original ring

藤丸セブン

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4章 オリジナルリング

69話 怨み

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「行くぜ、カゼジロウスーパーブルームノヴァパイパースーパーウルトラメガマックスカゼジロウさんだ!!!」
 カゼジロウがもう一度自身の全力の力での突進を開始する。同じ攻撃方法なのに名前が違うのはカゼジロウ本人でさえ、どの様な名前だったのかを一才覚えていないからだ。
「無駄な事」
 コモリが両手を前に突き出し舞を舞うように浮遊していた全ての黒い障壁を一点に集中させる。
「黒障壁の怨嗟!!」
 全ての黒い障壁を集めた巨大な障壁は禍々しい黒い光を放ちながら突貫してくるカゼジロウに衝突した。その威力にカゼジロウは体制を崩しそうになるが、地面を強く踏み締めてなんとか堪える。
「ぐっ、のおおおおお!!!」
 障壁とカゼジロウ。どちらが優勢かと言われれば誰が見ても障壁だ。カゼジロウはなんとか吹き飛ばされないように踏ん張っているだけ。勝ち目はほぼゼロに等しいとも言える。
「おいガキ!もっと寄越せ!」
「は!?無茶言うな!これ以上はお前の体が保たねえ!」
「寄越せっつってんだよ!!」
 カゼジロウの怒号にマキが少し驚き、指輪を光らせた。
「どうなっても知らねえぞ。全力出してこい!カゼジロウ!!!」
「おうよ!!!」
 マキによる強化が入りカゼジロウの全身の力が高まる。それにより今まで完全に不利だったカゼジロウが障壁を少し押し戻す。
「馬鹿な」
 カゼジロウの腕からは力に耐えきれず血が吹き出し、体も強化に耐えられず全身が痛んでいる。
「なんで、そこまでして戦うの、ですか?」
「あ?」
 コモリの小さな呟きをカゼジロウの耳は聞き逃さなかった。
「戦う理由だぁ?」
 ライヤやキョウカは自分の目的、最高の冒険とオリジナルリングの封印の為に戦っている。ナズナは恩人であるライヤとキョウカを助ける為。フィンの理由は知らないが。ならば、カゼジロウの戦う理由は。
「簡単だな」
 ほんの少しだけ考えたが、答えは一つだ。
「ダチが困ってたから!」
「へ?そ、それだけですか?」
「ダチが困ってたら助ける!操られそうになってたら手を差し伸べる!悪の道に進もうとしてんのなら殴って目を覚まさせる!」
 カゼジロウの槍が黒障壁にヒビを入れる。
「馬鹿な!!」
「それが!ダチ!それが!オイラの戦う理由だ!!!」
 カゼジロウの槍が光の速度で回転し黒障壁を破壊する。コモリはその破壊された障壁を眺める事しか出来なかった。
「終わりだ!!!」
 カゼジロウの動きがコモリには何故かゆっくりに見える。戦う理由、か。
「私の、戦う理由は、何だった。かな?」
  ◇
 コモリ・ヒキメナと言う少女がこの世に生を受けた時には、魔族の生き残りは数百人は存在した。人々がオリジナルリングを竜から授けられた後人々はその指輪を量産。国の騎士や冒険者に売るという形で人間族の力を大幅に強化した。その結果、人間に勝てないと感じた魔族は我先にと人間から逃亡生活をしていた。コモリの両親もその中の一組である。
「今日のご飯は、パン一つだ」
「ごめんね、こんな生活をさせて」
 コモリの両親は事あるごとにコモリに謝罪の言葉をかけてきたが、コモリ自身はこの生活の事を何とも思っていなかった。
「大丈夫だよ!私にはパパとママがいるんだもん!」
 コモリの無邪気な笑顔に両親はいつも心を痛めていたが、コモリは心の底から笑っていた。何故なら、コモリが産まれた時からこの逃亡生活は幕を開けていた。つまり、コモリは逃亡生活以外の生活を知らなかったのだ。
「お腹すいた。けど、食べ物はないし我慢しないと!生きるって大変なんだなぁ」
 栄養は平均女性よりも大幅に足りなかったが、コモリ・ヒキメナはすくすくと育った。が、幸せな時間は長くは続かなかった。
「人間だ!人間の軍隊が攻めてきたぞ!」
 共に逃げていた仲間の魔族の言葉にコモリと両親は直ぐ様行動を開始して逃げる準備を進めた。しかし。
「挟み撃ちされてる!チクショウ!もう俺たちに逃げ場はねぇ!!」
 魔族達が生活していた小さな箇所は完全に鎧を着た人間の軍隊に囲まれていた。仲間の言った通り、逃げ場は何処にも無かった。
「コモリ!ここから動いてはいけないよ。絶対にだぞ!!」
「う、うん」
 父がコモリを小さな木箱の中に入れて蓋を閉める。その木箱は本当に小さく、五歳程度の少女ならギリギリ入れる程の大きさだったが、コモリの体はすっぽりと入った。この時のコモリは十歳。栄養が少ないせいで小さな体がこの時ばかりは役に立った。
「お、魔族はっけーん」
 そんな事をしている間に二人の人間に見つかってしまった。コモリは隠れることが出来たが、両親にそんな時間は無かった。
「待ってください!私達に戦うつもりはありません!降伏します!なので!命だけは助けて下さい!」
 母親が懇願するように地面に頭をつける。その母を見て父も直ぐに頭を下げた。
「えー?でも魔族は皆殺しにしろって王に言われてるんだよなー」
「俺は殺しても構いません!俺は人間との戦争に参加して君達の同族を多く殺した。けど、妻は誰も殺していない!お願いだ!妻だけは!妻だけは助けてくれないか!!!」
「パパっ」
 父は大粒の涙を流しながら地面に頭を擦り付ける。その様子を見て二人の人間は困った様に頭、正確には兜をかいた。
「どうするよ?でも確かにこの女いい女だよな?俺の女になるなら助けてやるよ」
「うわっ!くせえセリフ吐くなお前!」
「いいだろ?現地妻ってやつ?」
 コモリには理解できない言葉を話しながら人間二人は楽しそうに笑う。父は複雑そうな顔をしていたが、母が助かると知って安堵の表情をした。
「ありがとうございま」
 その瞬間。鮮血が飛んだ。父は言葉を失った。
「え?」
 それもその筈。その血はコモリの母親のもので、コモリの父親が見たのは母親の首が宙を舞う様子だったのだから。
「なーんてな!俺女房いるし!魔族の女なんていらねえっての!!」
「ハハっ!お前面白すぎ!!見ろよあの男の顔!!!最高に傑作じゃねえか!!!!」
 何が傑作なのだろうか。傑作というのは母から聞いたことがある。なんでも大変美しい絵画を見たときに母親が言った言葉だそうだ。これは、この景色は、傑作なのだろうか?
「貴様ァァァ!!」
「おっと、危ない」
 激昂して襲いかかった父親に人間は腕から電撃を出して静止した。
「ぐぁぁぁ!!」
「ははっ!これが竜から授かった指輪!強すぎんだろ!!!」
「おーい、こいつまだ生きてるぜ、もっと痛ぶってやろう」
 それから人間二人は父親を可能な限り痛めつけた。殴る、蹴る、斬る、刺す、電撃を浴びせる。
「パパ!」
 コモリはそう叫びそうになったが、口元を必死に押さえて声を出さなかった。何故なら。
「しー」
 父が指を口元に持ってきてそう合図したからだ。それは、いつも父がコモリを静かにさせる時にするものだった。人間二人に気づかれない様に行った合図の為ほんの少しの時間しかやれなかったが、コモリはしっかりと見て父の教えを守った。
「はははははは!」
「わははははは!」
 人間の笑い声が聞こえる。初めの頃は悲鳴をあげていた父の声も、段々と聞こえなくなってくる。
「あ?死んだか?」
「いや死んでない。俺の指輪がそう言ってる」
「そうか、じゃあもっとやろう」
 地獄だった。母は瞬きをする内にこの世からいなくなり、残された父は人間に酷い目にあわされながらゆっくりと死んでいく。
「なんで?」
 何故こんな事をするのか。父は頭を下げて謝っていた。謝ったら許してあげる、という約束と違う。母は悪い事を何もしていない。悪い事をしたら叱る、という事は教えてもらったけれど、母は何も悪い事をしていないのだから叱られるのは筋違いと言うものだ。
「どうだ!人間の痛みを少しは思い知ったか!」
 一人が楽しそうに笑ってそんな言葉を吐いた。人間の痛み?何を言っているのだろう。その人間である二人は、今笑っているではないか。家族で笑っていたあの時よりも、楽しそうに、下品にも大きな口を開けて、ゲラゲラと楽しそうに笑っているではないか。
「お前らは生きてるだけで罪なんだよ!!」
 生きているだけで罪。生きているだけで悪い事をしている?そんな筈はない。何も悪い事をしていない母が死んで、何故悪い事をしているあの人間達は楽しそうに笑っていられるのだ。
「人間は、」
 そう、つまり人間は。
「悪だ」
 コモリがそう呟くと、二人の人間の体が唐突に四つに別れた。
「へ?」
 コモリが驚いて木箱から顔を出すと、そこには人間の返り血を浴びて真っ赤になった魔族の少年が立っていた。
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