鈍感先輩は僕のおもちゃ(美形アイドル×歌い手)

ハヤイもち

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 ヒロさんを初めてみたのは中学生の時だった。
 黙っているとカッコいいのに人懐っこさそうな笑顔でおちゃらけて振る舞う。歌う前は冗談などを言って周囲の人を笑わせていた。おかしいな、歌番組見てたはずなのにお笑いだったかな、などと思っていたら彼がステージに立った。
 男性なのに少し掠れた高音ボイスでしっとりと歌っているのは失恋の歌。
 さっきの笑いが嘘みたいに会場が静まりかえり、暗いステージをスポットライトが照らす。
 カメラがズームしていく。彼の寂しそうな泣きそうな顔が画面に映される。
 まじで、こんな顔で歌ってるのかよ。
 見てはいけないものを見てしまった気がした。その瞬間、心臓がどくっと脈打ち、何かが弾けた。


「ひっ、ぐすっ、ぅぅ゙ッ…」

 俺の下で泣いてるらしいヒロさん。
 既に服は着てなくて素っ裸に噛み跡とかキスマークがびっちりついてる。
 俺の視線から逃げるように縮こまってガタガタ震えながら泣いてる。
 何これちょーかわいい。こんなかわいい生き物見たことない。

「な…、でごんなごどォ゙…、おれのこと、きらいだったの、うゔ、ゔぅッ…ずっ」

 大好きですよ。こんな泣き虫なんて知らなかったけど、そんな女々しいところを見ても引くどころか、愛しくなる。
 だめじゃん、後輩にこんな簡単に泣かされて。やっぱり俺が守んないと。
 尻を揉みながら、首にぢゅっと音を立ててキスすると「も…、やだぁ」ってまた泣き出した。

「ぎらい、嫌い、ひっく、お前なんて嫌いだぁ…もう二度と来んな、ぐすっ、…もぉ、どっか行けよぉっ」

 ゴッ!

 闇雲に腕を振り回した腕が俺の顎に当たる。

「あっ、ごめっ…」

 真っ青になって慌てて謝るヒロさん。
 そりぁ、初めてだし、俺のはデカくて痛かっただろうし、歳下にいいようにされて、プライドズタズタにされて怒るのはわかる。
 わかるけど、我慢できるかどうかは別の問題だ。
 嫌いとか、二度と来るなとかどう考えても許せないだろ。だって俺は一生懸命我慢しようとしてた。憧れの人で、大好きで、汚しちゃいけないと思ってた。猫かぶっていい子ちゃんな後輩の振りしてこのままこの関係が続くのならそれでもいい気がしてた。
 それをぶち壊しにしたのはあんただろ。

「ヒロさん、覚悟できてる?」
「ひぃっ…」

 耳元で囁いてやると、ヒロさんの身体がビクッと震えた。見開かれ怯えた目の中に期待するような色が見える。
 やっぱり淫乱だ。身体は正直ってことだろう。

「やっ、やだやだやだっ、ゔ、んー゛」

 俺は彼の手首をまとめて拘束すると、素直じゃない唇に無理矢理口付けた。


「はじめまして。えっ俺のファンって本当だったの!?チョーうれしい、ありがとう」

 生のヒロさんは最高だった。
 カメラ越しよりずっとかっこよくて男前なのに、話しかけると満面の笑みで俺の手をブンブン振り回す。かっこよくてかわいいってなにそれ最強じゃん。

「こんなイケメンが俺のファンとか未だに信じられないわ。ガクくんもテレビで見るよりイケメンだねぇ」

 褒められた。推しに褒められた感動に昇天しかけた。この汚い世界に舞い降りた天使かよ。尊すぎ、一生手洗わないわ、俺。
 俺が古参ファンってことに疑い気味だったヒロさんに初投稿曲名、日付、これまで投稿してきた歌、作詞した歌を全て時系列と感想ともに伝えるとすげー恥ずかしそうにしながら「あ、それは黒歴史だから」とか、「若気の至りで」とか言って慌てて俺の口を塞ごうとする。

「わかったわかった、もう十分だから恥ずかしいけど、すごい嬉しい」

 綻ぶような笑顔に眩しすぎて成仏しそうになる。だめだ、これから一緒に歌うのにこれじゃ心臓がもたない。

「はぁ~俺の推しまじ尊」

生きてて良かったぁ。


 それから到底手に届かないような人と並んで歌うことができて、笑顔を向けられ、家にも呼ばれ、こんなに歳離れてるのに親友みたいになった。
 俺はそれで十分だって諦めようとしてた。だってこのポジションはすごい心地良いし、無邪気な笑顔向けてくるヒロさんはかわいいし、付き合ってる彼女は「なんで構ってくれないの?」ってうるさいけど、仕事も順調で人生好調。

それが。

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