original ring

藤丸セブン

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3章 血液城

52話 メイドVS自称妹

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 血液城に入って数分間走りづづけたが一向に敵の姿は見えない。
「おいおい、なんか拍子抜けだな」
「こら、油断しない!フィンが噂したせいで生体反応を捉えちゃったよ。あの扉の奥だ!」
 シルのお叱りにフィンは頭を少し掻いて走りながら斧に手をかけながら走り続ける。
「行くぞ!準備はいいな!?」
「うん!」
「はい!」
 フィンが少し速度を上げて扉に突進して無理矢理扉を開ける。フィンの突撃の威力により扉は吹き飛んで部屋の中に落ちた。
「あら、その扉は直したばかりだというのに。酷い事するわね」
「初めて見る顔だな。まあ、一目見て吸血鬼だと分かるのはありがたい話だな」
 部屋の中のソファに腰を掛けて湯呑みで赤い飲み物を飲み干したルゥにフィンが不敵な笑みを浮かべる。
「さて、自己紹介をしないとね。私はルゥ。この血液城でメイドをさせてもらってるわ。よろしくね、王様の元お仲間さん達」
 王様、とは恐らくライヤの事だろう。この吸血鬼は既にライヤが吸血鬼の王となる事を確信している様だ。
「自己紹介なんて要らねえよ。さっさと殺りあおうぜ!」
「うふふ、そうね」
 右手で斧、左手で棍棒を握ったフィンが斧をルゥに突きつける。ルゥもそれに応える様にソファから立ち上がりファイティグポーズをとる。
「待ってくださいフィンさん。ここは私に任せて貰えませんか?」
「ナズナちゃんに?でもこいつはかなり強いぜ?」
「分かっています。でも、あの時の男性の吸血鬼は彼女よりもっと強いでしょう?」
 ナズナの言いたいことは分かる。しかしまだナズナは成長過程。今の状態のナズナでは。
「・・・いや、心配は無用か」
 フィンを見るナズナの目は覚悟と自信に満ち溢れている。今のナズナならば、勝機は充分にある。
「頼んだぜナズナちゃん」
「はい。フィンさんとシルさんこそ、お姉様をお願いします」
 ナズナの言葉に無言で頷きフィンは武器を鞘に収めて走り出す。
「ナズナちゃん!」
 キョウカも走り出すフィンに着いて行き足を踏み出すが、部屋を出る前に振り返る。
「負けたら許さないから」
「っ!はい!」
 ナズナの返事を聞きキョウカは嬉しそうに頷き、フィンの後を追う。
「あら、美しい友情ね。王子の言った貴方達の強さが少し分かった」
「何の事かは分かりませんが、やる事は一つ。貴方を倒してお兄様を迎えに行かせてもらいます」
 ナズナとルゥ。二人が睨み合い、ナズナは息を長く吐きルゥは笑う。
「私を倒す、ね。よくもまあそんな事言えるわね。あなた、私に怯えているじゃない」
 ルゥの思わぬ発言にナズナは動揺をほんの少しだけ耳元に見せた。
「分かっているのでしょう?私と貴方の実力の差を。獣の本能ってやつかしら?それを分かっていながら、何故私に挑めるの?」
「当然お兄様を助ける為です」
「助ける、ね。ねえ、あなたは王様の何なの?」
 ルゥの疑問にナズナは困惑する。ナズナがライヤにとっての何なのか。そんな事少しも考えていなかった。
「仲間?それとも、恋人とでも言うつもり?人間が命の危機に瀕してまで他人を助ける理由なんてその程度しか思いつかないのだけれど」
「そう、ですね。人間は薄情で、自分の利益になる事以外はしないし、自分の利益になるならどんな非道な事でもする」
 そう。人間は非道だ。人間は自分中心の生き物だ。しかし。
「それでも、誰よりも他人に優しく出来る人もいます」
 自分になんの利益がなくとも、命の危険に瀕しても、赤の他人であり、知り合ったばかりの人の為に命を懸けられる。そんな人間をナズナは知っている。
「私がお兄様の何なのか。その答えをお教えしましょう」
 ナズナがライヤの何なのか。そんな事は考えるまでもなかった。どんな状況でも、どの様な相手であろうと、必ず救いの手を差し出す。そんな人に憧れて、そんな人の役に立ちたいと思った。ナズナは。
「私は!お兄様の妹です!!!」
 ナズナは大きな声で叫んで足を強く踏み締める。
「変化!」
 ナズナの変化の指輪が光りナズナの体を包む。
「ジェットラビット!」
「面白い子ね、かかってきなさい!」
 ナズナの姿は吊り目で二足歩行の魔獣、ジェットラビットへと変わる。そして姿が変わると共に全力で踏み込みルゥへと突進して行く。
「やぁぁぁ!!」
 地面を強く踏み締めてルゥに強力な蹴りをぶつける。速度は充分。並の男程度なら簡単に吹き飛ぶ威力の一撃だ。
「ダメじゃない。真正面から飛びかかってくるだけだなんて」
 しかし、ルゥはその蹴りを片手で受け止めていた。ルゥの手元には鋼鉄で出来ているグローブを装着していた。
「くっ!」
「鋼鉄を蹴った気分はどう?さて、次はこっちの番!」
 ナズナを止めた右手でナズナの足を掴み左腕でナズナを殴る。
「変化!イリュージョンバット!」
「あら」
 しかしナズナも簡単にはやらせない。ジェットラビットの姿を幻覚を見せるコウモリ、イリュージョンバットへと姿を変えてパンチを体を小さくして回避した。
「変化!アイスイーグル!」
「氷っ!?」
 回避と同時に掴まれていた腕からも逃れたナズナは真っ青な鷲に変化。そして翼を大きくはためかせて氷つきそうな程冷たい風をおこす。
「なるほど、凍えたら私の動きが悪くなると」
 ナズナの狙いはルゥの動きを鈍らせる事。極寒の地でなら人の体は上手く機能しない。
「でも、甘いわ」
 しかし、それは人の話。ルゥは自らの血を操作して体内温度を上げる。
「そんなっ」
「いい手だったわよ?でも、あまり私を舐めないことね」
 軽くジャンプしただけで高い天井ギリギリを飛んでいるナズナの元まで飛び、鷲の胴体にアッパーを繰り出す。
「きゃぁあ!!」
 咄嗟に動いて直撃は避けられたが損傷は大きい。脇腹への重い打撃はナズナに激痛を与え、変化を解除させた。
「休む暇はないわよ」
 ナズナの変化が解けた今がチャンスとばかりにルゥが地面を蹴り地に落ちたナズナに駆け出す。
「さっきの言葉、お返しします。あまり私を舐めないで下さい!」
「がっ!」
 ナズナが指輪を発動。すると何もない所から突然大きな斧が振り下ろされてルゥに直撃した。
「アックストラップ。お兄様が使用していた魔道具の一つです。まあ、本物の様にいっぱいは出せませんでしたが」
「へえ、驚いた。そういえば変化の指輪は自分の姿だけを変化させる訳じゃなかったわね」
 ナズナが先程変化させたのは地面に落ちていたフィンが壊した扉の変化だ。変化の指輪の能力ならば自分よりもレベルが高い人間以外は使用者の思うままに姿を変えられる。しかしそれなりに体力を使うので今はもう元の扉へと戻っている。
「厄介。早めに始末しなくちゃね!!」
「変化の指輪の能力はそれだけじゃありません!」
 ナズナは袋に大量に入れていた石を何個か取り出してルゥに投げつける。
「変化!バスターベアー!!」
「あら、怖い指輪ね!!」
 投げつけた石が全て巨大な熊となりルゥに襲い掛かる。しかしルゥは一陣を切って襲ってきた二体のバスターベアーを殴り飛ばす。
「さあいらっしゃい!」
 その後またしても二体のバスターベアーを殴り、強い衝撃を受けたバスターベアーは元の石へと姿を戻す。しかしまだバスターベアーは残っている。
「無駄、あら?」
 またしても襲いかかってくるバスターベアーに拳を伸ばすがバスターベアーはそれを回避、ルゥへ巨大な爪を振り下ろした。
「回避出来る知性があるなんて。でも残念。私の血を硬化させれば砕けるのはあなたの爪よ」
 ルゥの体に当たった爪は即座に砕け散り、ルゥが殴るまでもなくバスターベアーの変化が解ける。
「無機物を魔獣に変えるだけでなく知性まで、いいえ。自分の思うがままに操れる様になるなんてね」
 先程のバスターベアーの回避はバスターベアーの意思ではない。ナズナがバスターベアーを動かしたのだ。見た目こそは魔獣だが元々これはただの石ころ。ただの石ころが自我を持ったりはしない。
「だとしても強力な能力だわ。雷鳴の指輪や歪曲の指輪の様に分かりやすく恐ろしくはないけれど、使い方次第ではどのオリジナルリングよりも厄介。やるわね」
「それを初見で見抜くあなたもかなりの化け物ですよ。でも、変化の指輪の強さはここからです!必ずあなたはここで倒します!」
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