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2章 冒険の仲間
15話 ゾンビパレード
しおりを挟む「クエスト?どう言う事だ?」
大量のゾンビに囲まれた魔導車の中シオンが話した言葉にライヤが驚く。
「はい。そうすれば安全な場所をお教えします」
クエストの内容はなんとなく予想は出来る。外にいる大量のゾンビの事だろう。
「そう言われてはい分かりましたとは言えない。私達にゾンビをなんとか出来る力なんてないし」
「それにその交渉も成立しません。私達が安全な場所についたとしてもその時はクエストを受けた後。どのみち私達は安全じゃないんですよ」
キョウカとナズナの言葉にシオンは黙り込んでしまう。確かに二人の言い分が最もだからだ。だがライヤは。
「分かった。そのクエストを、引き受ける」
「お兄様!?」
ライヤが発した言葉は予想外だったのかシオンは口を開けたまま呆然としている。
「ほ、本当に?自分で言っておいてなんですが、かなり面倒くさいし酷いことを言っていると思うのですが」
「自覚はあったのですね。では何故そんなクエストを?」
「他に道はないからと渋々受けてくれるかなと」
シオンが驚いたのは心良くライヤがクエストを引き受けたからだった様だ。どのみちクエストは受けさせる気満々だった。
「あんたならそう言うと思ってたけど、クエストを受ける理由を聞いてもいい?」
「困ってる人を見捨てる事は出来ねえな。理由はそれだけだ」
「ゾンビをなんとかする方法なんてあるの?あんたが危険に首を突っ込むのは勝手だけど、私とナズナちゃんを巻き込むのはどうなの?」
「勿論これは俺の勝手だ。二人に強いるつもりはない。クエストを受けるのは俺だけだ」
ライヤとキョウカは言いたいことを言い合いながら睨み合う。その様子をナズナとシオンは黙ってみているしか出来なかった。
「・・・はぁ。分かったよ」
「悪いな。シオン、この二人を安全な街まで送ってから」
「そうじゃなくて、私もクエスト受けるって言ってんの」
予想外の言葉を聞きライヤが目を丸くする。
「え?でもゾンビをなんとかする方法なんてないって」
「無いけどなんとかするしかないでしょ。私達の旅にはあんたが必要なんだから」
「でもナズナがいればオリジナルリングで光を出せるから問題ないし、あっ!雷鳴の指輪か!それなら今返すし」
「違う!そう言う事じゃ無い!」
突然叫んだキョウカにまた目を丸くしたライヤは思い出した様に手を叩いた。
「そういえば二人の旅代は俺が出してんだ。なるほど、確かに俺がいなきゃダメだな」
「それも違うんだけど、まあいいや」
鈍感なライヤにキョウカが呆れるようにため息を吐く。
「あ!お兄様とお姉様が参加するなら私もやります!私冒険者じゃないけど、お手伝いしますよ!」
「でも失敗すればゾンビだぜ?」
「私を救ってくれたのはお二人です。そのお二人の力になりたい。それに私は助けてもらったのに他の人は見捨てるなんて出来ませんよね」
ナズナの目には決意が漲っているのが分かる。どうやら意見はまとまった様だ。
「それじゃあ、クエストの詳しい内容を聞かせてくれ」
行儀正しく見せたいのかシオンは正座をしながらクエストの内容を話し始めた。
「私のクエストはゾンビの討伐ではありません。ゾンビと私達の村の救出を依頼したいのです」
「救出?」
「はい。あのゾンビ達は皆私達の村の人々なんです」
ゾンビが人を噛み仲間を増やしていくことは常識と言えるだろうから村の人がゾンビだと言う事はそれ程驚くことではない。しかしそうなると問題は最初のゾンビだ。
「私達の村は少し前まで平和そのものでした。でもそれが次期村長が決まった時に破壊されたのです」
「あ、なんとなく分かった。村長候補は二人いたって感じじゃない?」
キョウカが口を挟むとシオンはゆっくりと頷く。どうやら正解の様だ。
「村長候補は二人。現村長の長男ビーン様と次男のゾルティア様です」
「あ、分かりました。村長に決まったのは次男の方ですね」
「そ、その通りです」
今度はナズナが口を挟むがこれも正解の様だ。と言う事は。
「もしかして自分を村長にしなかった村なんて滅んでしまえって長男がゾンビを放ったとか?」
「いえ、それは違います」
どうやら違ったらしい。キョウカが馬鹿にする様に、ナズナが慰める様にそれぞれ視線をライヤに向けている。なんだか凄く恥ずかしかった。
「ビーン様はゾンビを放ち、自分を村長にしろと現村長に言ってきたのです。自分を村長にするのならゾンビは元に戻すって」
「元に戻す!?戻るのか、あのゾンビ達が!?」
ライヤが叫ぶとシオンは少し不安そうに「そう言ってました」と小さく呟く。
「ゾンビを元に戻すなんてできるんですか?しかもあんなに腐った方々を」
「言い方が悪りぃな。でもそれ自体は考えれば可笑しな事じゃ無い。ゾンビになった人が元に戻るってのは漫画とかでもよくある展開だからな、多分」
漫画などの展開が通じるかどうかは分からないが指輪は基本的に竜から元に作られたものと人工的に作られたものの二通りがある。この事件が指輪によるものなら確実に後者だ。それなら元に戻せてもおかしくはない。
「でも具体的にはなにすればいいの?そのビーンとやらを倒せばいいの?」
「最悪はそうなります。でも出来る事なら話し合いで」
「それが出来てればあの人達はゾンビにならなかったと思うのですが」
ナズナの言葉にシオンはまた黙り込んでしまう。だがそんな時間はなかった。
「おい!ゾンビどもが魔導車にうじゃうじゃと集まってきてる!ひとまずここを移動しよう!」
「まじ!?ナズナちゃん!」
「はい!シオンさんひとまず安心な場所教えて下さい」
「あ、はい」
ナズナの運転で魔導車は安全な場所へ向けて走り出した。
「ここが私達が住んでいた村です。ビーン様はこの村だけにはゾンビが来ない様にしてくれています」
「本当だ。さっきからノロノロと着いてきてたやつらが帰っていく」
村の周辺にゾンビは来ることが出来ない。それでも村を出て逃げようとすれば周りにいるゾンビにやられると言うことか。
「そこまでして村長になりたいのか?」
「あの、村長にお会いして頂けませんか?皆さんを紹介したいのです」
「分かった。行こう」
一同は村の中でも一回り程大きい家に案内された。ここが現村長の家ということか。
「ようこそいらっしゃいました。まさか我々のクエストを受けていただける冒険者の方がいらっしゃるとは」
「まあ普通受けないよねこんな依頼」
「あの、私は冒険者じゃないんですけど」
「まあいいんじゃね?冒険者って事で」
「お兄様、それはダメだと思います」
現村長は耳が遠いのかライヤとナズナの会話は聞こえていない様だ。見たところ歩く時に杖を使っているしかなりのご高齢の村長だ。次期村長を決めるのも納得がいく。
「あれ、シオンちゃん?戻ったのかい?」
「ゾルティア様、ただいま戻りました」
奥の部屋から青年が入ってきてシオンに話しかける。
「ゾルティアって事は時期村長さんだな。俺はライヤ。あんたらのクエストを受けた冒険者だ」
「わぁ!クエストを!?ありがとうございます!」
「なんか、凄いお礼言われる」
本来クエストを受けた所でこんなにお礼を言われる事はない。だがこのクエストは別だった様だ。まあ、お礼を言われて悪い気はしない。
「お礼とかいいから。それより明確なクエスト内容を教えて」
そんな空気を壊したのはキョウカだ。確かに村を救えだのゾンビを治すだの言ってはいたが明確にやる事は分からずじまいだ。
「うむ。わしらのクエストは長男のビーンの暴走を止めてほしいというものじゃ。具体的にはどこかで見ている筈のビーンを見つけて懲らしめて欲しい」
「戦闘になるかもしれませんが兄の使っている指輪は壊さないでください。ゾンビになった人々を直せなくなりますので」
意外にもビーンを倒すという点において二人には迷いがない。どうやらシオン以外の二人はビーンを倒すしかないと思っている様だ。
「一応確認するが、殺すわけじゃなす倒す、懲らしめるだけだよな」
「勿論で御座います。こんな事をしたとしてもビーンは家族ですから」
「よし、そのクエスト引き受けた!」
クエスト内容はどこかに潜んで村の様子を見ているビーンを探しだして懲らしめる。そして指輪によってゾンビを元に戻させる事だ。
「しかし気になるな」
「どうしたんですかお兄様?」
村長の家から村長の好意で貸してくれる事になった宿屋に向かう途中。ライヤは考え事をしながら宿屋に向かっていた。
「いや、人をゾンビにして更に操作する指輪。それほどの指輪をビーンはどうやって手に入れたんだ?」
「もしかして魔族が関わってるかもしれないって事?」
「確証はねえけどな。だからこのクエスト。最大限の警戒をしていこう」
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