original ring

藤丸セブン

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2章 冒険の仲間

20話 精神の指輪

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「お兄様お兄様!見て下さい!」
「おお!遂に作ったんだな!」
 マキセの街へ向かう途中ナズナが嬉しそうに冒険者カードをライヤに見せる。これでナズナも立派な冒険者の仲間入りだ。
「これからもお兄様に降りかかる災いからナズナがお守りします!」
「そりゃあ頼もしいな!俺もナズナがピンチになったら絶対助けに行くからな!」
「それはいいけどさ。そろそろマキセの街着くよ」
 ナズナとライヤが楽しげに話しているとキョウカが少し不満そうに口を開いた。
「勿論キョウカも守るぜ!」
「お姉様は私が守ります!」
「そういうことじゃないんだけど、まあ。よろしく」
 急にストレートな言葉が飛んできたので少し頬を赤くしてキョウカが答える。
「と、忘れる所だった。これ二人に渡しとくぜ」
 ライヤが収納の指輪を操作すると指輪から二つの透明な玉が出現した。
「これって魔道具店で買うかめちゃくちゃ悩んでたやつ?結局買ったんだ」
「おう。サイズもビー玉と間違えるくらいに小さいし便利だろ?」
「はい!なのになんで買うか悩んでいたのですか?」
 それは単純にお値段が高いからである。この手の魔道具は大量に生産されてはいるがその一つ一つがなかなかに高い。故に三つも買うとなるとかなりお金が必要になるのだが。
「まあそれはいいとして。あれがマキセの街か?」
 ライヤが魔導車の外を見ると大きめの街が目に入る。しかしその街に入る為の門は完全に閉ざされていた。
「うわ。これじゃ中に入れないじゃん」
「空から忍び込みますか?」
「いや、それは危険だな。それならこれはどうだ」
 ライヤの作戦に二人は少し考えて納得した。その作戦とは。
「すみませーん。冒険者の者ですが入れてもらえませんかー?」
 正面突破である。それで中に入れないなら別の方法を考える。だが最初から忍び込むよりは正面から入れるならそちらの方が楽だ。それにいきなり戦闘態勢になったとしても心の準備は出来ている状態で挑む事が出来る。
「何かこの街に用事か?」
 ライヤの声かけから暫くの沈黙が流れたあと門の内側から門番と思われる男の声が聞こえる。
「依頼とかじゃないんだけど食料が尽きちゃって。買い物していきたいと思いまして」
「・・・少し待て」
 男の声を聴くとライヤは後ろにいる二人に親指を立ててグットポーズをとる。ナズナも同じくポーズを取るがキョウカは唖然としている。まさかこんな簡単に入れるとは思っていなかったのだろう。しかし。
「おっそい」
「もう一時間程度待たされてますね」
 門番が消えた後音沙汰が全く無い。
「やっぱ信頼するんじゃなかった。これからは絶対私の言う事聞いてもらうからね」  
「えー。しょうがねえかぁ」 
 全員が半ば諦めかけたその時。急になんの脈絡も無く門がゆっくりと開き始めた。
「おっ!開いたぞ」
「マジか」
 門が完全に開くと中には二人の人間の姿が見える。一人は成人したてに見える若い女性。そしてもう一人はもっと幼くナズナと同じかそれ以下の年齢程度に見える少年だった。
「ようこそマキセの街へ。歓迎しますよ!」
 少年が笑顔で三人に話しかけるのと同時にその指に光る指輪を発動させた。
「目を閉じて!!」
「え!?」
「はい!?」
 キョウカのいきなりの声に二人は驚くがその指示通りに目を閉じる。
「ほう。あなた、只者じゃありませんね」
「別に。ただ少しその指輪の事について知ってるだけ」
「え?つまり?」
 少年とキョウカのやりとりにライヤが目を閉じたまま困惑する。
「つまりこの男の子がオリジナルの使い手って事」
「な、なるほど。それで私達が目を閉じたのはその効果を打ち消す為なのですか?」
 ナズナの質問に肯定しながらキョウカがその指輪の名を言った。
「精神の指輪。視線を合わせた人間の精神を操作して意のままに操る。簡単に言うと洗脳だね。それ以外にも使い方はあるけど、あんたは洗脳しかしてない感じかな」
「あなた方でしたか。僕の楽園を壊しに来る犯罪者共は」
 少年はまた指輪の効果を発動しようと指輪を前に掲げる。
「無駄だよ。精神の指輪の弱点は理解。今から洗脳されるって分かったら洗脳の効果は弱くなる」
「並の使い手ならそうでしょう。しかし僕は違う。あなたも違和感は覚えていたのでしょう?」
 精神の指輪で洗脳出来る人は多くても十人程度が普通だ。だと言うのにマキセの街から脱出出来た人はいない。つまり街に住む人間全てに洗脳をかけている可能性がある。まあ牢屋などに捕まえている可能性の方が高いが。
「つまり目を閉じる。理解したから効かないなんて考えない方がいいですよ。僕の操り人形になりたくなければ」
「舐めんなよ、この野郎!」
 ライヤが目を閉じたまま稲妻を放つ。だが目を閉じているせいで狙いは上手く定まらずに簡単に避けられてしまう。
「全く危ないですね。しかし僕は寛大です。このまま何もせずに帰るというなら見逃してあげてっ!?」
 少年が手を広げて余裕を見せながら話していると突然の衝撃に言葉を止めた。
「目が開けなくても殴る事は出来るんですよ」
 ナズナが瞬足の怪物と呼ばれる程の魔獣、ジェットラビットに変化して少年を吹き飛ばしたのだ。
「馬鹿なっ!何故僕の場所が」
「そりゃ声の方角で分かるでしょう。ボイスの助けもありますし」
 キョウカは少年と会話をしながらボイスを呼び出しナズナに少年の位置を伝えていた。ライヤに知らせなかったのはライヤの方が少年に警戒されていたからだ。
「クソ共がァ!こうなりゃ最終手段だ!レア!!」
「はい、坊っちゃん」
 少年が大声でずっと後ろに控えていた女性を呼ぶ。警戒したまま女性の居場所を音で確認するキョウカだがその違和感に目を開いた。
「なっ!あんた何やってんの!!」
 暗闇から解放された視界にはレアと呼ばれた女性が八歳程度の少女にナイフを突き立てている姿が映った。
「簡単ですよ。貴方達が動けばこの子を殺す。この子はただこの街に住んでいただけの罪の無い子供です」
「てめぇ!!!」
 レアの声を聞いて激怒したライヤがレアに雷を向けようとしたが少女の首に更にナイフが食い込むのを見て動きを止める。
「そうだ。それでいい。その女も変身を解け」
 少年の言葉に渋々従いナズナは変化を解く。
「ん?その髪、その瞳、その容姿全て!!ドストライクだ!!!」
「はっ?」
 シリアスな展開は何処へやら少年は急に楽しげな声を上げる。
「今まで洗脳で様々な女と楽しんできたが君は今までのどの女よりタイプだ!」
「そ、そうですか」
 あまりの事にナズナは話に返事する事しか出来ない。少年は少し考え込むと「そうだ」と呟いた。
「君、僕の妻になってよ」
「・・・はぁぁぁぁ!?」
「「えええええええ!?」」
 少年の言葉にナズナが大声を上げて一瞬言葉の意味が分からず目を見合わせたキョウカとライヤも遅れて叫ぶ。
「そうと決まれば式の準備だ。あ、そこの二人はもう帰って。邪魔」
「ふざけんなよお前!ナズナを嫁になんてやるか!いいからオリジナルリングをキョウカに返して街の人達の洗脳を解きやがれ!」
「乱暴だなぁ。こんな男と共にいたら僕の花嫁が汚れる。さっさとマキセの街から消えなよ」
「本気でキレたぜ。お前ボコボコにしてやる」
 怒りで周りが見えなくなったライヤの視線に入る様にレアが移動して人質がいる事を思い出させる。
「どうすればいいのこれ!」
「道は一つだよ。この子を置いて君達は帰ればいい」
「他に選択肢があるとすればこの少女を見殺しに私達に襲いかかる事です。しかしそうなっても坊っちゃんには勝てませんが」
 レアの意見も最もだ。もし少女を見殺しにしたとしても指輪を取り返せる要素が少ない。
「分かりました」
「ナズナ?」
「あなたのお嫁さんになりましょう。そのかわり条件があります」
「聞こう」
「オリジナルリングをお姉様に渡して下さい」
「それは出来ないな。この僕の楽園を維持するのにはこの指輪が必要だ」
 少年はその条件を断るがナズナもそこは引かない。お互いが睨み合う形になった。
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