original ring

藤丸セブン

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2章 冒険の仲間

28話 火炎の試練

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「それじゃあ行くぜ!火炎よ、焼き尽くせ!!」
 エンカの指輪から放たれる高熱な炎をライヤはギリギリ躱す。
「おらおらおら!」
 エンカの繰り出す火炎放射の連続。それを一歩足を前に出せば当たる様なギリギリの距離で躱し続ける。
「おー凄。よく躱すもんだな」
「いや、あれは躱してるんじゃねえな。見てるのさ」
 キョウカの独り言にマキが口を挟む。
「見てる?一体どう言う事ですか?」
「そのままの意味だ。エンカの炎の特徴、エンカの攻め方、火炎放射の秒数、いわばエンカの攻撃の癖を見てる」
 マキの視点は正解だ。今のライヤの実力では力、能力、指輪。どれ一つをとってもエンカに勝るものはない。だが唯一互角、それ以上のものがある。
「それが単純な身体能力。幾ら歴戦の冒険者と言えど指輪を主に戦うただのガキとオリジナルリングを使いこなす鍛えられた男の体。流石にこれはライヤに分配が上がる」
「あっつ!!」
 マキが自慢げに二人に話しているとライヤの悲鳴が聞こえた。どうやら躱し損ねて炎に呑まれた様だ。
「取り出し!水!」
「そんな事してる暇あんのか!?」
 収納の指輪に収納してあった水を被るライヤの周囲をエンカが走りまわる。
「なっ!これは」
「火炎の檻、完成だ」
 先程エンカが走った部分に火の粉が散ると火柱が立ち上がる。今のライヤは完全に火柱に閉じ込められていた。
「ダメじゃんか!あんなかっこよさげに「見てるのさ」とか言われるからしっかり見切って反撃すると思ってたのに!」
「おいやめろ。んうん!まあ俺が分かるって事はエンカも分かる、可能性があるって事だ」
「そうか、癖が見られていると分かれば攻撃の仕方を変えますよね、普通」
「まあ、あいつはそんな事考えてないかも知れんがな」
 エンカが満面の笑みで火炎の檻に閉じ込められたライヤの元へ歩み寄る。
「ふふん。私の勝ちだな」
「いや、まだ分かんねえっすよ!」
「ん?なんとかする方法あんのか?じゃあ攻撃しとくか」
「え?」
 実際ライヤは無力である。雷鳴の指輪を使えないので火炎の檻の外へ攻撃する事はかなり難しいし、魔道具を使おうにも魔道具は消耗品。ここで使う訳には。
「火炎球!いっけー!」
「うおおおおお!!?」
 狭い檻の中で飛んでくる火の玉を避けて避けまくる。だが当然そんなもの長くは続かない。
「くっ!取り出し!大盾ダブル!」
「お、防がれた。じゃあ。下はどうだ?」
 四方を囲む様に巨大な盾を二つ作り火の玉を防いだが、地面からの火柱への対策は出来ていなかった。
「がっ!がぁぁぁぁ!!」
「ライヤ!」
「お兄様!お兄様が死んじゃいます!」
「死なねえ様に加減してるだろ。それに、ここで死ぬ程度ならやっていけねえぜ?」
「な、めんなっ!」
 火柱に焼かれながらも試行錯誤は続く。ひとまずは盾を足元に叩きつけ火柱を止めた。しかし。
「くっ!力強っ」
 火柱が溢れそうになる力はとてもライヤが止められる物では無かった。
「くっ!どうする!?」
 魔道具で空を飛びこの檻を抜ける?いや。まずそんなことは出来ない。ならば火柱に突っ込む?そうすれば外からの格好の餌食だ。
「どうする、どうする!?」
 思い悩むライヤに微かに声が聞こえてきた。
「こらライヤー!何やってんだ!負けたら承知しないからなー!!」
「お兄様ー!頑張れー!」
 二人の声援を聞いてライヤは少しだけ口元をニヤケさせる。
「これだけ応援されたら、出し惜しみなんて出来ねえよなぁ!」
 ライヤは指輪に力を込め、帯電を始める。
「っ!ライヤ!!」
「来やがったな雷!でもやらせねえぞ!!」
 ライヤが雷で反撃して来ると思ったエンカが最大出力で火炎を放つ。それこそが、ライヤの狙いだ。
「今だ。取り出し!マジックキャンセラー!!」
 ライヤが小さな球を地面に叩きつけるとエンカの炎が一瞬にして消え去る。ちなみに雷も魔道具の一種、簡易スタンガンである。
「はっ?」
 最大出力を放出したにも関わらずその火炎が消された事に呆気に取られたエンカ。その視線には走り出してきているライヤが見える。
「おらぁぁ!!」
 ライヤがエンカに捕縛ワイヤーを三本同時に放つ。この三本を躱す事は不可能。
「っと。危ねぇ」
「なっ!」
 二つのワイヤーを躱したエンカが懐からナイフを取り出し捕縛ワイヤーを最も容易く切り裂く。
「まじかよっ!」
「指輪を使えなくするとかえぐいなお前。お前が雷使えてたら私の負けだったな」
「っ!そりゃバレない方が可笑しいか」
 あれだけマキ達と食事をしながら自分の活躍を楽しげに話していたのだから雷を操れる位分かるのにライヤは一向に指輪を使わない。ならば何らかの理由で使えないと考えるのが妥当だろう。
「でも、指輪は封じた。まだ分からねえっすよ!」
「そんな長くは無いだろ?どつせ持って後数分、いや一分位で終わりじゃねえか?」
 図星だ。これほどの強力な魔道具なのだから長く続く訳がない。めちゃくちゃ高級なお値段でしたし。
「今しかねえよなっ!」
「来いよ!接近戦でも負けねえぞ!?」
 ライヤが収納の指輪から使い慣れないがカッコ良さから購入した刀を取り出し握る。
「おっも!」
 が、その余りの重量に動きが止まる。
「アホかお前?」
 エンカが両手で精一杯刀を握るライヤに一言言うとナイフではなく拳で殴りつけてきた。
「うっし。捕まえた」
 しかし殴られたにも関わらずライヤは笑う。エンカの腕を掴んだからだ。
「げっ!でも殴り続ければ」
「はい」
「ん?何だこれ」
 ライヤが手を離す様にもう一撃拳を繰り出そうとしていたエンカにライヤが何かをつける。
「お、おおおおお!!なんだこれ!おいライヤ!私に何しやがったァァァァ!」
 声は段々と遠くなっていく。そう、エンカはライヤに背を向けると街に向かって一目散に走り出していたのだ。
「ふう。上手くいったか」
「おい、私の可愛い妹に何しやがった」
「そんな変な事はしてねえっすよ。脱出パッチって言う魔道具です」
 脱出パッチはそのパッチをつけた者を強制的に安全な場所へ移動させるという魔道具だ。
「自分はもうダメだ!君だけでも逃げてくれ!って場面で使います」
「あー。ああいう場面ウザイよな。助からないって分かるならすぐ切り捨てればいいのによ」
 マキが身も蓋もない事を言いライヤは苦笑いを浮かべる。恐らくだが、マキはその場面が来れば躊躇わない。躊躇わずに、助けることができる人だけを助ける事だろう。
「合理的ではあるんだけど、な」
「あ?なんか言ったか?」
「いえ、何も」
 恐らくライヤなら全ての人を救おうと努力してしまう。もう助からない人がもしかしたら助かるかも、と。
「うおおおおお!!」
 エンカがダッシュで街から戻って来る。かなり息が切れているし全力で走ってきたのは明白だ。
「敵前逃亡は死刑だったな」
「マキ姉だって下がる時は下がるだろっ!」
「それは私が支持した場合だ。私が戦えって言えば戦え。つまり今のお前の行動は死刑だ」
「ま、マジかよ」
 死刑と言うのは大袈裟だがこの勝負の勝敗は決した様だ。
「お兄様の勝ちですね!!」
「おう!」
 喜ぶナズナにライヤは笑顔を見せる。だがキョウカは笑っていない。
「ん、どうしたのキョウカさん?」
「あんた模擬戦でめっちゃ貴重な魔道具使ってんじゃねーぇ!!」
「キョウカが勝てって言ったんじゃん!!」
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