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4章 オリジナルリング
63話 検問
しおりを挟む「見えた!あれが王都オリオンリース!!!」
ライヤが魔道車から身を乗り出して叫ぶ。大きな宮殿に教会、そして一番大きな城が視界へと飛び込んでくる。
「こら、危ないからやめろ」
「えー」
「王都も見えてきましたし、ここら辺で歩きにしましょうか?」
魔道車はこの世界ではあまり量産が出来ていない。いわば貴重な魔道具なのだ。その魔道車で王都に行くと騒ぎになってしまう。今騒ぎになられるのは困る。
「お?おい、なんかすげぇ人が並んでんぞ」
魔道車から降りてライヤが魔道車を収納している間にカゼジロウが疑問の声をあげる。カゼジロウが見る方向を向くと確かに王都の正門の前に人の行列が見える。
「検問?前来た時は王都に検問なんてなかったぞ」
「って事は、オリジナルリングを使ってるやつの罠か?」
フィン曰く王都に検問はない。となるとキョウカが王都に来たら直ぐ様見つけられる様にしたのかもしれない。
「いや待てよ。オイラよく分からねえが、王都ってのはこの国で一番でけえ街なんだろ?そんな街で検問を張るなんて幾らオリジナルリング持ちでも出来んのか?」
「出来る。あのオリジナルリングならね」
第八のオリジナルリング、傀儡の指輪。人や物体、魔獣などを指一本で自由自在に操れる指輪。一般的には指一本につき一人、もしくは一つのものを傀儡と出来る。
「傀儡の指輪。なんだが、精神の指輪と似てますね」
「確かにね。でも精神の指輪と傀儡の指輪は似て非なる指輪だよ」
精神の指輪は人の心に侵入して精神を壊し、自分の都合のいい様に作り直す指輪だ。それに比べて傀儡の指輪は人の体を傀儡として操る指輪。
「???なんか違いあるか?」
「おおありだっつーの」
精神の指輪は人の心を変える事が出来る。つまり操りたい人物を自分の味方に出来る。しかし傀儡の指輪は人の心には一才干渉出来ないので味方ではなく道具にしか出来ない。
「例えばライヤが私を殺すようにしたいとする。その場合精神の指輪ではライヤの頭の中では私は明確な敵として映る」
「そうなるとライヤは雷鳴の指輪だけでなく収納の指輪の魔道具も使ってくるし、作戦を立ててキョウカちゃんを殺しにくるだろうな」
「「なるほど」」
「あ?」
検問の順番待ちをしながらキョウカとフィンの解説を聞く。その解説にライヤとナズナは納得の声をあげるがカゼジロウは理解していない様だ。
「でも傀儡の指輪は人を傀儡にすることしか出来ない。つまりライヤは私を殺しにくるけど心はライヤのままだからライヤが全力で抵抗すれば隙が生まれる可能性は充分ある」
「ライヤしか使えない収納の指輪は使いにくいだろうし、最悪ライヤが舌を噛み切って自殺する可能性もある。だから人を操るって分野だけなら精神の指輪の方が上って訳だ」
「「ほほー」」
二人は手をポンと叩き腑抜けた声をあげる。
「つまり今王都には傀儡の指輪の持ち主がいて、そいつが検問の人を操っていると」
「多分。傀儡の指輪は適性さえあれば言う言葉も操れるから」
精神の指輪に比べると少し弱く聞こえたが、やはり恐ろしい指輪だ。警戒するに越した事はない。
「いや、王都に検問なんて一兵士を操った所で出来ねえ。もしかしたらこの国の最高権力者が傀儡化されちまってるかもな」
「嘘、それって国王って事!?」
「バカ声がデカい!」
大きな声を出したキョウカの口元をフィンが優しく塞ぐ。しかしフィンの言うことが正しいなら辻褄が合う。
「まあつまり指輪持ちをぶっ殺して奪えばいいんだろ?楽勝じゃねえか」
「あんたねぇ。傀儡の指輪の怖さは人を傀儡化するだけじゃ無いよ」
傀儡の指輪と精神の指輪の明確な違いは無機物を操れるかどうかだ。精神の指輪では精神のない無機物に対しては当然何も出来ない。しかし傀儡の指輪は無機物も傀儡化出来る。
「つまり?」
「つまり傀儡化してきた建物とかが指一本で動かせるの。例えば、あの教会とかね」
「オイラなら躱せる!」
教会はざっと見積もっても人が二万人程度は入る大きさだ。こんなものを投げつけられたら回避は難しい。
「それに、避けた所に更に同じくらいの建物飛んでくるかも知れねえぞ?」
「あ」
王都の建物はほとんどの建物が通常の街のそれより大きい。こんなものがポンポン飛んできたら確実にあの世行きである。
「次の方どうぞー」
「げ、そんなこと言ってたもう直ぐ俺たちの番だ」
気がついたら検問は直ぐそこまで来ていた。検問が指輪持ちの手先なら下手な事は言えない。
「とりあえず全力で警戒体制を取るぞ。そのかわり敵意を一切出すなよ」
「あ?」
「お前は何も考えなくてもいいよ」
フィンの指示に一同が頷く。カゼジロウは「つまりどう言う事だ!」など叫んでいるが。
「対応はライヤに任せてもいいか?」
「え?なんで?」
「一応この冒険者パーティのリーダーはお前だからだよ」
そういえば冒険者ギルドでパーティ申請をした。その時にはフィンもカゼジロウもいなかったが。
「まあ偶然会って一緒に行動するなんて冒険者じゃあよくある事だ」
「待った!カゼジロウの対応どうするんだ!?こいつ脱獄犯なんだけど!?」
「あ」
フィンが思い出したかのように短い声をあげる。あまりに自然すぎて完全に忘れていた。
「次の方ー」
「ああもう行くしかねえ!」
来るならば来い、という精神でライヤは検問官に向かっていった。
「どのような理由で王都へ?」
「俺達冒険者で、王都の冒険者ギルドを見たくて来ました」
嘘ではない。実際ライヤは王都の冒険者ギルドも見たいと思っている。
「それだけ、ですか?」
「いえ、実は仲間の武器が壊れてしまいまして、武器の新調に。王都の鍛冶屋は他のどの街より種類が多いし性能も高いので!」
フィンが壊れた棍棒と斧を検問官に見せる。今話していることは全て真実だ。ただし、本当の目的は話てはいないが。
「なるほど。どうぞ、お入り下さい」
「へ?」
「どうかなさいました?」
「ああ!いえいえ。失礼しますぅー」
首を傾げる検問官にお辞儀をするとライヤはそそくさと王都へと入る。四人もライヤに続いた。
「なんか、あっさりだったな」
王都へ入った後気になって後ろを振り返る。検問官は冒険者や商人に同じような質問をして王都へと通している。その様子に何も可笑しな箇所はない。
「なんだったんだ?」
「警戒するに越した事はないが、まあ無事王都に入れたならいいんじゃねえか?」
フィンの言う通りだ。何かあると常に警戒していたら逆に怪しい。
「よし、じゃあ」
「移りましょうか!自由行動に!!!」
ナズナの目がキラキラと輝きキョウカを見る。真っ直ぐな瞳があまりにも眩しい。
「分かってる分かってる。はい!じゃあ自由行動開始!」
「「わーい!!!」」
キョウカの言葉にライヤとナズナがはしゃぎながら王都へと走り出していく。
「あ、こら!夕飯までには帰って来なさいよー!」
「「はーい!」」
キョウカに手を振りながら二人は王都をかけていく。その姿はまるで子供の様だ。
「今のセリフ、お母さんっぽかったぜキョウカちゃん」
「まあ、夕飯作るのはさっきガキみてえにはしゃいでた奴なんだけどな」
「うっさい」
小言を言ったカゼジロウをキョウカが軽く殴る。
「てめえ!やろうってのか!?」
「はいはい。俺らも行くぞ」
キョウカに激怒するカゼジロウをフィンが掴み引きずっていく。
「さてと、私はどうしようかな」
そういえばライヤとナズナ、フィンとカゼジロウは王都についたら何をするかを決めていたけれどキョウカは何をするのか一切決めていなかった。
「とりあえず情報収集してみようかな」
情報収集の為聞き込みを。と考えたが、どこに傀儡化させられた人がいるか分からない。迂闊な行動は避けた方がいいかもしれない。
「となると、ご飯か」
ライヤから貰った財布の中は潤ってもいないが何も買えない程少なくもない。昼食代程度にはなるだろう。
「さて、とりあえず歩くか」
何を食べるかを考えながら財布をしまって歩き始めた。
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