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2章 冒険の仲間
12話 殴り込み
しおりを挟む「フォクスって野郎が黒幕なのは分かった。でもさ、情報がなさすぎるぜ」
ライヤがそう言って頭を抱える。打倒フォクスを息巻いたくせにいざ攻め入ろうとなったらフォクスの指輪も分からない。フォクス製薬の他の人達が何人いてどんな指輪を持つのか、はたまた持たないのか。それどころかフォクス製薬の本拠地すら分からなかった。
「ほんと、締まらないなあ。ナズナちゃんも分からないんだよね」
「はい。私が薬を買う場所はいつもバラバラでしたから」
詰んだ。ようやく黒幕が見つかりハッピーエンドへの道も見えたと言うのに、これでは。
「フォクスの情報がお望みなら、幾らでもあるぜ?」
全体的に暗くなった雰囲気をドーベルが吹き飛ばした。ドーベルが持っている資料にはフォクス製薬の社員一人一人の情報、拠点の場所、ライヤが欲していた情報のほとんどがそこにはあった。
「お前、よくここまでの情報を掴めたもんだな!」
「これ絶対めちゃくちゃ前から調べてたよね。私らに話しかけた時点でこうなる事分かってたんじゃないの?」
「それは分からなかったさ。だが、結果的にこうなっただけだ」
胡散臭さ全開のドーベルだがまあ情報は完璧だ。ならば信用するしかない。
「うしじゃあ作戦立てて」
「作戦も考えてある。これなら八割以上の確率で勝てる」
ドーベルは勝ち誇った顔で腕を組む。その作戦に。
「だめだね。これじゃ危険度が上がる。ナズナちゃんも手伝ってくれるんだし、ここは安全性を高めていこう」
「も、勿論これは完成形じゃない。お前らの出来ること全てを知ったうえでこの作戦は」
「ははは。まあ作戦が良くなるなら俺はなんでもいいぜ。キョウカ、作戦は任せる」
「え?いいんですか?」
こうして皆の考えをまとめた素晴らしい作戦が誕生した。筈だ。
◇
「ギャハハハハハ!」
「いやぁ!ぼろ儲けだな!」
フォクス製薬の本拠地としている廃屋の家。そこに響いていたのは柄の悪い男達の笑い声だった。そこには五十人近くの男達が酒を飲んだり飯を食べたりしてはしゃいでいた。
「フォクスさんが寝てる。静かにしてろよお前ら」
「でもよぉ!こんなお金たんまり貰って笑わないなんて可笑しいっしょ!ギャハハハハハ!」
一人だけ他の男と風貌が違うサングラスをかけた男が注意をするがその喧騒は消えたりしない。そんな喧騒を打ち消したのは一人の男だった。
「すみませーん!不治の病を治せる薬ってここに売ってますかー!?」
その男は黄色の髪をした若そうな男、勿論ライヤだ。
「なんだぁ?薬をご所望かよ。へへ、おうよ。薬なら売ってやるよ」
「お、マジかよ。その薬が売ってもらえるのなら幾らでも払うぜ」
「ギャハハ!マジか!素晴らしいカモ、いや鴨さんだな!」
言い直せていない男がゲスな笑い方をしながらライヤに近づく。
「おい待て!ここの拠点の場所は誰にも伝えていない!その男は危険が」
「売って欲しい薬ってのは何なんだ?」
背後にいた男の言葉を無視して柄の悪い男がライヤに尋ねた。ライヤはニヤリと笑い答える。
「フォクス製薬とかいう悪徳企業を、ぶち壊す薬だ!!」
ライヤが指輪を光らせ地面に触れる。すると電流が地面を走りその場にいた多くの男達に感電した。
「ぎゃぁぁぁ!!」
「電流!?ぐおおぉ!」
半数以上の男が電気に触れて倒れる。しかし逆に言えば半分以上は意識を保ちまだ戦闘できる状態のままだ。
「敵は一人、フォクスの手を借りるまでもない。やるぞ」
「分かったぜキャンサー。ギャハハ!潰してやるよぉ!」
キャンサーと呼ばれたサングラスの男の指示で動ける男達が一斉にライヤに襲いかかる。
「走れ!稲妻ぁぁ!!」
襲いかかる男達の攻撃を回避しながらライヤが稲妻を放出する。火力は全力。範囲は最大だ。その強力な稲妻はまたしても多くの男を痺れさせ、倒す。だがあまりにも数が多すぎる。
「やれ」
「ギャハハ!一人で乗り込んできたのが運の尽きぃ!」
ナイフ強く握りライヤを刺そうとする男達。これはライヤだけでは倒しきれない。
「まあ、敵が一人だったらね。ボイス!」
唐突に何もない所から黒髪の女性が現れる。勿論キョウカだ。
「ぐぁっ!なんだこの音はっ!耳がァァ」
ボイスが放出した音に男達が目を防いで耐えようとする。
「手を耳に押さえてちゃ攻撃を防ぐ事なんて出来ないぜ!」
キョウカとボイスの攻撃で相手の動きを防ぎライヤが放出する雷で敵を薙ぎ倒していく。
「まじか。こりゃきついな」
キャンサーが一言静かに言う。そして黙って奥の部屋へと入っていった。
「よし!こいつでラスト!」
「ギャハハァ!耳がァァ!」
「いっちょあがりだ!」
ライヤが腕を振り下ろすと雷が男を貫く。死なない程度に加減しているとはいえ雷をまともに喰らえば戦う事など不可能だ。
「おいおい。なんの騒ぎだ?え?」
一番奥の部屋からあくびをしながら凶悪な表情をした男が現れる。
「あいつが」
「うん。フォクスだね」
派手な金髪をしているが根本の方が黒くなっているやたらとガタイのいい男。それがフォクスの第一印象だった。
「フォクス、こいつらが侵入者だ。恐らくだが冒険者」
「ほう。つまりあの子だぬきの差金か。めんどくせえことしてくれるぜ」
フォクスとキャンサーは愚痴を言いつつも武器を構える。フォクスは連射タイプの小型マシンガン。キャンサーはカニの足の様な形をした双剣だ。
「作戦通りとはいかなかったな」
「でもこれくらいなら巻き返せる。私がキャンサーって奴を止めるその隙にライヤは」
「フォクスを倒す!」
わざわざキョウカに言われるまでもない。このメンバーの中で一番戦闘力があるのは間違いなくライヤだ。ならばボスであるフォクスを倒すのもライヤの仕事。
「ためらわず突っ込むか。ならば食らいな、俺の銃弾を」
フォクスの手に持たれたマシンガンが小さな球を大量に放つ。だが問題はない。
「取り出し、大楯!」
ライヤが所持しているもう一つの指輪、収納の指輪。そこに入っている大楯を取り出して球を防いだ。ちなみにキョウカが突然現れたタネも収納の指輪に入っていた魔道具だ。インビジブルフィールドという一定時間姿を隠す事の出来る魔道具。かなりの値段がするがライヤが購入していた一品だ。
「ふ、哀れだな」
「ぐっ!おおおおお!」
「ライヤ!?」
球を受けて止めた筈のライヤだったが、その球の威力に押されて盾ごと壁に激突した。
「なっ、なんだよこの威力」
ドーベルの情報によればフォクスはマシンガンで攻撃してくるだけで攻撃力はあまりないと書いてあったのだが、めちゃくちゃな攻撃力を見せつけられた。
「ハハハ!驚いたか!?これが俺の最高の相棒さ。そしてそれを作り出しているのがこの指輪!」
「なっ!俺の、俺の足がっ!?」
フォクスが中指に付けていた指輪を光らせるとなんとライヤの左足だけが幼い子供の足の様に縮んだ。
「これが俺の指輪、縮小の指輪!こいつで大砲の球を小さく縮小してマシンガンで放出する!まさに最強の武器だよなぁ!」
フォクスがタネを説明しながらも次の球を装填して放出している。
「このっ!」
「おっとお嬢ちゃん。お前の相手は俺だろ?」
キョウカがライヤの助けに入ろうとするがキャンサーに邪魔される。更に。
「こいつ!ボイスの攻撃が効かない!?」
「毎日騒音を聞いてたら耳が慣れちまったよ。だからその妖精が出すちっぽけな音なんて、効かねえよ」
キャンサーが振り回す双剣にキョウカの腕に切り傷をつけた。
「取り出し!あるだけ全部の防御魔道具!」
フォクスの大砲の連射をあるだけ全ての盾やその他の防御様のアイテム全てで対抗する。しかし次々にとライヤの防御が壊れていく。
「ぐっ!まだ、まだだ!」
「ヒヒッヒ!良く耐えたな。じゃあ次の球達行ってみよう!」
なんとか弾切れを起こすまでは堪えられたが次はないだろう。だが、ライヤは笑った。
「はっ!最後に笑うとはいい度胸だ。死にな!」
「今だ!思う存分にやっちまいな!」
ライヤの声が廃屋全体に響き渡ると、その声に応じるかの様に廃屋の壁が破壊された。
「なぁ!?」
フォクスはその破壊された壁を見て口を大きく開けて驚愕する。そこには、歴戦の冒険者ですら苦戦すると言われている赤色の熊、バスターベアーがいた。
「グォォォォォ!!!!」
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