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藤丸セブン

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3章 血液城

46話 ヴァンパイア

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「時間ないんだっつーの!!なんで寄り道なんかしちゃってるのさ!!」
「それキョウカが言うか!?」
 大食い大会が終わり、キョウカが肉を食べたいと駄々を捏ねたのでキョウカが肉を食べている間魔道具店で買い物をしていたライヤが怒られた。解せぬ。
「まあまあお姉様。急がなくてはならないのはその通りですが、急ぎ過ぎて体調などを崩してしまったら本末転倒です」
「ナズナちゃんの言う通りだぜ。それに役に立つ魔道具買ってきたんだろ?」
「それは勿論!」
 ライヤがフィンの発言に目を輝かせて買ってきた魔道具の説明をし始める。
「お、おう」
「それでこの魔道具はなんとな!」
「それ魔道車出した後でいいでしょ!!さっさと魔道車取り出して出発するよ!」
「いや、ここまだ街中だぞ」
 魔道車はなかなかの大きさがあるし物珍しさから集まってくる人もいる可能性がある。できる限り目立つのは避けたいし面倒ごとは更に控えていきたい。
「それよりキョウカ!これ持っとけよ」
「何これ」
 ライヤがキョウカに直径七センチ厚さ五センチ程度の板を渡した。
「ハッシンキっていう魔道具なんだってよ。五万イース以上買い物した人にプレゼントしてるんだってよ」
 特殊な板が特殊な電波を発して別にあるレーダーに反応する。例えば板を持った人が迷子になったとしてもこのレーダーがあればどこにいるか直ぐに分かるというものだ。
「いや、要らないし」
「え!?だってこのパーティで一番大切なのはキョウカだろ!?だからキョウカが持ってた方が」
「第一私達常に一緒に動いてるんだから逸れないでしょうが」
 つい先程別行動をしていたがそれは黙っておこう。今のキョウカは機嫌が悪い。
「お兄様!私にそのレーダー見せてください!」
「おっ!興味あるか!?いいぞいいぞ!!」
 キョウカに軽く流されたライヤが少し拗ねる。その様子を見てナズナがフォローに入るとライヤはすぐ様笑顔を浮かべる。単純な男である。
「凄いですねー!」
「そうだろそうだろー!」
 完全に復活したライヤはナズナに魔道具の説明を始める。
「ちょっとライヤ!そろそろ一目もない場所まで出たし魔道車」
「ライヤくーーーん!!!」
 キョウカの言葉に被せる様に大きな声が響く。
「ん?」
 ライヤが声の方向を見るとそこには笑顔でライヤに手を振る少女がいた。
「シオンじゃないか!久しぶりだな!」
 シオンはまだフィンと会う前、ゾンビと化した人々を救って欲しいと言う依頼を出してきた人だ。
「えへへー!久しぶりー!!」
 シオンに手を振り返すライヤにシオンは更に笑顔になりライヤに飛びつく。そして思い切り抱きついた。
「うおっ!」
「えへへへへへー!」
 あまりの事にライヤは驚くがシオンが落ちない様にしっかり受け止めた。
「シオンさんってこんなキャラでしたっけ?もっと落ち着いた人だった様な気がしますけど」
「それは俺も思ったけどよ」
 もしかしたら初めて会った時は大変な事態だったので焦っていたけれど元々はこんな性格だったのかもしれない。
「それよりなんでこんなところに?村の人達も近くにいるのか?」
「ライヤくんに会いたかったから!」
 笑顔で恥ずかしい事を言うシオンにライヤが動揺する。
「いやそれにしても性格が全然違うな。もしかしてウルさんみたいな感じか」
「おーいライヤ。そろそろ俺にもこの子の事教えろよ」
 いつまでもライヤに抱きついたままのシオンにフィンが近づいて言う。
「ん?」
 距離を縮めたフィンは何か違和感に気がついた。フィンはこの少女を知らない。けれど、どこかであった気がする。
「ねえライヤくん!お願いがあるんだけど!」
「え!?マジかよ。えっと俺達今急いでてさ」
「大丈夫!ライヤくんにだけのお願いだから!」
 目を輝かせて話すシオンの様子を見るに断ることは出来なさそうだ。
「とりあえず話だけでも聞くか」
「やった!じゃあね!私をライヤくんのお嫁さんにして欲しいの!!」
「はっ?」
 笑顔でそう言うとシオンはライヤの首元に口を近づける。
「えっ、ちょっ。まさかっ!」
「ライヤ!その女から離れろ!!」
 フィンは躊躇わず歪曲の指輪を発動。ライヤとシオンの間に歪みを生じさせて無理やり引き離す。
「ぐえっ!フィンさん!?何もここまでしなくても」
「馬鹿野郎!あいつは!人間じゃねえ!!」
 フィンが感じた違和感。近づいた時に感じた凄まじいオーラと血の匂い。この様な雰囲気を醸し出していた女をフィンは一人だけ知っていた。
「お前、何者だ?」
 フィンの突然の攻撃にシオンは無傷のまま地面に立っている。そんなことがただの村娘に出来るわけがない。
「バレちゃったか。バレちゃったら仕方ないよね!自己紹介しまーす!!」
 シオン、いや、謎の少女は本来黒かった髪の毛を真っ赤に変えて、背中から翼、口には立派な牙を生やす。そして空を飛んで挨拶をした。
「私はヴァンパイアのミクリ!種族的にはヴァンパイアクイーンっていうの!ヴァンパイアのお姫様だよ!!」
「ヴァンパイア!?つまり魔族って事!?」
 キョウカがボイスを呼び出してフィンは斧を構える。そしてナズナも戦闘体制に入るが、ライヤは唖然としていた。
「シオンがヴァンパイア?って事はあの時の事件はなんだったんだ?もしかしてお前がやったのか!?」
「ん?うん、そうだよ。それに私はそんな名前じゃなくてミクリ!そんな変な名前で呼んじゃ嫌!」
「ライヤ!そのヴァンパイアは多分前あった子と違う!ヴァンパイアクイーンは血を吸った人間に擬態する事が出来るんだ!だから多分」
 シルの言葉にライヤは驚愕する。つまり本物のシオンは。
「うん?もしかしてさっきまでの依代の話してる?依代ならライヤくんと初めて会った時から死んでるから安心して!」
 何が安心、なのだろうか。確かにシオンがミクリだったというのなら、ライヤはシオンという少女と話したことどころか会ったことすらない事になる。しかし、そんなもの全く持って意味はない。
「待て!それなら今村はどうなってる!?」
 村の人ならシオンがいない事に気がつく筈。そして、気がついてしまったら。
「みんな殺してきた!出来ることならしっかりお食事にしたかったんだけど、まあ仕方ないよね!」
 先程から何を言うにしてもミクリは笑顔のままだ。その笑顔が狂人感を醸し出す。ライヤは今までよりとても大きな恐怖を感じていることが分かった。
「そいつは俺がこいつを貰った時も近くにいたんだ!歪曲の指輪の持ち主候補を殺したのもこいつだ!」
 フィンの言葉で更にライヤの震えは強くなる。一体この少女は何人もの人間を殺してきたのだろう。怖い。だが。
「許せねえ」
 恐怖よりともっと感じた感情があった。怒りだ。笑顔で人を殺して、楽しんでいる様な存在を野放しにすることなど絶対にできない。ましてや相手が魔族であるというのなら尚更だ。
「ここで終わらせてやる!」
 ライヤが怒りに任せて雷鳴の指輪を発動させて稲妻を放出する。広範囲高威力の稲妻をミクリは不思議そうな顔をして回避する。
「ん?何で攻撃してくるの?」
「っ!」
 ミクリの疑問にライヤの稲妻は更に威力と範囲を広げる。
「ライヤ!落ち着け!」
「馬鹿ライヤ!周り見ろっての!」
 ライヤの稲妻はミクリを捉えるため凄まじい範囲に広がっていくが、周りが見えていない。ミクリだけではなくキョウカやフィン達の元へも雷が降っている。
「ダメだ!怒りで我を忘れてやがる!」
「私に任せてください!雷に強い魔獣に変化して」
「させないよ」
 ナズナが変化の指輪を発動させようとした瞬間、空から男が奇襲を仕掛けてきた。フィンがナズナを咄嗟に庇い男の攻撃を受け止める。
「てめえはあの時の」
「こんにちは。歪曲の指輪は使いこなせているみたいだね。あまり多くは使用できない様だけど」
 その男はフィンが指輪を手に入れる時その場にいたヴァンパイア。
「僕はカイ。ミクリの兄でありお目付役さ」
「ほう。だったらてめえのとこの我儘少女をなんとかしろよ」
「僕はミクリの自由に従う。ミクリの決定は絶対だ。故に」
 カイは真っ赤な剣を取り出すとフィンの体を貫いた。
「がっ!はっ!」
「ミクリの邪魔はさせない」
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