original ring

藤丸セブン

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2章 冒険の仲間

44話 協力者

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 人工迷宮の最奥。冒険者のチームと盗賊団との決闘が終わったその場所に本来は聞こえないはずの拍手の音が鳴り響く。
「なっ!誰!?」
 その場にいる中で唯一体を動かせるキョウカが警戒しながら音の出ごころを見る。
「五つめのオリジナルリングの回収おめでとう。キョウカ・アリシス」
「あんたは!ウルとか言うギルド長!」
 そこにいたのは迷宮に入る前に出会ったウルだった。
「どうやってここに。いや、何しにここに来た訳?」
「おいおい、そんなに警戒しないでくれよ。私はただ君達に祝福を言いにきただけだよ」
「祝福?」
「ええ。さっき言ったでしょう、おめでとうって」
 ウルは不吉な笑顔を見せながらそう言い放つ。その言葉に偽りはない様に思えるが、どうにもそれだけではない様に思えてならない。
「五つめのオリジナルリングって言ったね。あんたこの迷宮にオリジナルリングを持ったローズがいる事を知ってたのね。しかも私達の事も」
「ああ勿論。だって、その女に欲望の指輪を授けたのは私だからね」
「はっ?」
 ウルから返ってきた言葉は想定外のものだった。ウルが授けた?オリジナルリングを?
「キョウカ、こいつって」
 シルの言いたいことは分かる。普通ただのギルド長がオリジナルリングを持つ訳がない。つまり。
「君達の思っている通りさ。私はギルド長にして、君の故郷を滅ぼした魔族の協力者だよ」
 想像してはいたが驚きの言葉だった。まさか魔族に協力者がいるなんて。
「何で魔族に協力なんてしてる訳?魔族の目的は何!?どうしてオリジナルリングを奪ったの!?適性を持つ人を見つけて送り込んで、何がしたい訳!?」
「こらこら。一度にそんなに質問されても答えられないよ。まあ、答えるつもりもないんだけど」
 キョウカがウルを睨むがウルは全く気にするつもりは無いようだ。
「待てよウル」
「おや、何かなフィン」
 フィンが反動により起こせない体はそのままにウルに問いかける。
「お前が魔族の協力者なのは分かった。なんで協力してるのかも何となく分かる。だがこれだけは教えてくれ」
 フィンの言葉にウルは一瞬だけ凄く冷たい視線を送ったが、それ以外は何も言わない。それを肯定と取ったフィンは疑問を口にする。
「お前は、いつから魔族の協力者なんだ?俺と一緒に冒険してたお前は全部嘘だったのか?」
「え?一緒に冒険!?」
 フィンは昔、本当に短い時間ではあったがウルと冒険を共にしたことがあるのだ。
「さて、いつからだったかな」
 ウルはフィンの質問に曖昧に答えて迷宮の奥へと進んでいく。キョウカはウルを油断なく見つめていつでも襲撃できる様に準備するが、攻撃はしない。勝てないと分かっているからだ。
「いい判断だ。今の私に敵意はないから、攻撃なんかして私を怒らせない方がいい」
 ウルの力は恐らくフィンよりも上。ライヤとフィンが同時にかかって倒せるかどうかといった所だろう。そんな相手にキョウカ一人で勝てる訳がない。
「本当におめでとうとか言う為だけにここに来た訳?自分が魔族の協力者だって明かして、本当に目的はそれだけ?」
「うーん。正直言って自分でも分からないんだ。なんで私が自らここに足を踏み入れたのか」
 これまで誤魔化すような事しか言わなかったウルが本当に分からない様に首を傾げる。
「分からねえのかよ。俺は何となく分かるぜ」
「へえ。それは興味深い。言ってみなよ」
 フィンは少し笑った後に答えた。
「お前は俺たちに興味を持ったんだ。だから危険を犯してでも俺たちの様子を見る為にここに来た。まあ、お前に取っては危険を犯してって程でもないのかも知れないがな」
 フィンの答えはウルにとっては想定外の答えだった様で少し固まる。
「それだけ?本当にそれだけの理由で私はここに来たのかい?」
「ああ、多分な。お前は昔から、自分が興味を持った事以外には一才関心がなくて、興味を持ったらとことんやるタイプの変な奴だったからな」
 ウルは何も言わずに考え込んで、少しだけ表情を和らげた。
「じゃあ私は行くよ。この人工迷宮は行きは怖くて帰りはよいよいだから、じゃあね」
「は?それどういう」
 キョウカの言葉に耳を貸さずにウルは迷宮の奥へと進み壁に手を翳す。すると壁が壊れて大きなエレベーターの様な物があるのが分かった。
「おいおい。もうちょっと雰囲気を大事にしようぜ?」
「じゃあね、また会おう。次も、私を楽しませてくれよ」
 ウルはそう言い残しエレベーターの中へと消えていった。
「カッコいい去り方とは言えねえな」
「うん」
 フィンとシルが妙にカッコ悪い去り方をしたウルに何とも言えない顔をするがキョウカだけは一人深刻な顔をしていた。
  ◇
「ん、ここは」
「お兄様!お兄様が起きました!お姉様ー!お兄様がー!」
「分かった分かった!聞こえてるから!」
 ライヤが目を覚まして見たのは昨日一度見た天井。リベイアの宿屋だ。
「キョウカ!無事か!?」
 意識がはっきりしてきてからライヤはナズナを優しく抱えて勢い良く飛び起きる。
「いっ!ててて」
「無理しちゃダメですよお兄様」
「大丈夫だって。ナズナちゃんとフィンのお陰でこの通り無事だよ。更に欲望の指輪も回収済み!」
 キョウカはライヤに封印してある精神の指輪と欲望の指輪を見せる。ライヤが心配していたのは指輪ではなくキョウカの安否だったのだが、それも大丈夫そうだ。
「起きて早々悪いが伝えたい事がある。お前が倒れた後の話だ」
 フィンの言葉にライヤは無言で頷く。そしてフィンはウルの事をライヤに話した。
「そんな、ウルさんが魔族の協力者?」
 ライヤはウルに恩を感じていたのかキョウカよりも大きなショックを受けている様だった。
「あの、それで盗賊団の人達はどうなったんですか?」
「ああ。地上に上がったらすぐ様連行されていったぜ。多分ウルの差金だろうな」
 エレベーターから降りたら直ぐ様多くの警官に囲まれたのはとても心臓に悪かった。地上に上がる前に欲望の指輪を回収しておいて本当に良かったとキョウカは思う。
「とにかくウルさんが悪いやつなのは分かった。でも、だからって今対処できる事って無いよな?」
「残念ながらね」
 ウルが魔族の協力者である事が分かっても、それ以外に出来ることはない。まず魔族が何人でアリシスを襲撃したのかすら分かっていないのだ。
「やっぱり私達のやる事は変わらない。オリジナルリングを探し出して封印する。それだけ!」
 キョウカの力強い言葉に一同が同意した。
  ◇
「あら、あなたから来るなんて珍しい」
「えー?そうかな?ミクリはウルちゃんの事好きだから珍しくなんてないよ!」
 リベイアの街を離れたウルは赤い髪の女の気配に気がついた。ヴァンパイアのミクリだ。
「それで、何か用事でも?」
「うん!ライヤ君に会ったんだよね!?元気そうだった!?死んでない!?」
「ああ、ライヤ・アラタね」
 そういえば倒れているライヤにウルは見向きもせずに帰ってきてしまった。まああの場では殴りかかっても起きなかっただろうが。
「どうしてそんなにあの子に執着するの?あなたなら他にもいい男が」
「いないよ」
 ミクリはいつもの楽しそうな声だが、その声は少し違う。
「私の王様はライヤ君だけ。ライヤ君以外とツガイ?になるつもりは一切ないよ」
「そう、カイも大変ね」
「え!?なんでそこでカイの心配をするの!?教えて教えてー!」
 ミクリは目を輝かせてウルに抱きついてくる。正直鬱陶しい。どうしてこの様な少女が作戦の最重要人物なのだろうか。そうでなかったら簡単に殺していたのに。
「酷いなー。ミクリを殺さないでよー!そ・れ・に!ミクリは簡単には死なないよ!ウルちゃんもそれは分かってるよね!?」
「ええ、そうね。だからこそ腹が立つわ」
「腹が、立つ?ウルちゃんのお腹って大変なんだね」
 本当に殺してしまいたい。ウルは心底そう思った。
「でも!やっぱりもう待ちたくない!」
「え?」
 ミクリは空に両手を掲げて楽しげに笑う。
「私はもう待ちぼうけしたくないのです!なのでぇー!私からライヤ君に会いに行くーー!!」
 満面の笑みを浮かべるミクリの首にはアクセサリーとなっている美しい指輪が光っていた。
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