28 / 81
2章 冒険の仲間
28話 火炎の試練
しおりを挟む「それじゃあ行くぜ!火炎よ、焼き尽くせ!!」
エンカの指輪から放たれる高熱な炎をライヤはギリギリ躱す。
「おらおらおら!」
エンカの繰り出す火炎放射の連続。それを一歩足を前に出せば当たる様なギリギリの距離で躱し続ける。
「おー凄。よく躱すもんだな」
「いや、あれは躱してるんじゃねえな。見てるのさ」
キョウカの独り言にマキが口を挟む。
「見てる?一体どう言う事ですか?」
「そのままの意味だ。エンカの炎の特徴、エンカの攻め方、火炎放射の秒数、いわばエンカの攻撃の癖を見てる」
マキの視点は正解だ。今のライヤの実力では力、能力、指輪。どれ一つをとってもエンカに勝るものはない。だが唯一互角、それ以上のものがある。
「それが単純な身体能力。幾ら歴戦の冒険者と言えど指輪を主に戦うただのガキとオリジナルリングを使いこなす鍛えられた男の体。流石にこれはライヤに分配が上がる」
「あっつ!!」
マキが自慢げに二人に話しているとライヤの悲鳴が聞こえた。どうやら躱し損ねて炎に呑まれた様だ。
「取り出し!水!」
「そんな事してる暇あんのか!?」
収納の指輪に収納してあった水を被るライヤの周囲をエンカが走りまわる。
「なっ!これは」
「火炎の檻、完成だ」
先程エンカが走った部分に火の粉が散ると火柱が立ち上がる。今のライヤは完全に火柱に閉じ込められていた。
「ダメじゃんか!あんなかっこよさげに「見てるのさ」とか言われるからしっかり見切って反撃すると思ってたのに!」
「おいやめろ。んうん!まあ俺が分かるって事はエンカも分かる、可能性があるって事だ」
「そうか、癖が見られていると分かれば攻撃の仕方を変えますよね、普通」
「まあ、あいつはそんな事考えてないかも知れんがな」
エンカが満面の笑みで火炎の檻に閉じ込められたライヤの元へ歩み寄る。
「ふふん。私の勝ちだな」
「いや、まだ分かんねえっすよ!」
「ん?なんとかする方法あんのか?じゃあ攻撃しとくか」
「え?」
実際ライヤは無力である。雷鳴の指輪を使えないので火炎の檻の外へ攻撃する事はかなり難しいし、魔道具を使おうにも魔道具は消耗品。ここで使う訳には。
「火炎球!いっけー!」
「うおおおおお!!?」
狭い檻の中で飛んでくる火の玉を避けて避けまくる。だが当然そんなもの長くは続かない。
「くっ!取り出し!大盾ダブル!」
「お、防がれた。じゃあ。下はどうだ?」
四方を囲む様に巨大な盾を二つ作り火の玉を防いだが、地面からの火柱への対策は出来ていなかった。
「がっ!がぁぁぁぁ!!」
「ライヤ!」
「お兄様!お兄様が死んじゃいます!」
「死なねえ様に加減してるだろ。それに、ここで死ぬ程度ならやっていけねえぜ?」
「な、めんなっ!」
火柱に焼かれながらも試行錯誤は続く。ひとまずは盾を足元に叩きつけ火柱を止めた。しかし。
「くっ!力強っ」
火柱が溢れそうになる力はとてもライヤが止められる物では無かった。
「くっ!どうする!?」
魔道具で空を飛びこの檻を抜ける?いや。まずそんなことは出来ない。ならば火柱に突っ込む?そうすれば外からの格好の餌食だ。
「どうする、どうする!?」
思い悩むライヤに微かに声が聞こえてきた。
「こらライヤー!何やってんだ!負けたら承知しないからなー!!」
「お兄様ー!頑張れー!」
二人の声援を聞いてライヤは少しだけ口元をニヤケさせる。
「これだけ応援されたら、出し惜しみなんて出来ねえよなぁ!」
ライヤは指輪に力を込め、帯電を始める。
「っ!ライヤ!!」
「来やがったな雷!でもやらせねえぞ!!」
ライヤが雷で反撃して来ると思ったエンカが最大出力で火炎を放つ。それこそが、ライヤの狙いだ。
「今だ。取り出し!マジックキャンセラー!!」
ライヤが小さな球を地面に叩きつけるとエンカの炎が一瞬にして消え去る。ちなみに雷も魔道具の一種、簡易スタンガンである。
「はっ?」
最大出力を放出したにも関わらずその火炎が消された事に呆気に取られたエンカ。その視線には走り出してきているライヤが見える。
「おらぁぁ!!」
ライヤがエンカに捕縛ワイヤーを三本同時に放つ。この三本を躱す事は不可能。
「っと。危ねぇ」
「なっ!」
二つのワイヤーを躱したエンカが懐からナイフを取り出し捕縛ワイヤーを最も容易く切り裂く。
「まじかよっ!」
「指輪を使えなくするとかえぐいなお前。お前が雷使えてたら私の負けだったな」
「っ!そりゃバレない方が可笑しいか」
あれだけマキ達と食事をしながら自分の活躍を楽しげに話していたのだから雷を操れる位分かるのにライヤは一向に指輪を使わない。ならば何らかの理由で使えないと考えるのが妥当だろう。
「でも、指輪は封じた。まだ分からねえっすよ!」
「そんな長くは無いだろ?どつせ持って後数分、いや一分位で終わりじゃねえか?」
図星だ。これほどの強力な魔道具なのだから長く続く訳がない。めちゃくちゃ高級なお値段でしたし。
「今しかねえよなっ!」
「来いよ!接近戦でも負けねえぞ!?」
ライヤが収納の指輪から使い慣れないがカッコ良さから購入した刀を取り出し握る。
「おっも!」
が、その余りの重量に動きが止まる。
「アホかお前?」
エンカが両手で精一杯刀を握るライヤに一言言うとナイフではなく拳で殴りつけてきた。
「うっし。捕まえた」
しかし殴られたにも関わらずライヤは笑う。エンカの腕を掴んだからだ。
「げっ!でも殴り続ければ」
「はい」
「ん?何だこれ」
ライヤが手を離す様にもう一撃拳を繰り出そうとしていたエンカにライヤが何かをつける。
「お、おおおおお!!なんだこれ!おいライヤ!私に何しやがったァァァァ!」
声は段々と遠くなっていく。そう、エンカはライヤに背を向けると街に向かって一目散に走り出していたのだ。
「ふう。上手くいったか」
「おい、私の可愛い妹に何しやがった」
「そんな変な事はしてねえっすよ。脱出パッチって言う魔道具です」
脱出パッチはそのパッチをつけた者を強制的に安全な場所へ移動させるという魔道具だ。
「自分はもうダメだ!君だけでも逃げてくれ!って場面で使います」
「あー。ああいう場面ウザイよな。助からないって分かるならすぐ切り捨てればいいのによ」
マキが身も蓋もない事を言いライヤは苦笑いを浮かべる。恐らくだが、マキはその場面が来れば躊躇わない。躊躇わずに、助けることができる人だけを助ける事だろう。
「合理的ではあるんだけど、な」
「あ?なんか言ったか?」
「いえ、何も」
恐らくライヤなら全ての人を救おうと努力してしまう。もう助からない人がもしかしたら助かるかも、と。
「うおおおおお!!」
エンカがダッシュで街から戻って来る。かなり息が切れているし全力で走ってきたのは明白だ。
「敵前逃亡は死刑だったな」
「マキ姉だって下がる時は下がるだろっ!」
「それは私が支持した場合だ。私が戦えって言えば戦え。つまり今のお前の行動は死刑だ」
「ま、マジかよ」
死刑と言うのは大袈裟だがこの勝負の勝敗は決した様だ。
「お兄様の勝ちですね!!」
「おう!」
喜ぶナズナにライヤは笑顔を見せる。だがキョウカは笑っていない。
「ん、どうしたのキョウカさん?」
「あんた模擬戦でめっちゃ貴重な魔道具使ってんじゃねーぇ!!」
「キョウカが勝てって言ったんじゃん!!」
1
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる