original ring

藤丸セブン

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1章 旅立ち

1話 original ring

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 遠い昔。この世界では争いが繰り広げられていた。この世界には五種類の種族の生物が生息しており、その種族が争いをしていたのだ。醜悪な容姿、強力な攻撃力を持ち、破壊を好む種族、魔族。純潔を愛し、己が体に魔力を秘めし種族、妖精族。力強く、逞しい心を持つ種族ドワーフ。獣の能力を持ち、嗅覚や聴覚など様々な個性がある獣人。そして、特殊な能力を何も持たない人間。この争いは止まる気配などなく、人間がいよいよ死に絶える寸前の時、奇跡が起こった。無力な人間達の前に、神の使いと呼ばれる竜が姿を表したのだ。その竜は人間に自分の力を少量加えて作った八つの指輪を授けた。その指輪の力は絶大だった。指輪による力で人間は全ての種族を負かして、世界を支配する事となった。妖精、獣人は大人しく人間の支配に従い小さい国で新生活を始めた。ドワーフは人間に逆らった罪により全滅。魔族も人間に逆らったが逃亡。今も世界のあちらこちらに潜んでは、人間を喰らっている。こうして平和になった世界だったが、竜の指輪を悪用するものが現れた。その様なものから指輪を守るため竜は再び現れ、とある一家に指輪の管理を任せた。その一家は今でも世界のどこかで指輪を守っている。
  ◇
「ばあちゃん。その話聞き飽きたよ。これで何回目だ?」
 小さな定食屋の座敷に寝転がり少年は昔の御伽噺を楽しげに語る老婆に言った。
「そう言うなライヤよ。ワシももう長くない。お前が旅に出る前にこの伝説を伝えておきたい」
 ワックスで綺麗にセットされた黄色の髪を揺らして少年ライヤは定食屋のエプロンを着るために立ち上がる。ライヤは現在十七歳。この世界では十八歳になると成人となり親元を離れる事が出来るのだ。
「前から言ってんだろ?俺はばあちゃんの定食屋継ぐよ。冒険者にはなりたいけど、じいちゃんやかあちゃんもそれを望むんじゃね?」
 冒険者とは、この世界における何でも屋だ。現れた魔族の討伐を主な仕事としているが、その他にも薬草採取や旅路の護衛などの仕事もある。ライヤは昔から祖父や父の仕事であった冒険者に憧れていた。しかし、祖父は大怪我をして引退、父は殉職した。その状況に追い討ちをかける様に流行病で母と祖父が死んでしまった。今ライヤの家族は祖母だけなのだ。
「頑固じゃのう。ライヤはライヤの道を進めば良いと言うのに」
「頑固なのはじいちゃん譲り。文句ならじいちゃんを選んだ自分にいいな!」
 エプロンをつけて調理場に入ったライヤは冷蔵庫から食材を取り出し手際良く野菜炒めを作った。
「ほらばあちゃん。もうすぐ開店時間だぞ。これ食って手伝ってくれ」
「うむ。それじゃ今日も一日頑張るか」
 こうして、何でもない一日が始まる。
「いらっしゃい!」
 ライヤは元気良く店に入ってきた客に言う。その客はボロボロのローブを見に纏い小さな鞄を大事そうに抱える少女だった。
「あれま、ボロボロだな」
 つい一言口から出てきてしまったが、そんな事は関係ない。このアラタ食堂に来た人は皆平等。美味しい料理を食べて笑顔で帰って欲しい。
「ご注文は?」
「・・この店で一番安いやつ」
「それだとお子様カレーになっちまうよ?お姉さんにはちと少ないと思うけど」
「別にいいよ。死ななきゃ問題ない」
 綺麗な黒髪をローブに隠して少女はライヤと目を合わせない様に注文をする。年はライヤと同じか少し上か。いずれにせよお子様カレーでは彼女の真の笑顔は見られない。
「仕方ない。特別サービスいきますか」
 厨房に入るとライヤは手慣れた手つきで料理を始める。その様子をまじまじと見つめる少女の視線に少し笑いながら料理を完成させた。
「へいお待ち!アラタ食堂自慢のチャーハンだ!セットにワンタンスープもありますぜ」
「へ?私は一番安いのを」
「ええ。なんとこの料理まだ未完成でね!とりあえずお客様には出したいけど正式なお代を貰える程美味しくないと思うんです!だから今はこちらが一番安くて。たったの百二十イース!」
 ライヤの早口と笑顔に少女はポカンと口を開けて暫く黙り込む。ちなみにイースとはこの国のお金であり一イース一円である。
「ぷっ。そこまで貧乏じゃないし本来の値段は幾らなのさ」
「本来は六百五十イースだけど今は百二十」
「それでも安いね!んじゃ百二十イースのやつもう一個。こんだけじゃ足りないから」
 少女はローブを脱ぎライヤに笑顔を浮かべる。その笑顔はとても可愛らしく、ライヤの見たかったものだった。
「二つも頼まれちゃうと赤字になっちまうなー!でもまあ、喜んで!」
 その後少女はとても美味しそうにチャーハンをお腹に詰め込んでいた。その様子を見ているとなんだかライヤまで嬉しくなってきてしまう。
「とんだ赤字だね」
「げっ!ごめんばあちゃん」
 背後からぬっと現れた祖母にライヤは頭を下げた。
「美味しかったよ。ご馳走様」
「おう。また来てくれよ」
「あ、うん。いつか絶対に」
 少女の反応が少し気になったが、ライヤはそのままお会計を済ましてローブを被る少女を見送った。その直後。
「ひゃっはー!!」
「お前の鞄貰ってくぜー!!」
「なっ!ちょっと!!」
 店の入り口でバイクが走り去り少女の鞄を持っていった。
「はあ!?あいつら」
「ライヤ行きな!ここはワシ一人で大丈夫じゃ!」
 祖母の言葉にライヤは頷くとエプロンを即座に脱ぎ右手薬指に光る指輪をつけた。
「拘束具、捕縛布!」
「ぬぁぁ!?」
「タイヤに布が絡まって、ぐぇぇぇ!」
 ライヤの指輪から黒い布が突如出現しチンピラ達のバイクのタイヤに絡まる。それにより体制を崩したチンピラはその場に倒れ込んだ。
「こいつ、指輪持ちかよ!」
 指輪といえど、ライヤが持っている指輪は竜から授かったものではない。技術者が竜から授かった指輪を元に作り上げた劣化版であり父の形見、収納の指輪である。
「収納の指輪とは、様々なものをこの指輪に収納する事ができる指輪!そして冒険者を志す俺は冒険に必要な魔道具や回復薬などを収納しているのだ!」
「何も聞いてねえのに語り出した!」
「私の指輪!ほっ、良かった」
 ライヤが自慢げにチンピラに自分の指輪を説明していると少女は鞄を取り返しており中の指輪を確認して一息ついていた。
「おお!お姉さんも指輪持ちなの!?その指輪何級!?」
「えっ?えっと、一級とかかな、多分」
「おおお!?めちゃくちゃ凄いじゃん!」
 目を輝かせて少女を見るライヤ。指輪にはランクがあり一級、二級、三級、四級がある。豆知識としてはライヤの指輪は三級である。
「とにかくありがとう。助かったよ」
「いやいや。礼には及ばない」
「安心するのはまだ早いぜ!!」
 話をしていたライヤと少女はいきなりの衝撃に吹き飛ばされる。
「わぁっ!?いった、何これ!」
「これぞ衝撃の指輪!この俺様の指輪よ」
「てめぇは!この辺のチンピラのボス!ワイジ!」
 少女の鞄を持ちニヤニヤと笑う髭面の男、ワイジは他のチンピラが乗ってきたバイクに乗り込むとそのまま走り去っていった。
「ああ!大切な指輪が!」
「取り返そう!追うぞ!」
 そう言うが早くライヤはワイジの乗ったバイクを追って走り出した。
「・・・見失った」
「そりゃあそうでしょ!バイクに走りで勝てる訳ない!」
 完全にワイジを見失った二人は一旦アラタ食堂に戻ってきていた。
「おやおや、ワイジにも困ったもんだね」
「あ、すみません。お茶なんか貰っちゃって」
 時刻は既に夜の十時。ライヤ食堂も閉じている。ワイジを見失っても聞き込みなどでなんとか居場所を知ろうとしたが、どうにも上手く行かなかった。
「それよりお姉さん。あの指輪ってそんなに大事なものなのか?一級の指輪とは言ってたけど」
「キョウカでいいよ。私の名前。あの指輪は絶対に失ったらいけないものなんだ」
 出されたお茶を飲みながら少女、キョウカは言う。
「そんなに大切なもので一級。もしかしたらそれはオリジナルリングではないかい?」
「!?」
「いやばあちゃんそんか訳ないだろ。オリジナルリングってあれだろ?遥か昔に竜が授けたっていう世界に八個しかない指輪」
 オリジナルリング。それが今の時代での竜から授かった八個の指輪の名称だ。数々の指輪が作られる中誰がつけたのかは知らないがその様な名称になった。
「お主はアリシス一族じゃな。アリシスに、何かあったのか?」
「・・・実は魔族の集団に襲われて、反抗期で村から逃げ出していた私だけは、なんとか生き残る事が出来たけど、祖母が命懸けで守ったあの指輪以外は、全て奪われてしまって」
「え?え?いや何?話につけていけないんだけど!?」
 二人を何度も見返してはオドオドと戸惑うライヤはとうとう発狂して叫んだ。
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