53 / 81
3章 血液城
53話 ナズナの戦い
しおりを挟む「変化!ジェットラビット!」
「血液操作、硬化」
ナズナが袋に入った小石を大量に投げてその一つ一つをジェットラビットへと変化させていく。そのジェットラビットの群れにルゥは単身で飛び込む。
「無駄よ」
真正面からナズナへ向かって駆けてくるルゥをジェットラビットが何度も蹴りつけるがルゥは無傷。逆に何体かのジェットラビットが石に戻ってしまう。
「変化!」
ルゥがナズナの前に辿り着き拳を振るう。しかしナズナは自らの姿をジェットラビットへと変化させ頭を狙っていた拳を回避。それと同時に石のジェットラビットの群れに紛れた。
「へえ」
拳を躱されたルゥがナズナを探そうとするが石のジェットラビットとナズナの違いは全く分からない。よって、ルゥは硬化を解いて精神を集中させた。
「・・・そこ!」
大量のジェットラビットの中で一つだけ生命があるもの、つまり生きているものの鼓動を聞く。それが出来れば例え視界が見えなくとも敵を倒せる。ルゥは拳を強く唸らせてその衝撃波をナズナへと飛ばした。
「きゃぁぁ!」
「ビンゴ。さあ、畳みかけさせてもらうわ!」
拳の衝撃波と衝突したナズナの姿はジェットラビットからナズナの元の姿へと戻る。と同時に石のジェットラビットも小石へと戻る。この状態ではルゥに確実にやられる。
「まだっ!変化、ポイズンスネーク!」
先程までジェットラビットだった石を今度は紫色で二メートルはあるであろう蛇へと姿を変えさせる。しかしこのポイズンスネーク達が一斉にルゥに襲いかかっても恐らく返り討ちになる。
「ならば、こうです!」
ポイズンスネークはルゥに向かって毒ガスを吐き出した。物理攻撃は硬化で防御、もしくは回避されるので有効ではない。しかし直接的な攻撃ではなければ、毒による内部からの攻撃ならば可能性はある。
「血液操作」
「くっ!ダメですか」
ルゥは毒ガスの中でも同じ様に動き続けて全てのポイズンスネークを石へと戻す。
「無駄よ。吸血鬼に毒は効かない。まあアレンの様な眷属の吸血鬼には効くかもだけど」
「でも、想定内です!」
余裕そうな表情を浮かべるルゥにナズナは小型の手榴弾を投げつける。
「その程度の爆発じゃ私は無傷」
手榴弾はルゥに当たる前に爆発。そして
「っ!あああああ!!」
その爆発によって炎が生じて一瞬にしてルゥの周辺を燃やし尽くした。正確に言うのならば、毒ガスが充満していた場所に。
「ポイズンスネークの毒ガスには火がすぐに燃え広がる性質があるんです」
幾ら血液操作で硬化しようが、毒への耐性があろうが、燃え広がる炎の中で生きていく事は出来ないだろう。ナズナが火炎放射器を変化させて放っても躱されてしまうが、ガスという物を使う事によって見事ルゥを炎の中へと入れることが出来た。
「ありがとうございますお兄様。お兄様のお陰です」
ナズナは大切に読んでいたライヤに買ってもらった本を思い出す。その本の知識がなければポイズンスネークのガスが着火しやすい事など知る由もなかった。変化の指輪は知識を得れば得るほど数えきれない程の戦略を得ることが出来るのだ。
「血液操作」
「なっ!」
ルゥの一言が聞こえたと思うとルゥかは大量の血が噴き出して炎を鎮火させていく。
「なんですかそれ。自分の血液を、雨の様に」
「私も、こんな事したのは初めて、よ」
ルゥの体は炎による火傷が多く見られて、先程の血の雨によってほとんどの血を使用している筈。実際息も荒くなっており、少しふらふらとしている。
「決着、つけるしかないですね」
「ええ、よくもここまで私を傷つけてくれたわね。ただでは済まさないわ。手始めにあなたも私の眷属にしてあげる」
何故ただでは済まないと言っている相手を眷属にしようとしているのかは分からないが、眷属になる訳にはいかない。何より、この吸血鬼はここで絶対に倒さなければいけない。
「変化!アックストラップ!ランストラップ!」
「血液操作、軽量化!」
降り降りてくる数々の斧を回避したルゥは速度はそのままにナズナへと走る。そして、地面から突き出してくる槍に貫かれた。
「ぐっ!」
ランストラップは地面にあって誰かが踏むと槍が飛び出す罠だ。斧の回避だけに意識を向けていると槍に貫かれる。
「その程度っ、じゃ、止まらないわよ!?」
目を見開いてルゥがナズナを睨む。その目からは強大な殺意を感じ、ナズナの体を震わせる。しかしナズナも負ける訳にはいかない。
「望むところです!私もこんなところでは終われません!」
ルゥが地面を蹴りナズナの顔面を殴りつける。ナズナも負けずに自分の体を変化。バスターベアーへと自らの体を変えてルゥを蹴り飛ばす。炎の消化、そして先程のランストラップによる出血。ルゥに残された血は少ない。故に硬化を発動する事が出来ないのだ。ナズナはその事にいち早く気づいていた。
「はぁぁぁぁ!」
「グォォォォ!」
ナズナとルゥ。両者が体の節々から血を流しながら殴り、蹴り、爪で抉り、牙で皮膚を噛みちぎる。二人にもはや理性などない。今行われているのは、獣達による生存競争だ。
「グォォォォォォォォォォ!!」
「ァァァァァァァァァァァァ!」
獣達が最後の一撃と覚悟を決めて避けぶ。吸血鬼は全ての血液を右腕に込めて、タヌキの獣人はその腕に全ての力を合わせて。その結末は。
「・・・は?」
ルゥは呆然とした。何故なら命を賭けた一撃の拳を当てたと思ったらその場には誰もいなかったのだから。しかし、ルゥには確かにバスターベアーが、ナズナが見えていたのだ。
「イリュージョンバット」
「っ!まさかっ!」
ナズナの一言でルゥは気がついた。この戦いが始まってすぐ、ナズナがイリュージョンバットに変化していた事に。その時にいざと言う時にルゥを騙す為の幻覚をルゥの脳内へと送り込んでいたのだ。
「終わりです!!」
変化を解いたナズナがルゥのガラ空きの背中へナイフを突き刺し、肉を抉った。傷口からは大量の血液が流れ、ただでさえ限界に近かったルゥの体はゆっくり前方へと倒れた。
「騙し討ちの様な形になってすみません。私は、絶対にお兄様を守りたい。吸血鬼になんて絶対にさせない。お兄様の為なら、私は非道な獣にもなります」
「ふ、ふふ。非道な獣は、敵に謝罪なんて、しな、い、わ」
ルゥは最後にそう言って、目を閉じた。
「は、あ!はぁ、はぁ、はぁ。ま、ずい。変化の指輪を使いすぎた、」
ナズナは変化の指輪に最高の適性を持っている。故に変化の指輪反動などはいつもは全く気にならないのだが。
「体が限界だと、こんなにしんどいんだ、オリジナルリングの反動」
フィンに聞かれたら怒られてしまいそうな言葉を口にしながらナズナはゆっくりとキョウカの元へと歩き出す。
「お兄様、お姉様」
体からは大量の血が噴き出し、歩くだけで激痛が走る。それでもナズナは止まるわけにはいかない。大切なものがようやく出来たのだ。それを失うなど絶対に嫌だ。
「お、兄、様」
ナズナの意識はそこで途切れた。
◇
「うおっ!なんだこりゃ。丸焦げじゃねえか」
意識が戻ったカゼジロウが部屋に入るとその部屋は火事の後の様な有り様だった。
「凄え事になってたんだな、まっ!オイラの方が凄いが!目が覚めたらあの吸血鬼はいなくなってたが、逃げられる傷じゃねえし、加勢に行かれても一撃で死ぬだろ」
独り言を大声で言いながらカゼジロウが奥へと進もうとすると。
「お、タヌキ発見。生きてるみてえだな」
力尽きて倒れているナズナを猫の様にカゼジロウは掴もうとするが、少し考えて止まる。
「しゃーねえな」
カゼジロウはナズナを出来るだけ優しく背中に乗せると少し速度を落として走り始めた。
「結構倒れちまったし、もうデカブツと女の決着は着いちまったかな?いや!どうせまだ戦ってて苦戦してるんだろう!それならオイラがピンチに現れてヒーローの様に敵を倒してライヤを救うんだ!」
カゼジロウは周囲を確認。ナズナと戦っていた吸血鬼の姿が見えないが、まあよしとしよう。
「待ってろよダチ公!親友のオイラが助けに行くぜ!それまでなんとか人間でいろよ!兄弟!」
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる