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夏休み
第25話 花火大会で人混みといえば…
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ある程度腹ごしらえができたら、次は遊びたくなってくるものだ。かといって金魚掬いは金魚を育てられる自信がないし、クジ引きはどうせ当たりは入ってないし…
「ねぇねぇ、あれやろうよ!射的?私あの猫のぬいぐるみが欲しい!」
見ると某権利に厳しいネズミのキャラクターを、権利違反して猫にしたようなぬいぐるみが鎮座している。しかし、射的の威力に対して明らかに大きすぎるような気がする。
――これは、皆がなかなか取れない中で取れたらヒーローになるやつだ。
「私やってみる。全部あのぬいぐるみ狙ってやる!」
アリスが息巻いて狙うも一向に取れる気配がない。頭付近に当たれば少しぐらつくくらいで、当たりどころが悪ければびくともしない。普通にやったら何回当てても落ちることはなさそうだった。
「こんなの絶対無理じゃん!うぅぅ、私のミッケーちゃんが…」
「怒られちゃうからやめて、その名前。猫っぽくしてるけどギリギリだよ?」
「しかし、あれは何回やっても落ちないでしょ。広井さんも諦めた方がいいんじゃない?」
アリスは栄一の説得にも納得できず、ふくれっ面でその場から一向に動こうとしない。
「…じゃあ取れるか分からないけど。おっちゃんこの銃2丁使ってもいい?」
「只男がやってくれるの!?頑張って!」
2丁使うなら2回分払えというケチなおっちゃんと一悶着あったが、何とか2丁同時に使わせてもらえることになった。
「でも何で2つも使うの?」
「そりゃ1つじゃ何回当てても落ちないけど、2つ使えばこうやって…」
まず1丁目で頭に当ててぬいぐるみをぐらつかせる。すかさずぐらついた反動に合わせて2丁目の弾を頭に当てると…
「お、お、お…落ちたー!すごいすごーい!只男にそんな才能があったなんて!」
「大体地味でパッとしない少年には射撃の才能が付与されてるもんなんだよ。」
「そういうものなの?」
周囲の歓声とおっちゃんの舌打ちの音に愉悦を感じながら、余った弾で取れそうな景品を根こそぎ取ってってやった。景品を渡す時に、機嫌が悪いのを隠そうともしないおっちゃんの姿が逆に可笑しかった。
「すごかったね!最後まで落としまくって大漁じゃん!ミッケーも取れてたし…」
アリスが景品の袋を見ながら声をかけてくるが、視線はぬいぐるみから離れない。
「まぁね、こんな時にしか発揮されない特技だけどね。」
「いやいや、十分すごいよ。前から只男は何か特別なものを持ってる気がしてたんだよね。」
やけにべた褒めしてくるのはぬいぐるみが欲しいからだろう。もう少し泳がせてみようか。
「特にミッケーを取った作戦が素晴らしかったなぁ。それにしてもミッケーは可愛いなぁ。ちょっと只男には可愛すぎる気もするよね。」
「そうかな?瞳がくりくりっとしてて結構気に入ってるんだけど。」
「あ…そっか、そうだよね…まぁ、只男が取った景品だから只男のものだもんね!…」
ミッケーをもらえそうにない空気を察して、明らかに落ち込んだ様子を見せるアリス。分かりやす過ぎる。あんまり意地悪をしても可哀想になってきたから、そろそろ本当のことを教えてあげることにする。
「嘘だよ。元々アリスのために取ったもんだから。」
そう言ってアリスの手にミッケーを持たせる。落ち込んで俯いていた顔がパッと輝いて、ぴょんぴょんと飛び跳ね始めた。
「ありがとうっ!もううちの子だからね!やっぱり返してとか言うのは無しだからね!」
「言わない言わない、そんなこと。」
「やったやった!」
こんなに喜んでもらえるならぬいぐるみ冥利に尽きるだろう。
「このままミッケーと一緒に回っちゃお。只男、早く行こう!」
――テンションが上がってはしゃぎ気味のアリス。周りは花火の時間が近づいて人混みが増してきている……これは、アリスが迷子になってしまうやつだ。
「アリス、待って!栄一と長名がまだ来てない。」
このまま目を離したらどこかへ行ってしまいそうだったので、浴衣を掴んで遅れてる2人を待つ。
「あっ、只男くーん。人増えてきたね。」
「遅くなってごめんごめん。広井さんは?」
「ああ、はぐれちゃいけないからこうやって浴衣を掴んで…」
言いながら手繰り寄せた浴衣の先では、アリスとは似ても似つかない派手めの女の子がチョコバナナを頬張りながら怪訝な顔をしてこちらを見ていた。掴んでいる部分を確認すると、浴衣の柄だけがそっくりだった。分かっていたのに、やらかした…アリスを見失ってしまった…
「ねぇねぇ、あれやろうよ!射的?私あの猫のぬいぐるみが欲しい!」
見ると某権利に厳しいネズミのキャラクターを、権利違反して猫にしたようなぬいぐるみが鎮座している。しかし、射的の威力に対して明らかに大きすぎるような気がする。
――これは、皆がなかなか取れない中で取れたらヒーローになるやつだ。
「私やってみる。全部あのぬいぐるみ狙ってやる!」
アリスが息巻いて狙うも一向に取れる気配がない。頭付近に当たれば少しぐらつくくらいで、当たりどころが悪ければびくともしない。普通にやったら何回当てても落ちることはなさそうだった。
「こんなの絶対無理じゃん!うぅぅ、私のミッケーちゃんが…」
「怒られちゃうからやめて、その名前。猫っぽくしてるけどギリギリだよ?」
「しかし、あれは何回やっても落ちないでしょ。広井さんも諦めた方がいいんじゃない?」
アリスは栄一の説得にも納得できず、ふくれっ面でその場から一向に動こうとしない。
「…じゃあ取れるか分からないけど。おっちゃんこの銃2丁使ってもいい?」
「只男がやってくれるの!?頑張って!」
2丁使うなら2回分払えというケチなおっちゃんと一悶着あったが、何とか2丁同時に使わせてもらえることになった。
「でも何で2つも使うの?」
「そりゃ1つじゃ何回当てても落ちないけど、2つ使えばこうやって…」
まず1丁目で頭に当ててぬいぐるみをぐらつかせる。すかさずぐらついた反動に合わせて2丁目の弾を頭に当てると…
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「大体地味でパッとしない少年には射撃の才能が付与されてるもんなんだよ。」
「そういうものなの?」
周囲の歓声とおっちゃんの舌打ちの音に愉悦を感じながら、余った弾で取れそうな景品を根こそぎ取ってってやった。景品を渡す時に、機嫌が悪いのを隠そうともしないおっちゃんの姿が逆に可笑しかった。
「すごかったね!最後まで落としまくって大漁じゃん!ミッケーも取れてたし…」
アリスが景品の袋を見ながら声をかけてくるが、視線はぬいぐるみから離れない。
「まぁね、こんな時にしか発揮されない特技だけどね。」
「いやいや、十分すごいよ。前から只男は何か特別なものを持ってる気がしてたんだよね。」
やけにべた褒めしてくるのはぬいぐるみが欲しいからだろう。もう少し泳がせてみようか。
「特にミッケーを取った作戦が素晴らしかったなぁ。それにしてもミッケーは可愛いなぁ。ちょっと只男には可愛すぎる気もするよね。」
「そうかな?瞳がくりくりっとしてて結構気に入ってるんだけど。」
「あ…そっか、そうだよね…まぁ、只男が取った景品だから只男のものだもんね!…」
ミッケーをもらえそうにない空気を察して、明らかに落ち込んだ様子を見せるアリス。分かりやす過ぎる。あんまり意地悪をしても可哀想になってきたから、そろそろ本当のことを教えてあげることにする。
「嘘だよ。元々アリスのために取ったもんだから。」
そう言ってアリスの手にミッケーを持たせる。落ち込んで俯いていた顔がパッと輝いて、ぴょんぴょんと飛び跳ね始めた。
「ありがとうっ!もううちの子だからね!やっぱり返してとか言うのは無しだからね!」
「言わない言わない、そんなこと。」
「やったやった!」
こんなに喜んでもらえるならぬいぐるみ冥利に尽きるだろう。
「このままミッケーと一緒に回っちゃお。只男、早く行こう!」
――テンションが上がってはしゃぎ気味のアリス。周りは花火の時間が近づいて人混みが増してきている……これは、アリスが迷子になってしまうやつだ。
「アリス、待って!栄一と長名がまだ来てない。」
このまま目を離したらどこかへ行ってしまいそうだったので、浴衣を掴んで遅れてる2人を待つ。
「あっ、只男くーん。人増えてきたね。」
「遅くなってごめんごめん。広井さんは?」
「ああ、はぐれちゃいけないからこうやって浴衣を掴んで…」
言いながら手繰り寄せた浴衣の先では、アリスとは似ても似つかない派手めの女の子がチョコバナナを頬張りながら怪訝な顔をしてこちらを見ていた。掴んでいる部分を確認すると、浴衣の柄だけがそっくりだった。分かっていたのに、やらかした…アリスを見失ってしまった…
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