聖女♂な王子は国に裏切られて捨て駒にされたから、魔王様の嫁になるわ

ハヤイもち

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第一章 戦う聖女

魔王城での一幕

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「さすが魔王様。王子である俺に
こんな格好をさせるとは
実にいい趣味をお持ちだな」

俺は自分の恰好を見下ろすと、皮肉のこもった
笑みを魔王に向けた。

魔王の部下に捕らえられ、魔王城に連れてこられた。
そこで俺は女性のエルフたちに体を綺麗に洗われ、
さらに薄く透ける下着のような恰好をさせられている。

もちろん俺は男だ。
他の兄弟に比べれば細身だと言え、
筋肉もあり、どうやっても女には見えない。

「女装が好きなら部下にさせたらどうだ?
あいつらお前の命令なら喜んでドレスでもランジェリーでも
着るだろうよ」

さぞ滑稽だろう。

俺はランジェリー姿で迫りくるゴブリンの軍勢を想像し、
地獄絵図だな、と思った。
しかし、自分も今は同じような格好だ。

「なんとでも言うがいい。それよりお前、聖女だろう?
なぜそんなものが総指揮を任されているんだ?」

甲冑を脱ぎ、ゆったりとしたローブに着替えた魔王は、
ワインを片手に優雅に王子に問いかける。
ゆるくウェーブした銀髪がしっとりと湿っている。

「聖女だから何だというんだ?
俺は民を守るために戦っただけだが?
なぜ魔王のお前がそんなことを気にするんだ?」

”聖女”。

その言葉にかすかに反応してしまい、苛立ちが募る。
どいつもこいつも俺が聖女だから何だってんだ。
聖女としての役目を果たせず、結界は破られ、
魔王に捕らわれている。

こうしている間にも国には魔族が押し寄せ、
逃げ遅れた民衆が蹂躙されているかもしれないというのに。

情けない。
聖女としての役目も、王子として民を守るという役目も
果たせていない。
生き恥を晒してここにいる。

魔王は俺の正面に来ると、頬を撫でた。
そのまま手を下に滑らせる。
魔王の大きな手で首筋から胸元まで触れられると、
嫌悪感で鳥肌が立った。

「あぁ……やはり綺麗だな。
大聖母の息子。聖女の血を引く王子。
気高く美しい魂だ。
これを我が手で汚せると思うと、
胸が高鳴る」

「汚らわしい魔族が、気安く俺に触るな」

俺は魔王を下から睨みつけた。
例え何をされようとも、魔族にだけは心を
明け渡してはいけない。

物心つく前から何度も何度もそう言われてきた。

神に身を捧げる聖女であるならばなおさらだ。

神に仕える聖女は特別な存在だ。
神聖な魔力は魔族がもっとも忌み嫌うものであり、
同時に彼らが欲してやまないものだ。

魔族は聖女を堕落させ、おのれのモノとするために
言葉巧みにそそのかし、道を踏み外させようとする。

魔族にそそのかされた聖女の末路は悲惨だ。
神に見捨てられ、人間に忌み嫌われ、
その神聖な魔力はたちまち暗黒へと染まり、
自ら魔物へとなり果てる。

そのため、魔物に捕まった聖女は自ら命を絶つ。

しかし、俺は聖女であると同時に王子だ。

魔王の気まぐれでとりとめた命。
国に取り残された民を助けるために、
この命を使うことに決めた。
聖女としての役目を果たせなかった俺は、
せめて王子として民を守る。

「これはこれはさすが聖女。
我に対してそのような態度を取る者など久しぶりだ」

「従順で言いなりなだけの下僕に囲まれていれば
そうだろうよ」

「おや?あの者たちはあれで意外とあくが強くて我も
手を焼いているぞ。我に従う理由も我があ奴らより
強いというだけの話。もし我が少しでも隙を見せれば
たちまち王座はひっくり返るだろう」

はははっと魔王が盛大に笑い、ついでに俺の頭を撫でた。

「やめろっ、何する!」

「生意気で元気があっていいことだ。
我はお前よりもずっと長く生きている。
我にとってはお前はまだ赤子のようなものよ」

「貴様は赤子に欲情するのか?」

「それとこれとは別の話。
やはり、お前は美しい。手に入れられる日を
ずっと待っておったのだ」

熱っぽい眼差しで魔王が俺を見つめてくる。
その視線に耐えきれず俺は顔を背けた。

「まだここは誰にも暴かれていないのだろう。
高潔な王子よ。
我を一番最初で最後の男にしてやろう」
「…!やめろっ」

魔王は俺をベッドに押し倒すと、
服をはぎ取った。
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