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もふもふパニック 2
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とにもかくにも、こちらに来て日も浅い私と、自分達も事情が分からずパニックになっている子供達だけでは埒(らち)が明かないと、泣き声に気付いて飛んできてくれた侍女さんに、ディーバさんか始祖様を呼んで来て貰えないかお願いした。
二つ返事で駆け出していった彼女は、すぐにディーバさんを連れて来てくれた。
なんでも、彼は私達に朝の挨拶に来る最中だったのだとか。
侍女さんにお礼を言った後で、「休憩中にでもお召し上がり下さい」と、アルゴス君とマルケス君の分を残したクッキーを全て渡すと恐縮されつつも嬉しそうに貰ってくれた。
「「ディーバ~!!も゛どれ゛な゛い~!!」」
毛玉ちゃん達は泣きすぎたせいか、予期せぬ事態にショックが大きすぎたのか、駆け出さずにディーバさんの下へポテポテと歩み寄る。
お尻っ!!
ほわほわもっふもふのお尻!!
しかもダブル!!
可愛過ぎるもふもふ天使達は尻も可愛いと腐った事を考えてるとは思いも寄らないだろう子供達はたどり着くとディーバさんの足にひしっと縋り付いた。
これも可愛い!!などと心の中で暴走している私とは裏腹に至って冷静に、そして微笑み付きでディーバさんが言う。
「ああ。獣還りに入ったんですね」
「獣還り?」
あまりにもさらりと言われて聞き返してしまう。
先祖還りという言葉は知っていても、獣還りとは初耳だ。
「はい。私達獣人は生涯に何度か人の姿をとらず、獣の姿で過ごす期間があるのです」
「「いや゛だ~」」
ディーバさんの説明にわんわんと泣く毛玉ちゃん達は、申し訳ないが、とても可愛い。犬飼いなら誰しも一度は頭を過ぎる、「可愛すぎてお口に入れちゃうぞ」をしたいくらいだ。
子犬サイズな彼等の鼻先(ノズル)はカポッとくわえ易そうだ。
そうこうしている内にエキサイトしてきたのか、子供達は「ウォーゥ、ウォーゥ」と実に悲しげに遠吠えを始めている。
「発熱など他に症状は無いのでしょうか?又、期間は?」
「はい。ただ獣姿なだけで安静にする必要もございません。ただ……」
「「「ただ?」」」
切られたディーバさんの言葉に私と毛玉ちゃん達の疑問が被る。
「戻る期間は分からないのです。一日もかからずに戻る者も入れば、長く戻れない者も居ます。最長は確か、ルッツォで半年、次いでジルの三ヶ月、だったと思います」
「半年!?」
悲鳴に似た私の言葉に子供達はびくりと体を揺らした。
「は、半年って、なん、だ?」
「三ヶ月って、何回おはようとおやすみの、ご挨拶、したら良いの?」
迂闊な自分の言動にハッとしながら、震える声で聞き返すアルゴス君とマルケス君の側に寄り、二人の体を腕に抱き上げる。珍しく言い淀んだディーバさんはごくりと唾を飲み込んだ後、子供達と視線を合わせて口を開いた。
「……半年は百八十回、三ヶ月は九十回です」
「「 」」
言葉を出せず、ただただ呆然としている子供達は、一週間でも「たくさんだ!!」と言っていた。
それから測るにそうとうなショックだろう。
二人の体がクタリと力を無くし、反比例するようにずしりと重さを増した。
「「アルゴス君!?マルケス君!?」」
気を失ったかと声をかけながら覗き込むと、ゆるゆると顔を私に向けた。
「ママ、俺、達……」
「いつ、戻れる、の?」
私のせいで現実に向き合わされた子供達の縋る言葉に返す言葉が出なかった。
二つ返事で駆け出していった彼女は、すぐにディーバさんを連れて来てくれた。
なんでも、彼は私達に朝の挨拶に来る最中だったのだとか。
侍女さんにお礼を言った後で、「休憩中にでもお召し上がり下さい」と、アルゴス君とマルケス君の分を残したクッキーを全て渡すと恐縮されつつも嬉しそうに貰ってくれた。
「「ディーバ~!!も゛どれ゛な゛い~!!」」
毛玉ちゃん達は泣きすぎたせいか、予期せぬ事態にショックが大きすぎたのか、駆け出さずにディーバさんの下へポテポテと歩み寄る。
お尻っ!!
ほわほわもっふもふのお尻!!
しかもダブル!!
可愛過ぎるもふもふ天使達は尻も可愛いと腐った事を考えてるとは思いも寄らないだろう子供達はたどり着くとディーバさんの足にひしっと縋り付いた。
これも可愛い!!などと心の中で暴走している私とは裏腹に至って冷静に、そして微笑み付きでディーバさんが言う。
「ああ。獣還りに入ったんですね」
「獣還り?」
あまりにもさらりと言われて聞き返してしまう。
先祖還りという言葉は知っていても、獣還りとは初耳だ。
「はい。私達獣人は生涯に何度か人の姿をとらず、獣の姿で過ごす期間があるのです」
「「いや゛だ~」」
ディーバさんの説明にわんわんと泣く毛玉ちゃん達は、申し訳ないが、とても可愛い。犬飼いなら誰しも一度は頭を過ぎる、「可愛すぎてお口に入れちゃうぞ」をしたいくらいだ。
子犬サイズな彼等の鼻先(ノズル)はカポッとくわえ易そうだ。
そうこうしている内にエキサイトしてきたのか、子供達は「ウォーゥ、ウォーゥ」と実に悲しげに遠吠えを始めている。
「発熱など他に症状は無いのでしょうか?又、期間は?」
「はい。ただ獣姿なだけで安静にする必要もございません。ただ……」
「「「ただ?」」」
切られたディーバさんの言葉に私と毛玉ちゃん達の疑問が被る。
「戻る期間は分からないのです。一日もかからずに戻る者も入れば、長く戻れない者も居ます。最長は確か、ルッツォで半年、次いでジルの三ヶ月、だったと思います」
「半年!?」
悲鳴に似た私の言葉に子供達はびくりと体を揺らした。
「は、半年って、なん、だ?」
「三ヶ月って、何回おはようとおやすみの、ご挨拶、したら良いの?」
迂闊な自分の言動にハッとしながら、震える声で聞き返すアルゴス君とマルケス君の側に寄り、二人の体を腕に抱き上げる。珍しく言い淀んだディーバさんはごくりと唾を飲み込んだ後、子供達と視線を合わせて口を開いた。
「……半年は百八十回、三ヶ月は九十回です」
「「 」」
言葉を出せず、ただただ呆然としている子供達は、一週間でも「たくさんだ!!」と言っていた。
それから測るにそうとうなショックだろう。
二人の体がクタリと力を無くし、反比例するようにずしりと重さを増した。
「「アルゴス君!?マルケス君!?」」
気を失ったかと声をかけながら覗き込むと、ゆるゆると顔を私に向けた。
「ママ、俺、達……」
「いつ、戻れる、の?」
私のせいで現実に向き合わされた子供達の縋る言葉に返す言葉が出なかった。
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