original ring

藤丸セブン

文字の大きさ
72 / 81
4章 オリジナルリング

72話 残されたもの

しおりを挟む

 条件は揃った。己の全身全霊を込めた一撃を、
「歪めろ!!!歪曲の指輪!!!!」
 フィンが歪める空間を定めて歪曲の指輪を発動させる。歪める空間はコモリが障壁の指輪を装着している左腕だ。
「っ!!しまっ」
「遅い」
 空間に少しだけ歪みが生じたタイミングでコモリがフィンの狙いに気がつき、腕を咄嗟に下げようとするが、時既に遅し。歪曲の指輪によって作り出された空間の歪みがコモリの腕に喰らい付きコモリの小さく細い左腕を捩じ切った。
「ふぎゃぁぁぁ!!」
 腕が捩じ切れたりコモリの悲鳴が響き、コモリから障壁の指輪が一定距離離れた事により障壁による攻撃は途中で消えて行き、マキに当たる障壁は辛うじて一個もなかった。
「はっはは。ギリギリが過ぎるだろうが」
 流石のマキも冷や汗を拭いて力が抜けた事により地面に座り込んだ。
「は、はぁ、はぁ!ゆ、指輪!私の、障壁の、指輪!」
 腕の治療をしながら翼を畳み、フラフラと地面に降り立つコモリ。歩くのもやっとなコモリが障壁の指輪の付いた自分の腕に辿り着く前に。
「あっ」
 フィンがコモリの腕を回収した。
「悪いがこの指輪は封印させて貰うぜ」
「さ、せません。今、あなた、たちを、殺します。えへへへへへ」
「落ち着けよ。今の状況を分析できない程馬鹿じゃないだろ?」
 障壁の指輪はフィンの手に渡ってしまった。それだけでなくコモリの体は既にボロボロで、歩くだけで精一杯だ。こんな体でフィンとマキに勝つなど不可能。
「くっ」
「・・・拘束させて貰うぜ。全てのオリジナルリングを回収するまで、大人しくしててくれ」
 フィンはカゼジロウが衝突して壊した武具店から長めの縄を手に取るとなけなしのお金を置いてコモリの元へ歩いて行く。
「なっ、もう止血が完全に出来てる!?流石魔族だな。自己治癒能力が高いってのはこういうことか」
「なんですか、差別ですか?」
 立つことが出来なくなり地面に倒れ込んだコモリが冷たい視線でフィンを見る。
「いや、魔族だからって差別したりしねえよ。魔族だろうが人間だろうが、同じ心を持つ生き物であることに変わりはねえんだ」
 フィンはそう言いながら縄でコモリが身動きが出来ない様に、しかし決して強く縛りすぎないように拘束をしていく。ここでコモリを拘束することは今後コモリの自己修復が完了しても戦闘に戻って来れなくする為。コモリがまた戦いをしたらライヤやキョウカ達が危ないし、苦労して助けたコモリの命も失う事になるからだ。
「・・・一つ、質問があります」
「ん?なんだ?」
 大人しくフィンに拘束されていたコモリが小さく声を出す。その声にフィンは自分が出来る最大の優しい声で答える。
「・・・何故、私を助けたのです?私は、あなた達を。あなたの大切に想う人々を殺そうと、したのですよ?」
「あー、それか」
 目の前で人が死ぬ姿を見たくない。罪を犯した者にはしっかり罰を受けさせたい。その質問には様々な答えがあった。がやはり答えはこれだろう。
「助けたいと思ったから、だな」
「・・・へ?助けたい?な、なぜ?」
「理由なんかねえよ。嬢ちゃんを見て、死んで欲しくないと思った。嬢ちゃんを助ける手段があるなら、自分がどうなってでも助けたいと思っちまったんだよ」
 フィンの答えにコモリは黙り込む。あまりにも自分にはない感情を話す者だから、コモリには理解が出来なかった。
「本当にそれだけかよ?」
「お、カゼジロウ。無事だったか」
「おうよ!チビの姉ちゃんは「流石にシンドイ」って言い残してぶっ倒れたがな!オイラは頑丈だぜ!!」
 カゼジロウは親指を立てて胸を張る。流石はカゼジロウ。あれだけの無茶をやらかしておいてまだ立っていられるとは。
「・・・で、本当の理由というのは?」
「え?いや。そんなんねぇって!?」
「ホントか?あの妖精の事思い出したんじゃねえのかよ?」
 焦るフィンにカゼジロウの言葉が刺さる。別にカゼジロウは意地悪を言っている訳ではない。純粋に疑問に思っているだけなのだ。それは分かっているのだが、この思いを言葉にするのは少しばかり恥ずかしい。
「仕方ないか。話すよ」
 ライヤに当てられて助けられる人を全て助けたいと思ったのは本当だ。しかし、一番の理由は別のものだ。
「残された人が悲しむから」
「へ?」
 先程とは打って変わって小さい声で照れながらフィンは答えた。
「誰かの為に命を張れるってのは、凄い事だ。んで、大切な人の為に命を張って、死んでいったやつは満足だろうさ」
 だが、問題はそこではない。フィンが気にしているのは、庇われた、助けられた側の人間の気持ちだった。
「命を賭けて助けてくれた。その事に最大の感謝をしてそいつの分まで生きていく。それは当然の事だ。でも、時折考えちまうんだよ」
 あの時、自分が別の作戦を思いついていれば、とある妖精は死ななかったのではないか。オリジナルリングによる反動を彼女より頑丈な自分が受けていれば、とある妖精は死ななかったのではないか、と。
「助けてくれた事はありがたい。そんで、多分俺があいつだったとしても、同じことをすると思う」
 頭では分かっているのだ。だが、それでも、そうだとしても。
「大切な人がいない世界で生きていくのは辛い。自分のせいで死んだと意味のない自己嫌悪が襲ってくる。誰かの為に死ぬって言うのは素晴らしい事かもしれない。でも、俺はそんな事して欲しくない。残された人の感情を知っちまったからな」
「残された、人」
 フィンの話を聞いたコモリはルシフェルの事を考えた。コモリの希望。未来の魔王。彼の為にコモリが死んだら、彼はどんな顔をするだろうか。どんな気持ちになるだろうか。
「よくやった、素晴らしい成果だぞ、コモリ!」
 人間の兵士を殺した時の様に、自分のことの様に喜び、褒めてくれるだろうか。
「そうか、全員、殺されていたか」
 それとも、自らの行動が遅かったが故に助けられなかった魔族達を見て悔しがるのだろうか。
 それとも。
「父上、母上。我は、立派な魔王に。誰もが尊敬して止まない、全ての民を幸せに出来る、完全なる魔王に、なれるでしょうか?」
 あの夜の様に。夜空を見上げて小さな声で弱音を吐いて、涙するのだろうか。
「・・・あなたの気持ち、少しだけ分かった気がします」
「そうか。分かってくれて嬉しがはごほぐえごぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 優しい顔をしてフィンが縄を縛り終えるとフィンは唐突に大量の血を吐き出した。
「がっ!ごほっ!わ、すれてた!歪曲の指輪の、反動」
 これまで何度か歪曲の指輪による反動は受けてきたが、今回の反動はレベルが違う。これまでに比べて数倍の激痛、吐血。動悸が早くなり、ここで死ぬと思える程の激痛が全身を巡る。
「か、カゼジロウ!」
「ぬぉ!?お、おう!なんだ!?」
 あまりにも突然の事に驚き茫然としていたカゼジロウが名前を呼ばれて我に帰る。
「この、指輪を!キョウカちゃん、にっ、」
「おうよ任せろ!だから死ぬんじゃねえぞ!死んだらぶっ殺すからな!!!」
 カゼジロウの力強い声にフィンは小さく頷く。そして、意識を失った。
「うっし!そうと決まれば女を探さねえと!おいチビの姉ちゃん!女が何処にいるか知ってるか!?」
「は?女?誰のこと言ってやがる?」
「女は女だろうが!指輪使えなくて弱い!でも、割と強いあの女だ」
 人の名前を呼ぶことのないカゼジロウのせいで分かりづらいが、後半の特徴と今までの会話でカゼジロウがキョウカの事を言っているのだと分かった。
「キョウカなら多分大丈夫だぜ。うちの愚妹達がギルドマスターと一緒にいるのを見たって言ってた。お前は知らねえと思うがギルドマスターは変な奴だが強い。一緒なら心強いだろ」
「はぁぁぁ!!!?」
 カゼジロウの大き過ぎる驚きの声にマキは耳を塞ぐ。うるさ過ぎる。
「なんだよ?」
「ギルドマスターってのは裏切り者だぞ!?魔族の仲間だってライヤが言ってた!!」
「はっ?」
「多分!!」
「どっちだよ!!!」
 突然の情報にマキの頭が追いつかない。ギルドマスター、ウルが魔族の仲間。なら、ウルとキョウカを追って行った二人の妹は。
「クッソ!寝てる場合じゃねえ!」
 マキは直ぐに立ち上がり、妹達と別れた場所へ駆け出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...