44 / 81
2章 冒険の仲間
44話 協力者
しおりを挟む人工迷宮の最奥。冒険者のチームと盗賊団との決闘が終わったその場所に本来は聞こえないはずの拍手の音が鳴り響く。
「なっ!誰!?」
その場にいる中で唯一体を動かせるキョウカが警戒しながら音の出ごころを見る。
「五つめのオリジナルリングの回収おめでとう。キョウカ・アリシス」
「あんたは!ウルとか言うギルド長!」
そこにいたのは迷宮に入る前に出会ったウルだった。
「どうやってここに。いや、何しにここに来た訳?」
「おいおい、そんなに警戒しないでくれよ。私はただ君達に祝福を言いにきただけだよ」
「祝福?」
「ええ。さっき言ったでしょう、おめでとうって」
ウルは不吉な笑顔を見せながらそう言い放つ。その言葉に偽りはない様に思えるが、どうにもそれだけではない様に思えてならない。
「五つめのオリジナルリングって言ったね。あんたこの迷宮にオリジナルリングを持ったローズがいる事を知ってたのね。しかも私達の事も」
「ああ勿論。だって、その女に欲望の指輪を授けたのは私だからね」
「はっ?」
ウルから返ってきた言葉は想定外のものだった。ウルが授けた?オリジナルリングを?
「キョウカ、こいつって」
シルの言いたいことは分かる。普通ただのギルド長がオリジナルリングを持つ訳がない。つまり。
「君達の思っている通りさ。私はギルド長にして、君の故郷を滅ぼした魔族の協力者だよ」
想像してはいたが驚きの言葉だった。まさか魔族に協力者がいるなんて。
「何で魔族に協力なんてしてる訳?魔族の目的は何!?どうしてオリジナルリングを奪ったの!?適性を持つ人を見つけて送り込んで、何がしたい訳!?」
「こらこら。一度にそんなに質問されても答えられないよ。まあ、答えるつもりもないんだけど」
キョウカがウルを睨むがウルは全く気にするつもりは無いようだ。
「待てよウル」
「おや、何かなフィン」
フィンが反動により起こせない体はそのままにウルに問いかける。
「お前が魔族の協力者なのは分かった。なんで協力してるのかも何となく分かる。だがこれだけは教えてくれ」
フィンの言葉にウルは一瞬だけ凄く冷たい視線を送ったが、それ以外は何も言わない。それを肯定と取ったフィンは疑問を口にする。
「お前は、いつから魔族の協力者なんだ?俺と一緒に冒険してたお前は全部嘘だったのか?」
「え?一緒に冒険!?」
フィンは昔、本当に短い時間ではあったがウルと冒険を共にしたことがあるのだ。
「さて、いつからだったかな」
ウルはフィンの質問に曖昧に答えて迷宮の奥へと進んでいく。キョウカはウルを油断なく見つめていつでも襲撃できる様に準備するが、攻撃はしない。勝てないと分かっているからだ。
「いい判断だ。今の私に敵意はないから、攻撃なんかして私を怒らせない方がいい」
ウルの力は恐らくフィンよりも上。ライヤとフィンが同時にかかって倒せるかどうかといった所だろう。そんな相手にキョウカ一人で勝てる訳がない。
「本当におめでとうとか言う為だけにここに来た訳?自分が魔族の協力者だって明かして、本当に目的はそれだけ?」
「うーん。正直言って自分でも分からないんだ。なんで私が自らここに足を踏み入れたのか」
これまで誤魔化すような事しか言わなかったウルが本当に分からない様に首を傾げる。
「分からねえのかよ。俺は何となく分かるぜ」
「へえ。それは興味深い。言ってみなよ」
フィンは少し笑った後に答えた。
「お前は俺たちに興味を持ったんだ。だから危険を犯してでも俺たちの様子を見る為にここに来た。まあ、お前に取っては危険を犯してって程でもないのかも知れないがな」
フィンの答えはウルにとっては想定外の答えだった様で少し固まる。
「それだけ?本当にそれだけの理由で私はここに来たのかい?」
「ああ、多分な。お前は昔から、自分が興味を持った事以外には一才関心がなくて、興味を持ったらとことんやるタイプの変な奴だったからな」
ウルは何も言わずに考え込んで、少しだけ表情を和らげた。
「じゃあ私は行くよ。この人工迷宮は行きは怖くて帰りはよいよいだから、じゃあね」
「は?それどういう」
キョウカの言葉に耳を貸さずにウルは迷宮の奥へと進み壁に手を翳す。すると壁が壊れて大きなエレベーターの様な物があるのが分かった。
「おいおい。もうちょっと雰囲気を大事にしようぜ?」
「じゃあね、また会おう。次も、私を楽しませてくれよ」
ウルはそう言い残しエレベーターの中へと消えていった。
「カッコいい去り方とは言えねえな」
「うん」
フィンとシルが妙にカッコ悪い去り方をしたウルに何とも言えない顔をするがキョウカだけは一人深刻な顔をしていた。
◇
「ん、ここは」
「お兄様!お兄様が起きました!お姉様ー!お兄様がー!」
「分かった分かった!聞こえてるから!」
ライヤが目を覚まして見たのは昨日一度見た天井。リベイアの宿屋だ。
「キョウカ!無事か!?」
意識がはっきりしてきてからライヤはナズナを優しく抱えて勢い良く飛び起きる。
「いっ!ててて」
「無理しちゃダメですよお兄様」
「大丈夫だって。ナズナちゃんとフィンのお陰でこの通り無事だよ。更に欲望の指輪も回収済み!」
キョウカはライヤに封印してある精神の指輪と欲望の指輪を見せる。ライヤが心配していたのは指輪ではなくキョウカの安否だったのだが、それも大丈夫そうだ。
「起きて早々悪いが伝えたい事がある。お前が倒れた後の話だ」
フィンの言葉にライヤは無言で頷く。そしてフィンはウルの事をライヤに話した。
「そんな、ウルさんが魔族の協力者?」
ライヤはウルに恩を感じていたのかキョウカよりも大きなショックを受けている様だった。
「あの、それで盗賊団の人達はどうなったんですか?」
「ああ。地上に上がったらすぐ様連行されていったぜ。多分ウルの差金だろうな」
エレベーターから降りたら直ぐ様多くの警官に囲まれたのはとても心臓に悪かった。地上に上がる前に欲望の指輪を回収しておいて本当に良かったとキョウカは思う。
「とにかくウルさんが悪いやつなのは分かった。でも、だからって今対処できる事って無いよな?」
「残念ながらね」
ウルが魔族の協力者である事が分かっても、それ以外に出来ることはない。まず魔族が何人でアリシスを襲撃したのかすら分かっていないのだ。
「やっぱり私達のやる事は変わらない。オリジナルリングを探し出して封印する。それだけ!」
キョウカの力強い言葉に一同が同意した。
◇
「あら、あなたから来るなんて珍しい」
「えー?そうかな?ミクリはウルちゃんの事好きだから珍しくなんてないよ!」
リベイアの街を離れたウルは赤い髪の女の気配に気がついた。ヴァンパイアのミクリだ。
「それで、何か用事でも?」
「うん!ライヤ君に会ったんだよね!?元気そうだった!?死んでない!?」
「ああ、ライヤ・アラタね」
そういえば倒れているライヤにウルは見向きもせずに帰ってきてしまった。まああの場では殴りかかっても起きなかっただろうが。
「どうしてそんなにあの子に執着するの?あなたなら他にもいい男が」
「いないよ」
ミクリはいつもの楽しそうな声だが、その声は少し違う。
「私の王様はライヤ君だけ。ライヤ君以外とツガイ?になるつもりは一切ないよ」
「そう、カイも大変ね」
「え!?なんでそこでカイの心配をするの!?教えて教えてー!」
ミクリは目を輝かせてウルに抱きついてくる。正直鬱陶しい。どうしてこの様な少女が作戦の最重要人物なのだろうか。そうでなかったら簡単に殺していたのに。
「酷いなー。ミクリを殺さないでよー!そ・れ・に!ミクリは簡単には死なないよ!ウルちゃんもそれは分かってるよね!?」
「ええ、そうね。だからこそ腹が立つわ」
「腹が、立つ?ウルちゃんのお腹って大変なんだね」
本当に殺してしまいたい。ウルは心底そう思った。
「でも!やっぱりもう待ちたくない!」
「え?」
ミクリは空に両手を掲げて楽しげに笑う。
「私はもう待ちぼうけしたくないのです!なのでぇー!私からライヤ君に会いに行くーー!!」
満面の笑みを浮かべるミクリの首にはアクセサリーとなっている美しい指輪が光っていた。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる