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海星は体調を必要以上に心配してくれたけど、発情期の初日に番になったからか、やはり二日目以降はとても楽に過ごせた。
フェロモンの匂いも、普段と同じくらいしか匂わないと海星が言う。いつもどの程度匂っているのか伊央には分からないけれど、オメガのフェロモンに当てられる程ではなく、むしろ心地良い、リラックスできる香りなのだそうだ。
登校日の翌日が週末だったため、病院へは休日明けに行こうと話し合い、それまでは一応外出は控え、海星の部屋でのんびりと過ごした。
その間叶翔からの連絡はなく、頭のどこかで気にはなりつつも、海星の前でその名前を出すのも配慮が足りないような気がして躊躇ってしまう。
薬の副作用で寝込む程なのだから、今日もあまり芳しくないかもしれない。
獣化した元凶が自分なのに、お見舞いにも行けないのが悔しいし、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
それでも叶翔から連絡が来るのを待つしかない。
例え伊央からメッセージを送ったとしても、叶翔が応えられる状態でなければ意味がない。スマホすら触らず寝ているかもしれない。
電話で話す限りではいつも通りだけれど、特に薬を飲んだ後数時間はとても起きていられる状態ではなくなると言っていた。
伊央は正気を失う程のヒートを起こしたのに、特に異常なく過ごせている。それが余計に叶翔に対しての罪悪感を招いているのだった。
逆に海星は上機嫌である。一日に何度も伊央の頸を確認してはそこに触れる。隙あらば抱きしめキスをする。
「浮かれてるって自覚してる。伊央にとっては利害だけの関係かもしれないけど、俺はそれ以上に伊央を大切に想ってるからな。守ってやりたいし、いっぱい甘えて欲しい。でも俺に気を遣う必要はないから。それを伊央に強要したいんじゃないんだ。叶翔のこともあるし。ただ、今は浮かれさせてくれ!!」
満面の笑みを見せる海星に、伊央もつられて笑う。
自分たちはお互いの利害の一致で番になったわけだが、伊央だってその相手が海星で良かったと何度も伝えている。恋人という関係も、もしかすると高校の間だけかもしれないけれど、それでも絶対にこの人が守ってくれるという安心感は絶大だ。
発情期が終わる頃には二学期が始まる。これからは、発情期の度に海星も一緒に休めるのも嬉しい。オメガになって先行き真っ暗だと感じていたが、オメガだって捨てたもんじゃないと今なら思える。
病院の先生に報告した時には、あまりの急展開に驚きを隠せない様子だったけれど、学生で番になるケースも珍しいわけではないとも話していた。抑制剤はもともと強いものではなかったため、そのまま服用を続けることになった。
結局、叶翔のお見舞いには行けず仕舞いだった。行きたいと申し出たが、とにかく一日のほとんどを寝て過ごしていて、来てくれても相手ができないのが辛いと言うので、それに従った。
そして迎えた二学期。
朝早めに投稿する通学路も、まだ夏日と言える程暑かったが、伊央の気持ちは実に爽やかであった。頸の噛み痕は伸びた襟足と制服の襟で上手く隠れている。
風紀委員の活動も元気にこなし、新しい学校生活が始まった。
叶翔は今日も休んだ。
朝、そのメッセージを受け取っていたが、体調は随分良くなっているのだそうで少しは安心している。
通院と薬の服用は続けているが、抗生物質もあと数日飲めば終われるのだとメッセージに書かれてあった。
『月曜日からは学校行くからな。無視すんなよ』なんて、叶翔らしくて安心する。
伊央はごめんねと謝りたかったけれど、叶翔はそんな言葉が欲しいのではないと幼馴染だからこそ分かる。
『朝、一番に挨拶するからね』と返しておいた。
波乱の二学期が幕を開ける。
フェロモンの匂いも、普段と同じくらいしか匂わないと海星が言う。いつもどの程度匂っているのか伊央には分からないけれど、オメガのフェロモンに当てられる程ではなく、むしろ心地良い、リラックスできる香りなのだそうだ。
登校日の翌日が週末だったため、病院へは休日明けに行こうと話し合い、それまでは一応外出は控え、海星の部屋でのんびりと過ごした。
その間叶翔からの連絡はなく、頭のどこかで気にはなりつつも、海星の前でその名前を出すのも配慮が足りないような気がして躊躇ってしまう。
薬の副作用で寝込む程なのだから、今日もあまり芳しくないかもしれない。
獣化した元凶が自分なのに、お見舞いにも行けないのが悔しいし、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
それでも叶翔から連絡が来るのを待つしかない。
例え伊央からメッセージを送ったとしても、叶翔が応えられる状態でなければ意味がない。スマホすら触らず寝ているかもしれない。
電話で話す限りではいつも通りだけれど、特に薬を飲んだ後数時間はとても起きていられる状態ではなくなると言っていた。
伊央は正気を失う程のヒートを起こしたのに、特に異常なく過ごせている。それが余計に叶翔に対しての罪悪感を招いているのだった。
逆に海星は上機嫌である。一日に何度も伊央の頸を確認してはそこに触れる。隙あらば抱きしめキスをする。
「浮かれてるって自覚してる。伊央にとっては利害だけの関係かもしれないけど、俺はそれ以上に伊央を大切に想ってるからな。守ってやりたいし、いっぱい甘えて欲しい。でも俺に気を遣う必要はないから。それを伊央に強要したいんじゃないんだ。叶翔のこともあるし。ただ、今は浮かれさせてくれ!!」
満面の笑みを見せる海星に、伊央もつられて笑う。
自分たちはお互いの利害の一致で番になったわけだが、伊央だってその相手が海星で良かったと何度も伝えている。恋人という関係も、もしかすると高校の間だけかもしれないけれど、それでも絶対にこの人が守ってくれるという安心感は絶大だ。
発情期が終わる頃には二学期が始まる。これからは、発情期の度に海星も一緒に休めるのも嬉しい。オメガになって先行き真っ暗だと感じていたが、オメガだって捨てたもんじゃないと今なら思える。
病院の先生に報告した時には、あまりの急展開に驚きを隠せない様子だったけれど、学生で番になるケースも珍しいわけではないとも話していた。抑制剤はもともと強いものではなかったため、そのまま服用を続けることになった。
結局、叶翔のお見舞いには行けず仕舞いだった。行きたいと申し出たが、とにかく一日のほとんどを寝て過ごしていて、来てくれても相手ができないのが辛いと言うので、それに従った。
そして迎えた二学期。
朝早めに投稿する通学路も、まだ夏日と言える程暑かったが、伊央の気持ちは実に爽やかであった。頸の噛み痕は伸びた襟足と制服の襟で上手く隠れている。
風紀委員の活動も元気にこなし、新しい学校生活が始まった。
叶翔は今日も休んだ。
朝、そのメッセージを受け取っていたが、体調は随分良くなっているのだそうで少しは安心している。
通院と薬の服用は続けているが、抗生物質もあと数日飲めば終われるのだとメッセージに書かれてあった。
『月曜日からは学校行くからな。無視すんなよ』なんて、叶翔らしくて安心する。
伊央はごめんねと謝りたかったけれど、叶翔はそんな言葉が欲しいのではないと幼馴染だからこそ分かる。
『朝、一番に挨拶するからね』と返しておいた。
波乱の二学期が幕を開ける。
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