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第九話 花綻ぶ夏の夜
第九話 六
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その後も話題が尽きることはない。
普段よりもひと通りの多い小丘に、慈乃とウタセの声も吸い込まれる。
「へえ! 参考書にしてた図鑑は一通り読み終わったんだ」
「今は、違う図鑑を読んでいます。前の図鑑には書いていなかったことがたくさんあって、先は長そうです」
「だよねえ。勉強に終わりがないっていうのは、どの分野でも一緒だよね」
ウタセはからからと笑うと、自身のことについて語り始めた。
「何日か前に先生のところに行ったのはシノも覚えてるかな」
ウタセに顔を覗き込まれて問われる。慈乃はウタセに夏の花祭に誘われた日のことを思い出して、こくりと頷いた。あの日、ウタセは朝方収穫した野菜を持って、薬学を師事しているという先生のもとに行き、夕方頃に帰ってきた。
「お茶をしながら最近あったこととか薬のこととか話してたんだけどね、薬の情報って頻繁に更新されるから正直なところ勉強してても追いつかないんだ。シノとおんなじで、勉強に終わりはないんだなーって」
なるほどと慈乃が頷く傍らで、ウタセはなおも楽しそうに話し続ける。
「あ、そうそう。シノのことも話したら、興味持ってたよ」
「えっ」
慈乃は顔を強張らせた。出会ってからこのかた、ウタセには情けない姿しか見せていないような気がする。一体何を話したのか、訊くのも躊躇われた。
「野菜の収穫を手伝ってくれた子でもあるんですって言ったら、お礼も言いたいから時間があるときに遊びにおいでって、親友ふたりと弟さんが」
「ご本人ではないのですね……」
慈乃が引っ掛かりを感じて思わず言いかけると、ウタセは「先生は素直じゃないからね」と苦笑した。
「口は悪いけど、根は優しいひとなんだ。おいでとは言わなかったけど、来るなとも言わなかったし、興味があるっていうのも本当だよ」
先生のことを語るウタセはいくらか子どもっぽい。先生を尊敬しているのだと一目でわかる。
ウタセがそんな表情を見せるものだから、慈乃も先生の親友達と弟の提案に乗ってみたいと思えた。
「でしたら、私も……お会いしてみたいです」
「うん、行こうよ! 先生達もきっと歓迎してくれるよ」
ウタセも我がことのように喜びをあらわにする。そこにミトドリやニアに匹敵する絆や親しみを感じた。ふと気になった慈乃は訊いてみる。
「その、先生とは付き合いが長い、のですか?」
ウタセは目を瞬くと「うん」と、穏やかに、静かに答えた。
「……お花見のとき、シノは過去の話をしてくれたよね。僕の話も少ししようか」
普段よりもひと通りの多い小丘に、慈乃とウタセの声も吸い込まれる。
「へえ! 参考書にしてた図鑑は一通り読み終わったんだ」
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「だよねえ。勉強に終わりがないっていうのは、どの分野でも一緒だよね」
ウタセはからからと笑うと、自身のことについて語り始めた。
「何日か前に先生のところに行ったのはシノも覚えてるかな」
ウタセに顔を覗き込まれて問われる。慈乃はウタセに夏の花祭に誘われた日のことを思い出して、こくりと頷いた。あの日、ウタセは朝方収穫した野菜を持って、薬学を師事しているという先生のもとに行き、夕方頃に帰ってきた。
「お茶をしながら最近あったこととか薬のこととか話してたんだけどね、薬の情報って頻繁に更新されるから正直なところ勉強してても追いつかないんだ。シノとおんなじで、勉強に終わりはないんだなーって」
なるほどと慈乃が頷く傍らで、ウタセはなおも楽しそうに話し続ける。
「あ、そうそう。シノのことも話したら、興味持ってたよ」
「えっ」
慈乃は顔を強張らせた。出会ってからこのかた、ウタセには情けない姿しか見せていないような気がする。一体何を話したのか、訊くのも躊躇われた。
「野菜の収穫を手伝ってくれた子でもあるんですって言ったら、お礼も言いたいから時間があるときに遊びにおいでって、親友ふたりと弟さんが」
「ご本人ではないのですね……」
慈乃が引っ掛かりを感じて思わず言いかけると、ウタセは「先生は素直じゃないからね」と苦笑した。
「口は悪いけど、根は優しいひとなんだ。おいでとは言わなかったけど、来るなとも言わなかったし、興味があるっていうのも本当だよ」
先生のことを語るウタセはいくらか子どもっぽい。先生を尊敬しているのだと一目でわかる。
ウタセがそんな表情を見せるものだから、慈乃も先生の親友達と弟の提案に乗ってみたいと思えた。
「でしたら、私も……お会いしてみたいです」
「うん、行こうよ! 先生達もきっと歓迎してくれるよ」
ウタセも我がことのように喜びをあらわにする。そこにミトドリやニアに匹敵する絆や親しみを感じた。ふと気になった慈乃は訊いてみる。
「その、先生とは付き合いが長い、のですか?」
ウタセは目を瞬くと「うん」と、穏やかに、静かに答えた。
「……お花見のとき、シノは過去の話をしてくれたよね。僕の話も少ししようか」
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