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2章 冒険の仲間
27話 模擬戦争
しおりを挟む「はぁ、はぁ。なんとか森を出れたな」
「おう。ブラットモンキーは割と縄張り意識が強い。だからここまで逃げれば追っては来ねえさ」
マキの言葉に一同が安心して膝をついた。
「ちくしょー。変な事しやがってあの猿!」
「最悪だったなー」
「す、すみません。私達とお話ししていたから」
ナズナがそういうと二人が「「いや、私達の確認不足だ」」と言う。
「その通りだな。さっさと焼いちまえばこうはならなかったからな」
「「マキ姉言い方が悪いぞ!」」
マキは二人の言葉に笑いながらギルド依頼人へ報告へ行った。
「そだ、今日の夜暇か?暇なら飯くおーぜ!」
「嫌ならいいけど嫌じゃないなら強制な!」
「全然大丈夫っす!寧ろ喜んで!」
別れ際のエンカとネンカの食事のお誘いにライヤは笑顔で乗った。
「しかしお前らもなかなかやるな。あの戦法は見事だったぜ」
「いや俺の魔道具にナズナがうまく合わせてくれただけですよ!こいつの手柄です!」
時刻は夜七時。ギルドの食事所でライヤ、キョウカ、ナズナ、マキ、エンカ、ネンカの六人は大量の料理を食べながら話に花を咲かせていた。
「それはそうと、だ。お前らいつまでこの街にいるつもりだ?私らは暫くいるつもりだが」
「俺らも長居するつもりっす。どれたけ残るかは、ちょっと分からねえっすけど」
「っ!この街に危険があるって事か?」
マキの真剣な声にライヤが少し驚きながらも首を振る。
「もしかして師匠、俺たちが何を探してるから知ってるんですか?」
「オリジナルリングだろ?流石にあんな巨大な雷出せる指輪なんて限られるし、これもあるしな」
マキが鞄から取り出したのは一枚の紙、情報屋の情報通である。一枚の三百イースで購入出来る。
「おいキョウカ!」
「何?ってこれ!」
その紙に書かれていたのはアリシス一族の死亡とオリジナルリングの喪失と言う事件だった。
「逆に今までバレなかったのが奇跡だよ。これだけの大事件をよ」
「そりゃ、確かに」
「まあだからって接し方は前と変わらねえよ。困ってんなら手伝ってやるし」
「ありがとうございます。凄え助かります」
「気にすんな、可愛い後輩の為だからな」
先程までの雰囲気を消してマキはライヤに笑う。そのマキに釣られてライヤも笑った。
「それはそうと、あの嬢ちゃんの指輪はなんだ?」
「ナズナの指輪ですか?あれはオリジナルリングが一つ、変化の指輪です。自分、相手、物などの変化させる対象を指定して自分が望む姿へ変化させる」
「そりゃ凄えな。使い方次第で戦況をひっくり返せるぜ」
オリジナルリング一つで戦争の流れをひっくり返せる程の威力があると聞いてはいたが実際に話に聞くとそれが有り得そうな性能だ。
「なかなか、興味があるな」
「ん?どうしました?」
「いや、もし良ければだがよ。明日模擬戦争をしねえか?」
◇
模擬戦争。ギルドで主催されるチーム戦の戦争ごっこ。敗者は勝者の望むものを一つ差し出さなければならないという催し物だ。
「まあ行うのは模擬戦争の模擬戦。いわゆる力試しだがな」
翌日の朝。模擬戦争を了承したライヤ達対ファイヤーシスターズとの模擬模擬戦争が始まろうとしていた。
「なんでそんな事オッケーしたの。絶対面倒くさいじゃん」
「そんな事ねえよ。多分この模擬戦で得るものは大きいと思うぜ」
昨日のブラットモンキーからの逃走劇を見たライヤとしてはファイヤーシスターズの立ち回りは是非とも参考にしたい。そんな時に模擬戦のお誘いがあれば断る理由など皆無。寧ろこちらからお辞儀をする程だ。
「三人通りが乱闘する模擬戦争か、一対一を三回行うサシ戦争か。どっちがいい?」
「俺は出来れば模擬戦争がいいっす」
「そうか。残念ながら私はサシ戦争派だ」
マキの言葉にライヤは耳を疑う。聞いてきておいてこっちの意見を聞いてくれないと言う点ももちろんだが主はそこではない。あれほどまでチームワークが取れているファイヤーシスターズがサシを望んできたと言う事だ。
「師匠達はめちゃくちゃ連携凄いし模擬戦争の方が良さそうだけど」
「確かに私達の連携は中々のもんだろうよ。だが、今回の目的はそれじゃちと達成できない」
「目的?」
マキがこの提案をした理由は二つあった。その二つが。
「私達一人一人の戦力強化とお前らの実力を見る事だ」
「個人個人の戦力強化ってのは分かるけど、俺たち?なんでそんな事を」
「先輩としてコーチしてやろうというありがたーいご好意だよ」
言葉を遮られたライヤは納得したように手を叩くと「ありがとうございます!」と頭を下げる。
「ったく調子の良いやつだな。まあ良い。初手は誰が行く?」
「え?」
「何がだ?」
マキの問いにエンカもネンカも惚けた声を上げる。どうやら今までの会話を何も聞いていなかった様だ。
「お前らぁぁ」
「げっ!マキ姉が怒ってんぞ!ネンカなんかしたか?」
「ぎぃぇ!マキ姉がお怒りだぞ!エンカ謝っとけ!」
「二人共だこの野郎!」
怒っているマキが二人に接近している事を確認するとエンカとネンカは顔を見合わせた後二手に分かれて逃げ出した。
「あいつら、この私から逃げようとは良い度胸だな」
その後逃げ出したエンカは五分で、ネンカは四分でマキに捕らえられた。
「やるなマキ姉。この私を捕まえるとは」
「流石マキ姉。この私の首根っこを掴むとは」
「お前らこそ逃げ足はやくなったじゃねーの。昔は一分も逃げられなかったのになぁ」
「「弟子の前で昔の話はやめろぉぉ!」」
師匠のメンツを守る為か昔の話を嫌がる二人。しかし自分より小さい少女(成人)に片手づつで持ち上げられている姿を見るとどうしても威厳の様なものを感じることは出来ない。
「待たせたな。そんじゃあ始めるとするか」
「了解です。じゃあ初手は誰で行く?」
「うーん。マキさんちょっと作戦会議しますので五分下さい」
「おう」
ファイヤーシスターズから少し離れて作戦会議が始まる。
「よし、まずはルールの確認からだな」
一対一の決闘を三回行い二回勝った方のチームの勝利。ルールは至ってシンプルなものだ。
「でもマキさんが戦闘におけるルールはなし、だって」
「戦闘におけるルールがないって事は指輪は勿論魔道具や罠なんかも使えるって事ですかね?」
模擬戦争といえど戦争は戦争だ。戦争中に魔道具を使ったからルール違反だの罠をはるなんてずるいだの言う言い訳ができる訳がない。よってこの模擬戦争でもルールというものは一切無いのだ。
「それなら私、やりたい事があるんだ」
キョウカのやりたい事を聞くと二人は苦笑い。そう。思いっきりズルい作戦だったのだ。
「私はこれやりたいから最後がいい」
「なんで最後?最初はダメかもだけど途中なら」
「二回戦目ではまだ誰と戦うか分からないからですね」
「その通り。流石ナズナちゃん」
最後がキョウカ。それは決まったがとなると残るは二つ。
「じゃあ俺が先手だな。ナズナにいきなり最初やらせる訳には行かねえし」
「お、男らしいじゃん」
「カッコいいですお兄様!」
ナズナはともかくキョウカに素直に褒められた事に少し照れながらライヤが立ち上がる。
「よっしゃ!じゃあマキ師匠に決まった事伝えに行くか」
「あ、待った。その前に」
キョウカがライヤに駆け足で近寄って来る。
(んなんだ?なんだか、近くない!?)
駆け足で走ってきたキョウカがいつもより至近距離でライヤの手を握った。
(こ、こここここれは!?)
「うーん。やっぱまだ不安定だな。この試合でも雷鳴の指輪は使っちゃダメだからね」
「あ、うん。知ってた」
「知ってたならいいけど使わずに勝てる方法考えてあるんでしょうね?負けたら招致しないから」
「はーい」
少し落ち込んだ気分でマキの元へ歩く。
「お、初手はやっぱお前か。んじゃやってやんな。エンカ」
「おうよ!ライヤ覚悟しな!これがネンカ様の火炎の指輪よ!」
「もう結構見てるけど凄い炎だな。こいつに雷無しで、かよ」
魔道具も使っても良いとの事なので何通りかの作戦は考えてあるが魔道具とは消耗品。出来ることなら消耗品をこの場で使いたいない。
「ま、背に腹はかえられねーよな」
「そういうこった!んどういうこった?まあいいや。やろうぜ!!」
模擬戦争一回戦 ライヤVSエンカ 試合開始
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