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spin-offージェイクと騎士ー

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 雨が強くなっている。視界が悪い。
 こんな日でも、この街の人々は気にせず外出を楽しんでいる。

「ルイ!! ルイーーー!!」
 田舎に帰るつもりなら……と、馬車の乗り口へと向かってみることにした。
 でも、もしまた体質のせいで襲われたら?
 考えたくもない不安が脳裏を過ぎる。

 雨のせいで、暗くなるのが早い。
 一刻も早く見つけなければ、探しにくくなる。

 言って欲しかった。
「怖かった」と、すぐに来て欲しかった。
 でも、ルイの性格だから、俺に顔向けできないと思ったんだろう。

「すみません、通してください。……すみません……急いでて……」
 これから夕食にでも出かける人で溢れかえっている。

 それでも、妙な自信だけはあった。
 なんとなくルイに近づいているような気がしてならない。
 運命なら……俺たちが運命の番なら……。

「いや……未来は、自分で切り開く……」
 
 絶対にルイを連れ戻す。それが自分の使命だと思っている。
 このまま田舎になんて帰らせない。
 走りながらも、周りを確認することを怠らない。

 路地裏も隈なく探した。

 いない……。
 まさか徒歩でなんて帰るはずもないし……。

 でもその時、馬車に乗り込もうとする小柄な男性が視界に入った。
 暗くてハッキリ顔は見えないが……あれは……。

「……ルイ?」
 名前を叫びながら呼んだ。
 向こうもこっちを見ている。
 もう一度叫ぶ。
 
「その馬車、動くな!!」
 ルイは慌てて乗り込もうとしているが、馬車の運転手はどうしていいか分からず、困り果てていた。

「その子を逃さないで!!」
 俺の叫びが、ルイに向けられたものだと察してくれた運転手が、馬車の扉を閉めてくれた。
 

「ありがとう、助かった」
「あ、あぁ……それは構わないが……」
「礼はまた後日、改めて……今は急いでいるんだ。あなたには、またここで会えますか?」
「ああ、大体ここから客を乗せているからね」
「承知しました。この子を引き取らせてもらいますね」

 馬車の扉を開ける。 
 そこに蹲っていたのは、紛れもなくルイだった。

「……ルイ……」
「なんで……なんで……追いかけてなんか……」

 泣きじゃくるルイを引き寄せ、抱き締める。
 震えていた。
 雨に当たったせいもあるだろう。体が冷え切っている。
 とにかく、今日はホテルに泊まってもらうと言って、この場を去った。

 通行人からは、黄色い声が上がっていたが、気にせずルイを抱き上げたままホテルへの道を引き返す。

「ベルガルドさんがホテルまで来てくれてね、全て話してくれたよ」
 それでも、俺はルイを手放すつもりなど僅かにもないと言った。
「でも、これからもどんな迷惑をかけるか分かりません」
「未来のことなど、その時に決めればいい。俺は、“今”のことを話しているんだ」

 ルイを抱き直し、目線が合う高さに持ってきた。
「俺が嫌いになったの?」
「違う。僕は……ジェイクさんが……好きです……」
「じゃあ、俺から離れるな!! もう二度と!!」
 路上なのに、人が見ているのに、ルイに口付けた。

 野次馬が集まってくる。
 それでもやめなかった。
 この腕の中にいる、ルイの存在を確かめたかった。

「んん……」
「君を失ってしまえば、俺は一生立ち直れない」

 強く押し当てた唇はお互い冷え切っていて、あまり感触がない。
 それでも、何度もルイに口付けた。
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