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3章 血液城
47話 吸血鬼へ
しおりを挟む「うおおおおお!!!」
「アッハハハハハハハ!楽しい~!」
怒りで我を忘れたライヤが後先など一切考えず雷を放出する。その容赦のない雷をミクリは笑いながら軽快なステップを踏む様に躱していく。
「くっそ!なんで当たらねぇ!?」
「えー。だって動きが単調すぎるもん!それくらい今のライヤ君ならわかる筈だよ!」
ライヤの雷を躱すことしかしなかったミクリが地面を強く踏み込んでライヤの元へ駆け出す。
「早っ!」
「そりゃぁー!」
どこか力の抜ける様な掛け声でミクリがライヤの腹に蹴りを入れる。
「がっ!」
しかしその一撃はライヤが今まで受けたどんな攻撃よりも強い衝撃をライヤに与えた。蹴りをまともに食らったライヤは腹と口から大量の血液を吐くと目にも止まらぬ速度で吹き飛ばされる。
「あ!やりすぎちゃった!えへへ。失敗失敗」
「まっ、マジ、かよ」
なんとか立ちあがろうと力を入れるが、たった一撃の蹴りのせいでライヤは立ち上がる事すら出来ない。
「大丈夫?ごめんね、今度からはもっと手加減するから」
「ふっ、ざけんな!」
ライヤは収納の指輪から回復ポーションを取り出し自分の体に。するとライヤの傷はみるみると回復していく。
「おお!やるね!」
「お前は、何が目的なんだ?」
「へ?目的?」
ライヤの質問にミクリは首を傾げる。
「あの村を滅ぼした理由、変装してまで俺に近づいた理由、人を殺す理由!この三つを答えろ」
「おー!」
殺意に満ちた顔でミクリを睨みつけるライヤとは対照的に楽しそうにミクリは手をポンと叩く。
「ライヤ君と結婚する為だよ!」
「・・・は?」
「変装したのはいきなりヴァンパイアの姿で会ったらダメーっ!てお兄ちゃんに言われたから!」
ミクリは表情を一切変える事なくライヤの質問に答えていく。
「村を滅ぼしたのはライヤ君を見れて、もうこの人達いらないなーって思ったから!あとお腹空いたから!」
お腹が空いた?そんな理由であの人達は死んだのか。
「人を殺すのも同じ理由だね!ライヤ君もお腹空いたら豚さんとか牛さん食べるよね?それと一緒だよー!」
「そんな、そんな理由で!人を殺したのか!?」
「うん。あれ?ライヤ君怒ってる?私怒られる様な事したかな?」
「てめぇぇ!!」
叫ぶと同時に雷鳴の指輪を発動。高電圧の雷がミクリに襲い掛かる。
「さっきも言ったよね?動きが単調だって」
並の魔獣では反応すら出来ないような速度での攻撃をものともせずにミクリは回避して笑う。
「分かってるよ、忠告ありがとな!」
「あっ」
しかしライヤの目的は雷を当てる事ではない。雷によってミクリの動きを制限する事。逃げられる場所は一点のみ。ライヤはその一点に向けて自分が走り込んでいた。
「あー。これは防御間に合わないや」
「雷鳴突き!!!」
自らの足に電撃を纏い目にも止まらぬ速さで駆け抜ける。そして全力の雷を纏ったライヤの剣がミクリの心臓を貫いた。
「はぁ!はぁ!はぁ!お前は、ここで止めないと、許してくれ」
限界を越えるほどの電撃を纏ませた剣で心臓を貫いたのだ。幾らヴァンパイアと言えど死ぬだろう。ライヤは人を殺した罪悪感に押しつぶされそうになるが、このヴァンパイアを野放しにする訳にはいかない。
「うん。許してあげる」
「・・・は?」
驚愕した。電撃を纏った剣に心臓を貫かれて生きているなどあり得ない。だが、ミクリは笑って剣を握ったままのライヤを抱きしめる。
「この、やろっ!離せ!」
「やーだ。えへへー。ねえ知ってるライヤ君。この体制の事だいしゅきほーるど?って言うんだって」
ライヤは自分の腰の辺りに足を回して逃げられない様にしてくるミクリを何とか引き離そうとする。しかし、ミクリはびくともしない。
「それで、そろそろ返事を聞かせて欲しいな」
「へ、返事、だと?」
「うん!」
ミクリは笑顔のまま威圧感のある声を放つ。
「ライヤ君、私をお嫁さんにしてくれる?」
その声には殺意こそ込められてはいないもののかなりの恐怖と絶望をライヤに感じさせた。
「・・・」
だが。ライヤの答えは一つだ。
「断る」
「そっか。じゃあ、無理矢理結婚するね」
ライヤの答えはミクリにとっては想定済みの回答だ。寧ろここで結婚するなどと言おうものならここで殺してしまっても構わないとまで考えていたのだ。
「やっぱり、私はライヤ君が好き。ライヤ君には、是が非でも私の旦那さんになってもらうね」
ミクリは言葉をいい終わると口を大きく開けてライヤの首筋に噛み付いた。
「がっ!」
吸血鬼に血を吸われるとと吸血鬼になる。子供でも知っている有名な話だ。
「くっ、ァァァァ!」
しかし事実は少し違う。吸血鬼に血を吸われると吸血鬼になるのではない。吸血鬼に血を入れられると吸血鬼になるのだ。そして吸血鬼は血を食事とはしない。主食となる食べ物は人間の肉。人間以外の肉を食べることも出来るが、一般的には人間の肉を好む。
「がっ!ァァァァ!!!」
ライヤの人間の体の中にミクリの吸血鬼の血が流れ込む。人間の体では吸血鬼の血は強すぎて肉体を保つ事が出来ない。故に吸血鬼の血に肉体が耐えられる様に、人間は吸血鬼へと変化するのだ。
「ハッ!ガッ!ァァァァ!!」
「お、なかなか抵抗するね。それじゃあ、もっと私を感じさせてあげるっ!!」
一度口を離したミクリは勢いをつけて再びライヤの首筋に噛み付く。
「っ!」
先程の倍近くの吸血鬼の血液がライヤの体へと侵入する。アツイ。イタイ。ツライ。クルシイ。シ、ヌ。
「オオオオオオオ!!!」
「わっ!」
ライヤは最後の力を振り絞って全身から放電する。ミクリは即座にライヤの体から離れた故にダメージはないが、引き離すことには成功した。
「曲がりやがれっ!!」
「させないっ!」
ライヤとミクリが離れた瞬間にミクリの近くに歪みが現れる。そしてその空間が潰される。だがカイがミクリを助けに入った事によりミクリはその空間から脱出していた。
「フィ、さ、」
「ライヤ!無事っ!?」
無事か、と聞こうとしたフィンはライヤの姿を見て言葉に詰まる。ライヤの金色の髪は一部が血のように赤くなっており、背中には片翼ながら漆黒の翼が、口元の歯は尖った牙へと変わっていた。
「ぐっ!」
フィンの姿を見たライヤに突然の欲求が襲い掛かった。人の血を吸いたい。肉が食べたい。
「そんな、の、したく、ね、え」
突然の欲求にライヤは全力で争う。吸血鬼になど、なってたまるか。
「もうちょっと我慢してろ!今あいつ殺して元に戻してやる!」
「ミクリ、撤退するよ」
「はーい」
翼を広げて空を飛ぶ体制を作っる二人の吸血鬼。このままでは逃げられる。
「させません!」
フィンの後ろから飛び出したナズナは手のひらいっぱいの小石を投げつける。そして指輪を発動。
「変化!!」
「無駄!」
小さな小石が巨大な岩へと変わる瞬間、岩がカイに切り裂かれる。
「な、ずな」
「さあ、帰ったら結婚式を挙げようね」
「なっ、しまっ!」
逃げながらミクリが作った血液の縄にライヤが縛り付けられ宙へと飛ぶ。
「ボイス!」
「変化!」
ライヤを連れて行かせない様にボイスが騒音歌を、ナズナが縄を変化させようとするがカイの血液の大きな盾に止められる。
「ライヤァァァァ!!」
「キョウ、カ」
悲しみと怒りが入り混じった顔で叫ぶキョウカの姿を最後に、ライヤは意識を失った。
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