original ring

藤丸セブン

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1章 旅立ち

2話 雷鳴の指輪

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 オリジナルリングとは、かつて世界から抗争が無くならなかった時代に神の使いである竜が人間に授けた八つの指輪である。
「で、そのオリジナルリングをキョウカが持ってて、しかもそれはキョウカの家族の人がオリジナルリングを守る人でその人達が魔族に襲われて」
「一回落ち着きなよ。いきなりこんな話して悪いとは思ってるよ」
 アラタ食堂でいきなりの祖母の質問により話はかなり重くなっていた。
「ワシはアリシス一族と知り合いでな。キョウカを見た時に彼女の面影が見えたからの」
「お婆ちゃんと知り合いだったんですか?」
「そうじゃ。奴らしい最後じゃったなようじゃな」
 ライヤの祖母の言葉が終わると辺りは沈黙に包まれる。
「と、とにかく!盗まれたリングが大切なのは分かった!なら絶対取り返さないとな!」
「え?」
 その沈黙に耐えなれなくなったライヤは机を叩いて立ち上がる。その行動にキョウカは目を丸くした。
「へ?違ったか?でもどんなリングでも大切な物奪われたら嫌だろ!?」
「いや、違くて。なんであんたが見ず知らずの私の為にリングを取り戻そうとしてくれてるの?私お礼できる物なんて持ってないし」
「ん?」
 キョウカの質問に今度はライヤが目を丸くしたがその後躊躇わずに口を動かした。
「困ってる人を助けるのは当然だろ」
 ライヤの言葉にキョウカは言葉を失った。困っている人を助けるのは当然。それを本気で思っている。この世界は多種族との抗争は無くなったものの今もなお争いは起こっている。それは人間と人間の争い。実際今回もそうだ。
「それを、見返りもなしに助けてくれるなんてね」
 キョウカは少し嬉しそうにした後覚悟を決めて立ち上がる。
「よし!じゃあ協力してもらう!そのかわりお礼は出来ないから!それでもいいんだね!?」
「お礼なんて最初から要らないっての。うっし!キョウカのリング取り返しに行こうぜ!」
 ライヤとキョウカはお互いに視線を合わせるとそのままアラタ食堂の出口に向かって走った。
「あの悪ガキ共が何処におるのか知っておるのか?」
「「・・・知らない」」
 そして扉を開けようとしたが祖母の一言で止められた。
「もう遅い。今日はゆっくり休んで明日行きな」
「でも!そうしてる間にリングが!」
「大丈夫。あ奴らが物を盗むのは売り払う為。商品に手をつけるとは思えん。それと、悪ガキの隠れ家くらいは知っておるしの」
 祖母はそう言うと「風呂が沸いとるから先に入りな」と言って食堂の奥の家に入っていった。
  ◇
「それじゃおやすみ」
「はい。おやすみなさい」
 暖かい風呂に入りライヤの母の寝巻きを着て布団に入る。この様な生活は数日以来だ。
「お婆さん。あいつらのアジトが何処にあるか知ってるんですよね」
「知っとるよ。もう教えて欲しいのかい?」
「・・・出来れば」
 そして、夜が明けた。
「婆ちゃん!キョウカ知らねえか!?起きたらいなくなってて!」
「一人で行った様じゃよ。これを置いてな」
 祖母が取り出したのはキョウカの置き手紙だった。内容は。
 ごめんなさい。やっぱりライヤを危険に巻き込みたく無い。とても恩知らずなのは分かっているけど、これは私の問題だから。
「くっそ!」
「何処へ行く?」
「決まってんだろ!キョウカを助けに行くんだよ!」
「手紙を読まなかったのか?」
 手紙にはキョウカの想いが綴られていた。ライヤを危険に巻き込みたく無いという想いが。
「悪いけど、そんなの知らねえ。俺は俺がしたい様にする。それだけだ」
 ライヤはそう言い残すとアラタ食堂の扉を開けた。
  ◇
「あぁ?鞄を返せだと?」
「そうさ。私の大切な物、返してもらうよ」
 街の端にある小さな廃墟。そこがワイジ達の隠れ家である。
「女一人で何が出来る!ひっ捕らえろ!」
 キョウカに三人の男が武器を持って襲いかかる。男が持っていたパイプや木刀を振り下ろすが、逆に襲った男達が飛ばされていた。
「ぐえええ!」
「何!?貴様、妖精術師か」
「そんな大層なもんじゃない。準妖精術師だよ」
 妖精術師とはその名の通り妖精と契約を交わして共に戦う者の事である。しかしキョウカが契約しているのは妖精の卵。いわゆる準妖精という小さな生物である。
「ありがとうボイス。さて、もう一仕事と行こう」
 キョウカの指に音を操る準妖精ボイスが止まる。ボイスは小さな人型の妖精で薄紫色の羽を持っている。先程の攻撃は空気を振動させた攻撃だ。
「ふっ、舐めるなよ。俺はこいつらとは違うぜ!」
 ワイジが衝撃の指輪を発動させキョウカを襲う。だがキョウカは目に見えない衝撃を回避した。
「何!どうやって!?」
「ボイスの力だよ」
 ボイスは音の準妖精である。キョウカとワイジの周りに音を作り出す事など容易い。そしてその音が乱れた場所こそが衝撃が訪れる場所だ。
「ほう、だが。これならば関係はない!」
 ワイジは指輪を光らせて腕を目一杯振り回した。そう。全範囲攻撃だ。
「あちらこちらに衝撃が!これじゃ場所が分かっても避けられない!」
「と、そこに救世主の登場だぁぁ!」
 キョウカに衝撃が当たる寸前に何かがキョウカを衝撃から守った。それはとても大きな盾だった。
「ライヤ!どうして!?」
「困ってる人は放って置けないタチなんでね。ほら、鞄」
 収納の指輪から大きな盾を出した後はキョウカの持っていた小さな鞄を取り出した。ライヤは廃墟の裏口から侵入しており、キョウカがワイジの気を引いている間に鞄を取り返していたのだ。
「ふふ。ありがとう」
「どういたしまして」
 少しの時間驚いていたキョウカはライヤにお礼を言って笑う。
「が!俺はまだいる!何解決した気になってんだぁ!!」
 ワイジが意地になって衝撃を放つ。その衝撃はとても大きくライヤ唯一の防御である大きな盾が吹き飛んだ。
「ウッソだろ!?しかし、ここまで来たら逃げるが勝ち」
 ライヤはそこまで言って言葉を止めた。その理由は簡単。出口には大勢の男達が待ち伏せていたからだ。
「あの、キョウカさん。その準妖精でこいつら一掃できたりしますか?」
「数が多すぎ。こんなのボイスだけじゃ絶対無理」
「ハッハー!どうやらここまでの様だ!お前の持つもの指輪を渡すのなら無傷で返してやってもいいが?」
 ワイジが勝ち誇った様に二人に叫ぶ。この状況では確かにそれが今できる最善の策なのかも知れない。だが。
「そんな事はしない。俺がワイジを止める。だからキョウカはその内にワイジの横を走って裏口から逃げろ」
「は!?そんなこと出来ないよ!」
「いいから!それしか方法ないぞ!」
 そう言うが早くライヤはワイジに向かって走り出した。廃墟は正面入り口に大勢の男。奥にワイジ一人なのだからワイジさえ止めれば裏口からキョウカは脱出できる。だが、
「衝撃の指輪よ!」
「ぐあっ、がはっ!ぐっ、まだまだぁ!」
 一方的にライヤが衝撃に殴られ続ける。男達も加勢する為に走ってきている。ならば。
「ライヤ!これを!!」
 キョウカがライヤに向かって何かを投げた。その何かを受け取りライヤが中身を見る。
「これは!?」
「オリジナルリングが一つ。雷鳴の指輪。私達アリシスには使えないけど、ライヤなら!」
「だが!この指輪を使っちゃってもいいのか!?というか俺に使えるのか!」
 ワイジの猛攻は止まらず、男達も加勢に入りキョウカが地面に押さえつけられる。
「やるしか、ねえ!」
 ライヤは握りしめた指輪に力を込めて叫んだ。
「放て!イナズマァァァ!!!!」
 ライヤの声に指輪が呼応し、指輪から高電力の雷が放出される。その雷はワイジを焼き貫き、キョウカだけを見事に避けて男達だけを貫いた。
「ば、バカな、これが。オリジナルリングの、ちか、ら」
 ワイジはそう言い残して倒れた。
「す、凄え。衝撃の指輪や収納の指輪とは比べ物にならない威力の雷撃。凄まじ過ぎる」
「ライヤ、あんた凄い。私もオリジナルリングの力を見たのは初めてなんだけど。雷の出力をこいつらを殺さない程度に抑えられてた様に思えたよ」
 キョウカが目を見開き驚いている。しかし一番驚いているのはライヤ自身だ。
「へへっ。なんとか、なっ」
 そこで、ライヤの意識は途切れた。
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