転校生とフラグ察知鈍感男

加藤やま

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夏休み

第26話 迷子が見つかるのは意外にも…

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「どう?そっちにいた?」
「いや、入口の方には来てないみたい。」
「奥の方でも見かけた人はいないって。どうしよう…もうすぐ花火の時間になるのに…」
「うーん…とりあえず、栄一と長名は先に行って場所取りお願いしていい?」
「でもアリスちゃんはまだ…」
「俺がギリギリまで探してみる。」
「…そうだな。俺らは先に行ってスマホに電話し続けておこう。」
 スマホは家に忘れたのか、何度かけても繋がらなかった。栄一と長名には花火の打ち上げ会場に行っててもらい、1人ではぐれたアリスと探すことにした。しかし、ただ闇雲に探しても見つかる気がしない。
――こういう時は、大体これまでの発言や行動がヒントになるはずだ。食べ物の話をして射的をして…食べ物?…ファンネルケーキ!……これは、なぜかファンネルケーキ屋があってそこで見つかるやつだ!
 出店の看板を眺め回してみるがそれらしきものは見当たらない。と思った矢先、「アメリカ発祥」「日本初上陸!?」という文字が目に飛び込んできた。すぐに見えるところにあったのに、今まで全然気がつかなかった。意識して探すと見つかるものだ。
 近付いてみると、射的の店の対面に店を構えていた。紫を基調にしたド派手な看板にはでかでかとファンネルケーキの文字が躍っている。その側で半べそをかきながらファンネルケーキを頬張る見知った顔を見つけた。
「アリス!」
「ふぁ、ふぁふぁふぉー!ふぁっふぉふぁふぇふぁー!」
 頬張りすぎて何言っているか分からないが安心しているのは伝わった。堰を切ったように大粒の涙を流しながら、口の中のものを勢いよく飲み込む。
「ひっく…やっと見つけたよぉ…うぅ…皆いなくなっちゃうからぁ…」
 いなくなったのはアリスの方だったんだけど…そういうことを言う時ではないことは察した。
「でも、こういう時は、その場から動いたら、ますます迷っちゃうから、動いちゃダメだってぇ…何かで見て…ひっく…そしたらファンネルケーキのお店があって…」
「それは山で遭難した時のやつじゃないか?でもまぁ、そのお陰で見つかったから結果オーライか。」
「ファンネルケーキは美味しいよぉ…ひっく…」
 そう言いながら持っているファンネルケーキを差し出してくる。パニックになって謎の行動を取り始めている。一口もらって食べながら、落ち着かせるためできるだけ平静を装って言い聞かせる。
「もう大丈夫だから。栄一と長名には場所取りしてもらってるし、まだ花火も始まってないから。これ!ファンネルケーキがあったって2人にも教えてあげよう!」
 アリスが頷きながら泣き止み始めたのを確認して、栄一にメッセージを送る。
「2人にも見つかったって連絡したから。良い場所確保してくれたって。」
「良かったぁ。私のせいでみんなが花火見れなくなったらどうしようかと思っ…」
 アリスが話し終わる直前、大きな爆発音が鳴り響いた。花火の最初の1発が打ち上がったようだ。
 会場まではかなり距離があるし人も増えてきており、下手に動くとまたはぐれるかもしれない。
「どうしよう…やっぱり私のせいで只男は花火が見れない…」
 俯きながら目はビー玉みたいにキラキラ光って、今にも滴がこぼれ落ちそうになっている。
 その姿を見て何故か既視感を覚えた。どこかで同じようなことがあったような気がする…そうだ。小さい頃同じように迷子になったことがあった。その時はたしか…
「そうか!アリスこっち!ちょっと歩くけど大丈夫?」
「えっ…それは大丈夫だけど。そっちは会場じゃないよね?」
 アリスの手を掴み、花火見物の人の流れとは全く違う方向に歩き出した。
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