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2章 冒険の仲間
14話 生きる屍
しおりを挟む「お姉様ー!」
「お姉様じゃない!」
魔導車の中ナズナとキョウカは同じセリフを連発していた。
「もう!お姉様の分からずや!」
「ナズナちゃんの頑固者!」
その姿を見ながらライヤは温かいお茶を啜り
「平和だなぁ」
ゆったりしていた。
「お兄様!お兄様も何とか言ってください!」
「ライヤ!のんびりしてないでナズナちゃんを説得しろ!」
「平和じゃなくなったなぁ」
キョウカとナズナに腕を引っ張られながらお茶を飲み干してライヤが立ち上がる。そのシーンだけ見れば両手に花に見えなくはないだろうが中身はそんなものじゃない。
「別に呼び名くらい何でも良くね?ナズナにお姉様って呼ばせてやれよ」
「お兄様!」
「お前は敵だ。今すぐ魔導車から降りろ」
「酷くね!?今旅の資金誰が出してると思ってんだよ!?」
ライヤが資金と言った時にナズナの目が光り掌にポンと拳を置いた。
「お姉様!今お姉様と呼ぶ事を許してくださればご飯が大盛りです!」
「何?」
「へ?どゆこと?」
ナズナの思いがけない一言にキョウカが反応しライヤが戸惑いの声を上げる。
「いつもお姉様が食べる量の二倍です。更にお好きなメニュー食べ放題」
「・・・ナズナちゃん。私はそんなに大食いじゃないの。ご飯は好きだけど大食いじゃないの」
「ナズナさん?あの、お金出すの俺で料理するの俺なんだけど!?」
ライヤがナズナが言い出した事に慌て出すが肝心のナズナはキョウカが少し反応した事しか見ていなかった。
「どうですお姉様!今だけ!今だけですよ!この機会を逃したらもう二度とありませんよ!」
「だから私は大食いじゃ!で、でもちょっといいかも」
「聞いてる!?そんな事したら困るのは俺たちだよ!資金の計算した事ある!?俺資金計算苦手なの!」
ライヤが必死になってナズナを止めようと声を上げるがナズナは反応しない。しかし流石に我慢できなかったのかライヤに頭を下げてきた。
「お願いしますお兄様!お姉様をお姉様と呼ばせて下さい!」
「いやキョウカをお姉様って呼ぶのは別に構わないし寧ろ推奨なんだけど。飯の話を変えてくれれば」
「お兄様ぁ~」
ナズナは涙目上目遣いでライヤを見つめた。
「ぐっ!?」
そのあまりの可愛さにライヤは動揺した。大きな茶色の瞳を涙で濡らしたナズナの可愛さはライヤが抗えるものではなかった。
「涙目上目遣いはずりぃよ」
「やったー!涙目上目遣いとは?」
どうやら無意識でやっていた様だ。恐ろしい子。
「それはだな」
キョウカが目を閉じてナズナの交渉内容を必死で考えている間ライヤはナズナに涙目上目遣いの破壊力を教えた。
「なるほど。それなら!」
教えた瞬間ナズナはキョウカに走り出し目の前に立った。
「お姉様!」
「だからお姉様じゃないって、ええ!?」
キョウカが自分の世界から帰ってきてナズナを見るとそこには涙目上目遣いのナズナが。
「お願いします!お姉様と呼ばせて下さい!」
「ライヤァァ!何教えたァァ!!」
バレバレである。だがライヤはそれを誤魔化す為口笛を、吹けなかった。ライヤが口笛の難しさを知った日が今日である。
「お姉様!」
「うっ!」
ナズナの上目遣いにキョウカも同様する。やはり美少女の涙目上目遣いは最強なのだろうか。
「わ、分かったよ!好きに呼べば!!」
「わーい!お姉様大好きー!!!」
キョウカが我慢の限界に達してナズナに屈服するとナズナは勢いよくキョウカに抱きついた。
「素晴らしい光景だな」
「お前は後で殺すからな」
やだ凶暴。
「っていうか魔導車の運転はいいの?さっきからずっと運転席から離れてるけど」
「大丈夫です。ドーベルさんが魔導車を改造して目的地をセットすれば自動で向かう様になってますから」
ナズナが笑顔で言う。改造という事は元々魔導車に内蔵されているシステムではない様だ。ドーベルには感謝しなくてはならない。
「ちなみにですけど他にも機能が付いていて子供や魔獣の飛び出しにも反応してブレーキをかけてくれるんですよ!」
「へー。待った。スピード落として!」
キョウカが関心すると同時に何かを察知した様に運転席へ駆け出す。するとその時!魔導車が急ブレーキをかけて車内が大きく傾いた。
「うげぇっ!」
「あうっ!」
「きゃっ!」
三人が壁に衝突しそれぞれの悲鳴を上げる。
「「今きゃって」」
「言ってない」
「「今きゃって」」
「飛び出してきた奴は誰だ!説教してやる!」
顔を真っ赤にしたキョウカが話を誤魔化す様に立ち上がり魔導車の外へ飛び出す。もはや移動の為の車が急ブレーキをかけるのが何か起こる前の恒例行事になりつつあるかも知れない。
「そんなわけないでしょ!」
とにかくキョウカを追いかける為ライヤとナズナも魔導車の外へ出た。
「こいつか」
キョウカが外に出ると魔導車の前にツインテールの女性が倒れていた。
「はあ、ほら起きてっ、て。ぎぃゃぁぁぁ!」
先程の女の子らしい悲鳴はどこへやら、キョウカは凄まじい悲鳴をあげた。
「キョウカ!何があった!?」
「お姉様!?」
そこにライヤとナズナが合流したが二人もそこで驚愕する。
「ヴ?」
そこにいた女性は赤い何かで染まった白い服を着ておりお腹には何かに引っ掻かれた様な跡を残していた。だが一番驚いたのはそこではない。その女性の顔にがドロドロに腐っていたのだ。
「ゾ、ゾンビだー!!!」
「まっ、待ってください!ゾンビじゃないです!ゾンビじゃないです!!」
三人が一斉に逃げ出そうとすると女性は声を荒げてゾンビじゃないと叫ぶ。
「ゾンビじゃないなら何!妖怪!?」
「人間です!」
「嘘です!私は人間に詳しくないですけどそこまで落ちた人は人間じゃないです!!!」
「特殊メイクなんです!ゾンビに見える様に!ほら、こんなにドロドロなのに腐敗臭とかしないでしょ!?」
「ドロドロを取らないでくれ!!」
一同が落ち着くには十数分かかった。
「それで、どうしてこんな事をしたのか教えて貰おうか」
特殊メイクを一部だけ落として正座しているシオンと名乗る女性にキョウカは仁王立ちしながら問いかける。
「はい。この様な立派な魔導車に載ってらっしゃると言うことは貴族の方か冒険者の方だと思いまして、助けを求める為に」
「助け?」
その言葉にライヤが反応して聞き返す。そんなライヤを見てキョウカは大きくため息を吐いた。
「ん?というかあそこにもゾンビいるじゃん。纏めて説教してやる!」
「あっ!お待ちください!」
シオンの声も聞かずにキョウカはゾンビの元へ。そのゾンビの姿はシオンよりも酷い腐りようだった。
「うっわ凄。でも仮装だと分かれば怖くは」
「あああ゛あ゛あ゛あ゛!」
「その方本物です!本物のゾンビです!」
キョウカは一目散に逃げ出した。
「おい待て、これ囲まれてね!?」
「周囲にゾンビが大量にっ!?お兄様ー!こわいでずぅぅ!!」
ライヤにしがみついてナズナが泣き喚くと余計にゾンビがゆっくりと近づいてくる。
「くそ、収納!からの取り出し!」
ライヤが収納の指輪で遠くにある魔導車を収納、そして取り出して近くへ出した。
「乗り込め!」
ライヤとナズナ、シオン。そして少し遅れて走ってきたキョウカを乗せて魔導車は走り出した。
「お兄様!魔導車でゾンビは振り切れそうではありますが凄い数がいます!」
「ボイスに聞いたけど二百近くのゾンビが集まってる!」
「あの、ゾンビから逃げられる場所、知ってます」
シオンがそういうと三人はそこを聞こうとするがその前にシオンが言う。
「そのかわり私のクエストを受けていただけませんか?冒険者様」
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