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藤丸セブン

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2章 冒険の仲間

17話 無茶な勝負

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「俺が着いた時には、もう」
「そんな、皆さんが」
 まだ別れてから一時間も経っていないがライヤとキョウカ、ナズナは既に合流していた。理由は簡単。助けるべき対象が既にゾンビになってしまっていたからだ。
「悲しんでる暇はないよ。ゾンビ化した人達は救う事が出来る。今はその為に動かないと」
「ああ、そうだな!」
 ライヤが自分の頬を少し強めに叩く。頬が少し赤くなるがそのかわりに気合は十分入った。
「お兄様!お姉様!あれ!」
 ナズナが指さしたのは村長の家の二階部分だ。窓から電気の光が漏れている。知性のないゾンビが光をつけるとは思い難い。
「村長達は生きてるかも!俺とキョウカは下から逃げる道を確保しながら行く。ナズナは先に空から行ってくれ!」
「え!?でも、私一人では三人で行っても」
 ナズナの言葉にキョウカは首を横に振る。
「確かに私達三人で空から向かえたら安全だし心強いかもしれないけど、その分ナズナちゃんが消耗しちゃうでしょ。それに生き残りの人達が多かった場合走って逃げられるルートの確保も絶対必須なの」
「それはっ。そう、ですね」
 キョウカの言う事は正しい。三人同時変化は先程やったが確かに少し厳しかった。それでも。どうしても不安が残ってしまう。ナズナ一人で何が出来るのだろうか。もしライヤとキョウカが到着する前にゾンビに囲まれてしまったら。ナズナには、何が出来るのだろう。
「大丈夫だ」
「へ?」
 そんな思考はライヤの言葉により止められた。
「ナズナなら出来るさ。俺達も全力で向かうけど、万が一の時は。任せるぜ」
 ライヤのその言葉と笑顔はナズナに自信と、光を与えた。
「っ。はい!行ってきます!」
 ナズナは変化の指輪を光らせ姿を鳥へと変える。ゾンビ達は鳥に気がつき手を伸ばすが飛んでいる為手など届かない。
「うっし!行くぜキョウカ。しっかり掴まってろよ!」
「え?魔導車で行くんじゃ」
「それよりこっちの方が早い」
 ライヤが足元に電気を流しているのを確認するとキョウカは素早くライヤの背中に抱きつき、強く抱きしめた。
「ちょっ!キョウカさん!?」
「何してんの早く!ナズナちゃんが危険でしょうが!」
 少し顔を赤らめたがキョウカの言葉でライヤも正気に戻る。背中に当たる柔らかい感覚など忘れる、事は出来ないがそれはそれ。
「こんだけ強く抱きつくって事は、最高速度を出してもいいって事だよな?」
「あんまり抱きつくとか言わないで。いいから早くっ!?」
 今度はキョウカが頬を染めるとライヤが言葉の途中で走り始める。電流を纏ったライヤの足は通常の数倍の速さを出す事が出来る。今のライヤを止める事は動きの遅いゾンビでは不可能だ。
(ここですね。窓は、良かった。空いてる)
 ナズナが鳥の姿のまま窓の中を覗き込む。どうやら中の見える所にはゾンビはいない様だ。
「連絡は取れないのか!?」
「うん。さっきから取ろうとはしてるんだけど」
(おや?声がしますね。これは村長さんと時期村長さんの声?)
 ナズナは鳥から人間の姿へと姿を変えると少しだけ開いている扉から中を見る。そこには慌てている村長と妙に落ち着いている次男のゾルディアが指輪を発動させようとしていた。
「ナズナ!無事か!?」
「お兄様!しー!しー!」
 突然の大声にナズナの体がビクッと動きライヤの口に人差し指を当てる。
「あ、そっか悪い」
「いえ、ゾンビではないんですけど。少し怪しいと思って。そういえばお姉様は?」
 不思議そうな顔をするライヤにキョウカの場所を聞くとライヤの背中からキョウカが顔を出した。
「はー、はー。ナ、ナズナちゃん。ここにいる」
「お姉様!?もしかしてゾンビに!」
「いや、ライヤ速すぎ。ずっと掴まってるこっちの身にもなれって。あー。凄い疲れた」
 ライヤの背中から離れると廊下に寝転がるキョウカ。ナズナは苦笑いを浮かべると二人の様子を見る為再度扉へ向かう。ライヤも真似して扉へ。
「あ、繋がったよ」
「ビーンよ!これはどう言う事だ!この村には手は出さないという約束だっただろう!」
 ゾルディアが装着している指輪が光ると少し小さな画面が出てきて一人の男の姿が映った。
「冒険者なんて呼ぶからだ。まあ冒険者風情に負けたりはしないが、念のためにな。何度も言っている様に俺を村長にすればゾンビどもは元の愚民達に戻る!だから早く俺を村長にすると言え!」
 どうやらあの指輪は遠くにいる人と通信出来る指輪で話しているのは長男でゾンビ騒動を起こした張本人、ビーンの様だ。
「それはできない。お前には決定的に他人を思いやる心が欠けている。こんな様に育ってしまったのはワシの責任だ。だから、こんな事はやめてくれ」
「何だそれは。そんな事で俺が止まるとでも?ちゃんとお前は生き残る様にお前の家周辺にはゾンビはいないだろう!」
 なるほど。村長の家の周りにゾンビがいないのはやはり狙った事だったのか。
「頼む。もうこんな事は辞めてくれ」
 ビーンに深く頭を下げる村長。その様子を見てキョウカか飛び出そうとするとライヤが止める。
「何すんの」
「今行ってもどうしようも出来ないだろ。それより、頼みがある」
「「?」」
 ずっと頭を下げている村長にビーンはイライラしだしていた。
「もういい!俺を村長にしないならゾンビ達を動かす」
「頼む、それだけはっ!」
「まあ待ってくださいよビーンさん」
「あ?」
 突然会話に割り込んできたのら勿論ライヤだ。
「何だお前」
「駆け出し冒険者のライヤ・アラタと申します」
「お前か。というかお前だけなのか?」
 その場に出て行ったのはライヤ一人だけ。キョウカとナズナは他の役割があるからだ。
「ああ。俺一人。でもそれは今重要じゃない」
 ライヤを怪しげな目で見ているビーン。まあ警戒されるのは当然。それでも。
「ビーンさん。俺と勝負をしませんか?俺があなたの元へ辿り着きあなたを倒す事が出来れば俺の勝ち。ゾンビ化した人達を元に戻して村長を諦めてもらう。俺が一日以内にあなたの元へ辿り着けないか、ゾンビになったらあなたの勝ち。あなたを村長にする。簡単だろ?」
「・・・どこにいるかも分からない俺を一日以内に見つけると?しかも俺を倒す?そんな事が可能だとでも?」
 少し焦っている様子のビーンにライヤはキメ顔で。
「・・・あ、よくよく考えたら無理ゲーじゃんこれ。やっぱこの勝負なしで!」
「ふっ!フハハハ!いいぞ。受けてやるよその勝負!さあ今から二十四時間だ!精々頑張るんだな!」
「あーちょっと!!」
 ビーンは楽しげな笑いを見せた後通信を切った。そしてシーンとした空気が部屋に漂う。
「ライヤ殿!?こんな勝手な」
「大丈夫です。キョウカ、ナズナ。どうだ?」
 怒り出す村長の言葉を途中で静止してライヤは二人を呼ぶ。
「バッチリ音を拾ったよ。ライヤがアホかましてくれたお陰で大声出してくれたからね」
 窓から大きな鳥とキョウカが入ってくる。ライヤの頼みとは時間をかけるか大きな声を出させるからその音を拾ってくれというものだ。かなり無謀な賭けではあったがキョウカとボイスはビーンの声をしっかり聴いた様だ。
「ふぅー。疲れました。私もボイスももう限界ですよー」
 鳥の姿から戻ったナズナが床に倒れ込む。そしてキョウカの頭からボイスも出てきてナズナの上に倒れた。
「ありがとな。体力が回復したら向かうぞ。早くゾンビになった人達を戻したい」
「ゾンビに苦しみがあるかは分からないけど、まあそうだね」
「はい!」
 ライヤ達のやり取りに村長とゾルディアはポカンとしている。どうやら話についてこれなかった様だ。
「えっと、つまりどう言う事ですかな?」
「ナズナとボイスの体力が回復したらビーンさんを懲らしめてきます。それでゾンビ化した人々を元に戻して、クエスト達成です」
「まさかその様な方法でビーンの場所を探し当てるなんて!冒険者と言う人達は凄いですね!」
「?そうですね!冒険者は凄いんですよ!」
 ゾルディアの言葉にライヤは胸を張って言い張る。
「あの、回復までの時間にこの屋敷の図書室をお借りしてもよろしいですか?」
 ナズナが村長の元へ行くとそう頼んだ。
「別に構いませんが、何故かね?」
「私はあまりお二人の役に立てていません。なので知識を付けて、少しでもお二人の役に立ちたいんです」
「分かりました。ではどうぞこちらへ」
 こうして確自休息へ入った。
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