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第33話 君とのデート当日①
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青い空、白い雲、絶好のデート日和!関係各所に協力してもらって山石君おもてなしプランも準備は万端!今日はどんな顔してくれるんだろう?想像するだけで顔は緩んで足取りが軽くなる。
いつものように病院にやってきたけど、ちょっと着くのが早すぎたみたいだった。今日はいつもと違ってキャリーバッグを引きずりながら、少し遠回りして山石君の病室に向かう。これでちょうど時間調整できそう。
ベッドの上に鏡を置いて髪をセットしている途中だった山石君は、いつもの院内着のTシャツやパジャマじゃなくて襟付きのシャツを着ておしゃれしていた。これはきっとお母さんのアドバイスがあったんだな。
「やっほ。今日は一段ときまってるね。そういう服着るなんて珍しいよね。」
「うん。僕はいつも通りでいいって言ったのに、母さんがこれ着なさいって。わざわざ買ってきたみたいなんだよね。だから、無下にもするわけにいかず……変かな?」
「全然かっこいいよ。ばっちり似合ってるし。それにしても、やっぱりお母さんの仕業だったか……」
「ん?やっぱり?母さんは今日のこと何か知ってるの?」
「い、いやいや、なんでもないよ。ほら!準備できたら出発だよ。最初は山石君による青空囲碁教室だからね。」
「りょーかい。これで、よしっと。」
山石君が車いすに移動し膝の上にバッグを持ったのを確認したら、後ろから優しく押してスムーズに病室から滑り出た。最初の目的地は中庭だ。何度も通い慣れた道だけど、今日はひときわ明るく色鮮やかに見えた。世界って気分によってこんなに姿を変えるんだ。
中庭の木陰に設置してあるテーブルセットを一つ貸し切りにさせてもらって、2人っきりの囲碁教室を開催する。山石君はバッグの中から簡易的な碁盤セットを取り出すと、少し困ったように動きを止めた。
「あの……森野さんから今日のこと聞いてから急いで作ったものだから、あんまり飾りとかデザインとか考えれてないんだけど……ないよりはあった方がいいかなって。全然いらなかったら捨ててくれていいから。これ。」
そう言いながらバッグの中から取り出したのは、表紙に山石君の字で「サルでもわかる囲碁教室」と題が書いてある手作り感満載の冊子だった。手渡されたものをパラパラと開いてみると、囲碁のルールや上達のためのコツなど様々なアドバイスがイラスト付きで50ページ以上にわたって手書きで書き込まれていた。ミャーコのイラストが描いてあったり音楽で例えてあったりして、私のために作られた世界で一冊しかない説明書だった。読み進めていくうちに、これを作った山石君の姿が思い浮かんできて、早くも目から雫がこぼれ落ちそうになる。
「捨てるなんて……ありえないから。これは私がもらっても?やったぁ!絶対絶対大事にする!」
「ありがとう。喜んでくれて嬉しいんだけど、今から使うからしまうのはまだ早いよ。」
大事にかばんの中に入れようとしているのを山石君に突っ込まれてしまった。そっか、今から教わるんだった。
その後、その説明書を一緒に見ながら囲碁のルールや進め方などを、碁盤で実際に打ちながら教えてもらった。2人で額をつき合わせながら穏やかな優しい時間が過ぎていく。山石君はやっぱり囲碁のことになると目付きが変わってキラキラ輝いている。こういうところが大好きなんだよなぁ。そう思いながら顔を眺めていると、一生懸命碁盤を見て説明していた山石君が顔を上げて目が合ってしまった。
「もう、人が頑張って説明してるの聞いてた?」
「ごめんごめん。山石君が輝いてるなぁって考えてた。」
山石君は恥ずかしそうに顔を背けながらモゴモゴ不満そうな声を出していた。ちゃんと集中して聞いてあげなきゃだね。
一通りルールや打ち方を教えてもらって簡単に打てるようになったところで囲碁教室は終了となった。
「うん。ここまで理解できたらある程度は打てるはずだよ。」
「ありがとう。やっと何をしてるかが分かるようになった気がする。」
「いえいえ、これからも何度か打ってみようね。」
「またその時はお手柔らかにお願いします、先生。」
「手加減はしませんよ。なんてね。」
「ふふふ。さて、囲碁教室はここまで!っと見せかけて、実は本日はサプライズゲストをお呼びしてます!1人目の関係各所です!」
合図とともに病院の方から1人の人影がこちらに歩いてくる。私たちの共通の知人で囲碁ができるといえば、そう!あの人!
いつものように病院にやってきたけど、ちょっと着くのが早すぎたみたいだった。今日はいつもと違ってキャリーバッグを引きずりながら、少し遠回りして山石君の病室に向かう。これでちょうど時間調整できそう。
ベッドの上に鏡を置いて髪をセットしている途中だった山石君は、いつもの院内着のTシャツやパジャマじゃなくて襟付きのシャツを着ておしゃれしていた。これはきっとお母さんのアドバイスがあったんだな。
「やっほ。今日は一段ときまってるね。そういう服着るなんて珍しいよね。」
「うん。僕はいつも通りでいいって言ったのに、母さんがこれ着なさいって。わざわざ買ってきたみたいなんだよね。だから、無下にもするわけにいかず……変かな?」
「全然かっこいいよ。ばっちり似合ってるし。それにしても、やっぱりお母さんの仕業だったか……」
「ん?やっぱり?母さんは今日のこと何か知ってるの?」
「い、いやいや、なんでもないよ。ほら!準備できたら出発だよ。最初は山石君による青空囲碁教室だからね。」
「りょーかい。これで、よしっと。」
山石君が車いすに移動し膝の上にバッグを持ったのを確認したら、後ろから優しく押してスムーズに病室から滑り出た。最初の目的地は中庭だ。何度も通い慣れた道だけど、今日はひときわ明るく色鮮やかに見えた。世界って気分によってこんなに姿を変えるんだ。
中庭の木陰に設置してあるテーブルセットを一つ貸し切りにさせてもらって、2人っきりの囲碁教室を開催する。山石君はバッグの中から簡易的な碁盤セットを取り出すと、少し困ったように動きを止めた。
「あの……森野さんから今日のこと聞いてから急いで作ったものだから、あんまり飾りとかデザインとか考えれてないんだけど……ないよりはあった方がいいかなって。全然いらなかったら捨ててくれていいから。これ。」
そう言いながらバッグの中から取り出したのは、表紙に山石君の字で「サルでもわかる囲碁教室」と題が書いてある手作り感満載の冊子だった。手渡されたものをパラパラと開いてみると、囲碁のルールや上達のためのコツなど様々なアドバイスがイラスト付きで50ページ以上にわたって手書きで書き込まれていた。ミャーコのイラストが描いてあったり音楽で例えてあったりして、私のために作られた世界で一冊しかない説明書だった。読み進めていくうちに、これを作った山石君の姿が思い浮かんできて、早くも目から雫がこぼれ落ちそうになる。
「捨てるなんて……ありえないから。これは私がもらっても?やったぁ!絶対絶対大事にする!」
「ありがとう。喜んでくれて嬉しいんだけど、今から使うからしまうのはまだ早いよ。」
大事にかばんの中に入れようとしているのを山石君に突っ込まれてしまった。そっか、今から教わるんだった。
その後、その説明書を一緒に見ながら囲碁のルールや進め方などを、碁盤で実際に打ちながら教えてもらった。2人で額をつき合わせながら穏やかな優しい時間が過ぎていく。山石君はやっぱり囲碁のことになると目付きが変わってキラキラ輝いている。こういうところが大好きなんだよなぁ。そう思いながら顔を眺めていると、一生懸命碁盤を見て説明していた山石君が顔を上げて目が合ってしまった。
「もう、人が頑張って説明してるの聞いてた?」
「ごめんごめん。山石君が輝いてるなぁって考えてた。」
山石君は恥ずかしそうに顔を背けながらモゴモゴ不満そうな声を出していた。ちゃんと集中して聞いてあげなきゃだね。
一通りルールや打ち方を教えてもらって簡単に打てるようになったところで囲碁教室は終了となった。
「うん。ここまで理解できたらある程度は打てるはずだよ。」
「ありがとう。やっと何をしてるかが分かるようになった気がする。」
「いえいえ、これからも何度か打ってみようね。」
「またその時はお手柔らかにお願いします、先生。」
「手加減はしませんよ。なんてね。」
「ふふふ。さて、囲碁教室はここまで!っと見せかけて、実は本日はサプライズゲストをお呼びしてます!1人目の関係各所です!」
合図とともに病院の方から1人の人影がこちらに歩いてくる。私たちの共通の知人で囲碁ができるといえば、そう!あの人!
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