかを、公爵夫人は把握しているようだ。
辺りをキョロキョロと見渡しながらついて行くが、同じような景色が続き、今自分が屋敷のどの辺にいるのかさえ想像できない。
促されるままダイニングへ行くと、エリペールが手招きをして隣に座らせた。
「お母様のお話は終わった?」
「いえ、あの……まだだと思います」
エリペールはうんざりしたように大袈裟なため息を溢す。
「僕がクソだからいけないんです。言われていることが理解できず、ごめんなさい」
「クソだって? なぜマリユスがクソなのだ?」
「オメガはクソだと教えられました。この世で最も無能で周りに害を及ばすものなのだと。もしもラングロワ様が買ってくれなければ、僕は明日から性奴隷? というものになっていたそうです」
「マリユス!!」
口を挟んだのはブランディーヌだ。
「ごめんなさい。あの、やっぱり僕は……」
喋れば喋るほどボロが出る。やはり番人が話していたことは間違いではない。
口をキツく噤み、目を閉じた。
「いえ、突然大きな声を出して悪かったわ。貴方は謝らなくていいのよ」
「そうだ、君がクソなんかのはずはないだろう。だって私がえらんだのだから」
エリペールは五歳だと聞いていたが、とてもしっかりと喋る。ブランディーヌが言っていた通り、とても利口なのだと思う。
こんな賢い子供に、自分のような無能な奴隷を許した理由は分からないが、優しさに触れ、体の芯が暖かくなるのを感じた。
その後、少し遅れて公爵様であるゴーディエが着席すると、タイミングを測ったように豪華な食事が運ばれた。
「食べ方は分からないでしょうから、見様見真似で食べるといいわ。次第に慣れて行けばいいのよ。怒らないから、安心なさい」
「ありがとうございます」
ブランディーヌの言葉にゴーティエは不思議そうな顔を向けた。
僕はやはり全く綺麗に食べられなくて、きっと美味しいであろう料理も味わえないまま終わってしまった。
「ははっ! マリユスったら幼い子供のようだな」
テーブルも服も顔もソースで汚れてしまっている。五歳のエリペールでさえ、何一つ汚さず食べているのに……。流石にこれは後でたんと殴られるだろう。
チラリとゴーティエを覗き見ると、目が合ってしまった。
「奴隷のマリユスだね。構わない。最初から何でもできるとは思っていない。これから少しずつ慣れていけばいい」
恰幅の良い、おおらかなその人も怒ったりしなかった。
「何故怒らないのですか?」
思わず訊ねてしまった。
「怒る必要がないからだ」
ゴーティエが即答すると、ブランディーヌが口を挟む。
「エリペールが懐いているわ。貴方を早く自分の部屋に招きたくて仕方ないほどにね。こう見えて、とても人見知りをするのよ。マリユス、添い寝というのは、夜にエリペールと同じベッドで寝るということよ。あとは本人の指示に従って頂戴。こんな言い方の方が、貴方にとっては良いのかしら」
最後だけ子供を躾けるような口調になり、ピンと背筋が伸びた。
「はい」
返事をすると、エリペールは眸を輝かせて立ち上がる。
「では、ようやくマリユスを私の部屋へ連れて行っても良いのですね?」
善は急げとばかりに、ダイニングルームを後にした。
「あの子は親の贔屓目なくとも優秀よ。だけど一つだけ……夜に一人じゃ眠れなくてね」
概ね一歳頃からは自分の部屋が与えられ一人で寝るようになるのだが、エリペールに関しては三歳まで両親と同じベッドで眠っていたそうだ。
けれどもゴーティエもブランディーヌも仕事が忙しく、毎日子供に合わせて眠るわけにはいかない。そこで従者に頼み、添い寝をさせてみたが、どの人を宛てがっても泣き喚く一方で効果が得られず、その後、あの手この手を使っても寝付けなかった。
最終手段が奴隷を買う……というものだったと説明した。
「それでね、貴方にはあの子の添い寝役として働いて欲しいの。世話役も兼ねてね」
「添い寝……? とは、なんですか?」
「添い寝も分からないの?」
「ご、ごめんなさい」
慌てて深く頭を下げた。
以前は少しでも口答えをすると、番人から手や足が飛んできていた。
反論してはいけない、訊ねてもいけない。ただYESとだけ返事をしろ。そう教えられてきたのに、場所と人が変わったことで油断してしまったのだ。
あろうことか公爵夫人の前でそれをしてしまうなんて……。
『ヘマをするんじゃねぇよ』と言われたのを早くも破ってしまった。
「どんな罰でも受けます。どうか、どうか、追い出さないでください」
一層深く頭を下げ、肩と膝を振るわせる。
「マリユス?」
ブランディーヌが困惑したように話しかけるが、頭を上げられなかった。
「なんでも言われた通りに働きます。泥も運びますし雨の日も風の日も休みませんから」
「何を言っているの?」
ブランディーヌが歩み寄り、そっと背中に手を置いた。
「つっ!!」
背中がびくりと戦慄いた。
今朝番人から蹴り飛ばされた所に触れられたのだ。
こんなのは日常茶飯事で、痛くても反応してはいけない。
『どんなに苦しくても外の世界はもっと過酷だ。お前たちに優しくしてくれる人などいない。これは訓練だ』番人はそう口を揃えて言っては奴隷を殴り、蹴った。
「痛むのね? 背中だけ?」
「どこも痛みません。殴られてもきちんと我慢できます。罰は受けます。どうかお許しを」
「マリユス、先ずは顔を上げなさい」
ブランディーヌに促され、ソファーに座った。
「貴方がどんな仕打ちを受けてきたのか、今ので理解しました。でもね、ここでは誰も貴方に暴力などふわないし、泥なんて運ばせません。雨の日や風の日に外で仕事をさせたりしませんよ」
ふわりと包み込まれ、じんわりと体が温かくなった。
ブランディーヌは僕の頭を撫でながら、見た目以上に華奢な体に驚いた。
「先に食事にしましょう。話はその後で構わないわ」
「滅相もございません。僕は残り物で十分です。何も残らなければ……その次に残った時に……」
「マリユス、貴方は家族の一員になったのです。残り物など与えるはずもありません。同じ食事を一緒に摂るのです。さぁ、参りましょう。そろそろエリペールも湯浴みから上がる頃よ」
手を引かれ、ダイニングへと案内された。
どこまでも続く長い廊下の両脇に、幾つものドアがある。
この広い屋敷のどこに何があるのかを、公爵夫人は把握しているようだ。
辺りをキョロキョロと見渡しながらついて行くが、同じような景色が続き、今自分が屋敷のどの辺にいるのかさえ想像できない。
促されるままダイニングへ行くと、エリペールが手招きをして隣に座らせた。
「お母様のお話は終わった?」
「いえ、あの……まだだと思います」
エリペールはうんざりしたように大袈裟なため息を溢す。
「僕がクソだからいけないんです。言われていることが理解できず、ごめんなさい」
「クソだって? なぜマリユスがクソなのだ?」
「オメガはクソだと教えられました。この世で最も無能で周りに害を及ばすものなのだと。もしもラングロワ様が買ってくれなければ、僕は明日から性奴隷? というものになっていたそうです」
「マリユス!!」
口を挟んだのはブランディーヌだ。
「ごめんなさい。あの、やっぱり僕は……」
喋れば喋るほどボロが出る。やはり番人が話していたことは間違いではない。
口をキツく噤み、目を閉じた。
「いえ、突然大きな声を出して悪かったわ。貴方は謝らなくていいのよ」
「そうだ、君がクソなんかのはずはないだろう。だって私がえらんだのだから」
エリペールは五歳だと聞いていたが、とてもしっかりと喋る。ブランディーヌが言っていた通り、とても利口なのだと思う。
こんな賢い子供に、自分のような無能な奴隷を許した理由は分からないが、優しさに触れ、体の芯が暖かくなるのを感じた。
その後、少し遅れて公爵様であるゴーディエが着席すると、タイミングを測ったように豪華な食事が運ばれた。
「食べ方は分からないでしょうから、見様見真似で食べるといいわ。次第に慣れて行けばいいのよ。怒らないから、安心なさい」
「ありがとうございます」
ブランディーヌの言葉にゴーティエは不思議そうな顔を向けた。
僕はやはり全く綺麗に食べられなくて、きっと美味しいであろう料理も味わえないまま終わってしまった。
「ははっ! マリユスったら幼い子供のようだな」
テーブルも服も顔もソースで汚れてしまっている。五歳のエリペールでさえ、何一つ汚さず食べているのに……。流石にこれは後でたんと殴られるだろう。
チラリとゴーティエを覗き見ると、目が合ってしまった。
「奴隷のマリユスだね。構わない。最初から何でもできるとは思っていない。これから少しずつ慣れていけばいい」
恰幅の良い、おおらかなその人も怒ったりしなかった。
「何故怒らないのですか?」
思わず訊ねてしまった。
「怒る必要がないからだ」
ゴーティエが即答すると、ブランディーヌが口を挟む。
「エリペールが懐いているわ。貴方を早く自分の部屋に招きたくて仕方ないほどにね。こう見えて、とても人見知りをするのよ。マリユス、添い寝というのは、夜にエリペールと同じベッドで寝るということよ。あとは本人の指示に従って頂戴。こんな言い方の方が、貴方にとっては良いのかしら」
最後だけ子供を躾けるような口調になり、ピンと背筋が伸びた。
「はい」
返事をすると、エリペールは眸を輝かせて立ち上がる。
「では、ようやくマリユスを私の部屋へ連れて行っても良いのですね?」
善は急げとばかりに、ダイニングルームを後にした。
905
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
事故つがいの夫が俺を離さない!
カミヤルイ
BL
事故から始まったつがいの二人がすれ違いを経て、両思いのつがい夫夫になるまでのオメガバースラブストーリー。
*オメガバース自己設定あり
【あらすじ】
華やかな恋に憧れるオメガのエルフィーは、アカデミーのアイドルアルファとつがいになりたいと、卒業パーティーの夜に彼を呼び出し告白を決行する。だがなぜかやって来たのはアルファの幼馴染のクラウス。クラウスは堅物の唐変木でなぜかエルフィーを嫌っている上、双子の弟の想い人だ。
エルフィーは好きな人が来ないショックでお守りとして持っていたヒート誘発剤を誤発させ、ヒートを起こしてしまう。
そして目覚めると、明らかに事後であり、うなじには番成立の咬み痕が!
ダブルショックのエルフィーと怒り心頭の弟。エルフィーは治癒魔法で番解消薬を作ると誓うが、すぐにクラウスがやってきて求婚され、半ば強制的に婚約生活が始まって────
【登場人物】
受け:エルフィー・セルドラン(20)幼馴染のアルファと事故つがいになってしまった治癒魔力持ちのオメガ。王立アカデミーを卒業したばかりで、家業の医薬品ラボで仕事をしている
攻め:クラウス・モンテカルスト(20)エルフィーと事故つがいになったアルファ。公爵家の跡継ぎで王都騎士団の精鋭騎士。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる