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仮面が本当の顔になっていく系って地味に怖い。
しおりを挟む自身の仕事を事業時間で終わらせ、住居領の自室に戻った卯は、身に付けた兎の面をそのままにベッドへ横たわった。
『……!、……!』
『ねこ』が必死に卯の腕をぺちぺち叩いて、注意を促す。
「……あ、仮面……」
両手を使ってそっと仮面を外し、表面を自身に向ける。 可愛らしくも美しさのある兎の面が室内灯をうけ、艶めいた。
そういえば、殆どの最上位幹部達は正装と普段用で仮面の形状が違っていた。 どのようにして、仮面の形状を変化させるのだろうか。
「ん……ねむ」
眠気に思考を放棄し仮面を外した卯は、外した仮面をどこにやるともせずにそのままベッドの頭上の方へ置き、伏せた。
×
この組織は『仮の面』と呼ばれており、その呼び名の通り、構成員達は皆一様に何かしら顔に面を着けている。 組織に入った時点で仮面を受けとり、それ以降は一切、他者に仮面の下を見せないようにするのだ。
仮面には不思議な力があり、認識齟齬の魔法が掛けられている。 おかげで本人の顔は魔法少女や妖精、そして同組織の者達にさえ知られることはない(下手に証拠を残しさえしなければ)。
また、自身の仮面は組織内にある住居領へ入る為の鍵にもなっており、自身の仮面と、その仮面の所持者の魔力を照合して部屋の鍵を開けるようになっている。
しかし、その仮面には問題がある。 まだ入りたての末端の戦闘員ならば何も問題はないが、組織内での地位が上がるにつれてその仮面は自身の命と同化していく。 それは高位の者による組織への裏切りを防ぐ為のシステムだった。
簡単に言うと、上位の幹部達は仮面を割られると死んでしまう。
すぐに割れてしまうような軟弱な材質では出来ていないので、崖から突き落とされたり、至近距離で銃撃を食らわない限りは平気だろう。
×
「……はっ」
『ねこ』に体当たりされた感触で目が覚めた。
時計を見ると戌の刻、夕飯を摂ったりお風呂に入ったりする時間だ。 まだ2時間ほどしか眠っていなかった事に安堵し、慌てて仮面を着けて外に出かけた。
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