上 下
112 / 241

新たな官僚 5

しおりを挟む
 いやいやいや!!違うでしょ!!つか
「嘘でしょ!?私、そういう意味でも狙われちゃうの!?」
 心の中で叫んだはずの言葉は口からぽろりと落ちていた。おかげで敬語だなんだは無しの友達言葉だ。
「お前は!!鏡を見た事が無いのか!?お前は美女だ!!」
 バンッとテーブルを叩いて叫んだエリゴスさんは、私の視線に気付いたとたんに真っ赤になってそっぽを向いた。ソルゴスさんもディーバさんも頷いているし、王様はエリゴスさんにつられたのか顔を赤くしている。かくいう私も、「お前は美女だ!!」と叫ばれ、いろんな意味で臨界点突破だ。
「良いっ!!天然無自覚美女っ!!サイコー!!ミーナ様!!私をお姉ちゃまって呼……ぅふぅ!?」
 叫んで身もだえたシュリさんはまたもや見えない手で口を塞がれてジタバタしている。ランティスさん、マンティスさん、ラムセスさんは恥ずかしそうにモジモジと身体を動かし、アレスさんは何かを堪えるかのようにじっとティーカップを見つめていた。
「申し訳ありません。自覚します」
 一気に場を混乱させた私はそれ以上の事は言えなかった。
「そうしろ!!」
 怒ったように言うエリゴスさんに頭を下げる。
 いや、しかし、美貌という特典が付くのならば、誘拐された後に、女性だからこその、特別で最大級の危険もはらむ。それは、囚われた後、逃げ出さないように、人質を私自身が赤子を産み出す事で獲て、楯にする。
 嫌過ぎる想像に身震いしてしまう。
「そういう事ですのでミーナ、貴女には護衛を選んで頂きます。陛下以外であれば、我々から選んでいただいてかまいません」
 いや!!構うでしょう!?貴方たちは国のブレーンですよ!?
 ディーバさんの言葉にソルゴスさんとエリゴスさんが頷いているが、「そんな暇無いでしょ!?」と言いたい。確かに今まではディーバさん、ソルゴスさん、エリゴスさんの内、誰か一人がついていてくれたが、水無月 楓という存在を把握、監視するためだったと認識していた。決して護衛などではない。そんな中、すっとアレスさんが右手をあげた。
「護衛として私は立候補します」
「そうだな。我等兄弟も立候補する」
「兄に異存ありません」
 アレスさんの言葉に頷いて、ランティスさんとマンティスさんも続いた。
「今までソルゴス様の部下としてやってきた矜持があります。僭越(せんえつ)ながら、私も護衛役に立候補します」
「ずるいです!!私は女ですが、だからこそ四六時中一緒に居られます!!」
 ついには、全員が私の護衛として名乗り出てしまった。アレスさん、ランティスさん、マンティスさん、ラムセスさん、シュリさんは怖いくらいに真剣に「いかにミーナを守れるか」を論じている。
 「あんた達、さっき、フォレストに尽くすと宣言したばかりでしょう!?私を優先するな」と言ってやりたいが、ややこしくなりそうな気がして口をつぐむ。
「シフト制にしろ。それで不公平感はぬぐえるな?」
「はい」
 ちょっ!?えー!?
 混乱している私の心情はそのままに、立候補した皆は王様の言葉に頭を深々と下げる。
「まとまりましたし、時間も良いようです。移動しましょう」
 うそーん!?
 「話は終わった」とばかりに席を立つ皆に逆らうことも出来ずに、ディーバさんに促され、皆で会場へと足を向けた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

虐げられた公爵令嬢は辺境の吸血伯に溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:476

二つの国と少女

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:0

猫耳幼女の異世界騎士団暮らし

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,159pt お気に入り:401

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:4,132

風のささめき

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:0

死にたがりの悪役令嬢

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:118

9番と呼ばれていた妻は執着してくる夫に別れを告げる

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:99,813pt お気に入り:2,579

孤島のリリア

SF / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:7

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:4,517

処理中です...