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4章 オリジナルリング
67話 コモリ・ヒキメナ
しおりを挟む「おお、これもいいな。でも、こっちの斧も捨て難いな」
「おい、それ何回目のセリフだ?さっさと決めやがれ」
王都の一軒の武具店。その一角でフィンが三本の斧を見ていた。
「そう言うなよ。これから共に戦う相棒を決めるんだぜ?妥協なんて許されねえだろ?」
「そうは言ってももう五件目だぞ!?オイラはもう付き合ってられねえ!帰る!」
「帰るって何処にだよ?」
怒りを露わにして店を出ようとしたカゼジロウの足が止まる。確かに帰る場所もなければ行きたい所もない。
「お前も探せばいいだろ?槍をよ」
「オイラはもう買ったんだよ」
カゼジロウは一軒目の鍛冶屋で即座に槍を購入していた。その槍を今も背中に括り付けているが、フィンは斧選びに夢中だったのでその事に先程気がついた。
「そんな適当に選んだらダメだろうが」
「適当じゃねえ!オイラにはこれしかねえと思って選んだんだよ」
フィンが疑いの目で槍を見るがその槍は確かによく出来ており、速度重視のカゼジロウにピッタリのサイズと切れ味の一品だった。
「おっとこいつは失礼。いい槍じゃねえか」
「だろ」
カゼジロウはドヤ顔で胸を張る。そしてフィンに急かす様な視線を向ける。
「分かったよ。悩んでたけど、こいつに決めたぜ」
フィンが手に取ったのは前まで使っていた斧より少しサイズの大きい物だった。
「うお、こいつはまたでけえ奴を。振り回せんのかそれ?」
「俺を舐めんなよ?この旅でまた一段と成長したんだ。これくらいは余裕よ」
斧が大きくなると必然的に速度は前より遅くなってしまう可能性があるが、今のパーティにはカゼジロウがいる。フィンの攻撃速度という弱点はカゼジロウが補ってくれるだろう。
「よし、斧をこいつにするなら棍棒は二件目のあいつだな。よし行くぞカゼジロウ!」
「この店じゃねえのかよ。ってか二件目って何処だ!?」
会計を済ませにフィンが移動し、カゼジロウは先に店の外に走り出すが、フィンのいう店がわからずに引き返してフィンの後を追った。
◇
「ふう、ぎりぎり買えたな」
「てめぇ!金無さすぎるだろ!マーティはもっと金持ってたぞ!」
「お前らの金は奪った金だろうが」
無事に装備を整えた二人は口喧嘩をしながら街を歩く。行き先は全く決まっていない。
「んで、これからどうする?」
「とりあえずライヤを探そうぜ。オイラ腹減ったからあいつに飯作ってもらう」
「今だと断られそうだが、まあ暇だしいいか」
今頃ライヤは魔道具店でどの魔道具を買うか頭を悩ませている頃だろう。そんな中カゼジロウが行ってご飯を作れと言ってもライヤは断るのは目に見えているのだが。
「あ、ああああの!」
「ん?」
二人が魔道具店に歩き出そうとすると一人の見知らぬ少女が声をかけてきた。
「どうした嬢ちゃん?」
フィンが屈んで少女と目線を合わせようとすると少女は長い茶色の髪を揺らめかせて顔を逸らす。
「おっと、恥ずかしがり屋さんなんだな。そいつは失礼した」
フィンは立ち上がりながら笑う。が、顔を逸らされたと言うのは少しショックだった。
「あ、の。フィン・フレガルドと、カゼジロウですね?」
「え?」
「いかにも!オイラこそが元ゴールデンローズの幹部にして今は正義の味方!カゼジロウさんだ!」
「バカ!」
少女の問いかけに疑問を持ったフィンが少し警戒すると同時にお喋りな連れが余計なことをペラペラと話し始める。
「良かった、じゃあ」
少女はぎこちない笑顔を作りながらそばかすに塗れた顔をフィンに見せる。
「死んでください」
その言葉よりほんの数刻前からフィンは走り出していた。ここは街の一角だ。こんな所で戦闘になったら。
「うおおぉ!?」
カゼジロウが指輪を発動しフィンを掴み少女が立っていた方へと駆ける。
「な、なんだぁ!何が起きた!?」
確かに攻撃されたのは分かった。現にカゼジロウの腕に見覚えのない切り傷が出来ているところを見ると、この少女に攻撃されたのは明確だ。しかし、攻撃の手段が分からなかった。
「怒ったぁ!てめえぶっ飛ばしてやる!」
カゼジロウが槍を手にして少女に突進する。そして
「ごぱっ!?」
少女に辿り着く前に何もない所で悲鳴を上げて止まった。
「何やってんだお前」
「オイラが望んでやってんじゃねえ!ここに何かあって進めねえんだよ!」
「何か?」
半信半疑でフィンがカゼジロウの停まっているところに近づく。
「っ!伏せろ!」
何かの気配を感じてフィンはカゼジロウの頭を下げながら地面に転がる。その後上に何かが通り過ぎた後の風が吹く。
「これ、もしかして!障壁の指輪か!」
「あ!?知ってんのかこの見えない壁!」
第六のオリジナルリング、障壁の指輪。フィンにはキョウカ程オリジナルリングに詳しくないが、幼い頃に凄く憧れた存在だ。よく覚えている。
「え、へへ。正解です。この指輪は私の望む場所に透明な障壁を張る」
「なんで君がオリジナルリングを」
「フヒヒ、その答えは簡単ですよぉ」
少女が気味の悪い笑いをする。すると何もなかった頭から少し歪んだ角が、背中からは歪な形の羽が生えた。
「なっ!魔族!?」
「はいぃ、私はあなた方に滅ぼされた魔族の生き残りの一人、コモリ・ヒキメナと申します」
「一人?」
コモリの自己紹介にフィンは引っかかる。生き残りの一人、と言う事はコモリ以外にも生き残りがいると言う事だ。
「くそ、こんなとこで仕掛けてくるとはな!」
「何言ってやがる!飛んで火に入る財宝達!こいつをぶっ飛ばせば即座に解決だぜ!」
カゼジロウが少し違うことわざを口走りながら槍を振り回してコモリに襲い掛かり、障壁に激突した。
「アホだろ。見えない壁を前にどうやって近づくってんだよ」
「その通りです。貴方達に勝ち目は、ありません」
コモリが障壁の指輪を発動。透明な障壁が無数にフィンとカゼジロウに襲い掛かる。
「うぉぉ!?どうすりゃ良いんだよ!」
「狼狽んな!ただ見えないってだけだ!」
障壁を目で捉える事は出来ない。しかし、そこには確かに障壁があるのだ。ならば。
「気配は感じる!」
フィンが障壁をギリギリの場所で回避する。どうやら襲いかかってくる障壁はそれ程の大きさではない様だ。
「なるほどな。要は木の板がそれなりの速度で飛んできてるのと同じだと!」
「なんでそんな例えになったのかは知らんが、まあその通りだ!」
「ハハハ!それなら避けるのは簡単だぜ!」
カゼジロウが立ち上がり瞬足の指輪で駆け出す。飛んでくる障壁を無駄なく躱してコモリの前へ飛び出した。
「ひぃぃ!来ないで!」
「無駄無駄無駄ぁ!!」
カゼジロウに形がバラバラな様々な障壁を発射するがカゼジロウは見事に障壁の存在を感知して何度も紙一重で躱していく。
「貰ったぜ!」
遂にコモリの元へたどり着いたカゼジロウは槍を大きく振りコモリの首を狙う。
「なぁ!?」
しかしコモリの目の前で槍が止められる。
「防御なら、自分の周りに障壁を貼れば、完璧」
「ごはっ!」
新たに発射された障壁をお腹にモロに喰らったカゼジロウがフィンがいた場所まで吹き飛ばされる。これで完全に振り出しに戻った。
「なるほどな、あの子の元まで辿り着けたとしてもあの子の周りにも障壁が。こりゃ厳しい戦いになってんな」
遠距離攻撃が出来れば少しは作戦の幅が広がるのだが、生憎ここにいるのは接近戦特化の二人のみだ。
「相性最悪だな」
「まあそんな焦んなよデカブツ。オイラ達結構派手に暴れてんぜ。こんだけ派手に暴れてりゃ、ライヤとかタヌキが気づくだろ」
「まあ、そうだな」
ライヤとナズナが魔道具と本に夢中になり過ぎていてこちらの異変に気がついていない、という一抹の不安を取り除きフィンはコモリ隣接体制を取る。
「えへへ、それはあり得ませんよ」
「あ!?なんでだ!?」
「だってぇ、今頃貴方のお仲間達はルシフェル様の策略に嵌って、傀儡となっているでしょうからぁ」
コモリの一言にフィンは唇を噛んだ。
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