original ring

藤丸セブン

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4章 オリジナルリング

76話 変化の魔術師

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「・・・へ?」
 あまりに突然の出来事にライヤは目を丸くして困惑の声をあげた。死を覚悟した訳ではないがなかなかのピンチを救ってくれたのが魔獣だったのだ。
「あ」
 ルシフェルを殴り飛ばしたバスターベアーとライヤの目が合う。そうするとバスターベアーは凄く嬉しそう(?)に笑った。そして全速力で走ってくる。
「お兄様ぁぁぁぁー!!!」
「ちょっと待って俺は多分美味しく、、お兄様?」
 出血によるものか頭の回転が遅れていた。よく考えたら野生のバスターベアーがこの警備の厳重な王都に入れる筈がない。その点を踏まえて更にライヤの事を「お兄様」などというバスターベアーはこの世界に一匹、いや。一人しかいない。
「ナイスタイミング。助かったぜナズナ」
「えへへ当然です!私はお兄様の妹ですから!」
 笑顔のバスターベアーは変化を解きナズナの姿に戻る。
「変化の魔術師か。我が計画では今頃はウルが止めている筈だが」
「変化の魔術師?」
 首を傾げるナズナを他所にルシフェルは手鏡の様な物を開く。
「・・・成程。予想外のお客様がいたか。コモリは、歪曲の戦士と瞬足の盗賊を相手しているか。ならば変化の魔術師はこちらで対処するしかないな」
「お兄様お兄様。さっきからあの人謎の単語をいっぱい使ってるんですけど。変化の魔術師って私の事ですか?」
「ああ。あいつの設定に俺達が押し付けられてるって感じかな。まあ気にすんな」
 ルシフェルに取ってライヤの仲間は恐らく勇者パーティなのだろう。ライヤが勇者とするとナズナが魔術師、フィンが戦士、そしてカゼジロウが盗賊なのだろう。この様に聴くと確かにRPGでよくある勇者パーティに見えてこなくも、ない。
「待たせたな。二人纏めて我が相手してやろう」
「舐められた物ですね。お兄様のお手を煩わせる必要などありません」
 ナズナが一人で戦おうとナイフを構えて臨戦体制を取るかライヤがナズナの肩を叩く。
「あいつは強い。悔しいがお言葉に甘えて二人でやろうぜ」
「でもお兄様の体が」
「大丈夫。まだ全然動けるさ」
 ナズナが心配そうにライヤを見つめるがライヤは腕を振り回して無事である事をアピールする。実際十メートル程の高度から背中を打ちつけたとは思えない程体が動く。痛みは当然あるが、だからと言って休む訳にはいかない。
「・・・分かりました。行きましょう!」
「おう!」
 ライヤは全身に雷を纏い、ナズナはそのままの状態でルシフェルに肉薄する。
「踊れ!我が魔剣よ!」
「うわぁ!?剣が浮いてるぅ!?」
「落ち着けナズナ!あいつは傀儡の指輪の使い手!あの剣には柄の部分に糸が付けられてる!」
 宙を舞いライヤとナズナを貫こうと動く魔剣を回避しながらライヤは自分の知る事をナズナに伝える。ルシフェルがキョウカの村を壊した魔族である事やルシフェルの計画などだ。
「なるほど。よく分かりました」
 ライヤの説明を聞いた後ナズナの目に鋭さが増す。ナズナがお姉様と呼ぶキョウカの村を焼いた犯人だと聞かされたら怒らない方が無理な話だろうが。
「お兄様!突っ込んで下さい!」
 ナズナの言葉にライヤは一切の迷いなくルシフェルの元へ駆け出す。
「何っ?」
 魔剣の乱舞はライヤとナズナを貫く事と同時にルシフェルへ二人を近づけない役割も果たしている。だというのにライヤはルシフェルへ一直線に駆け出した。魔剣の事を完全に消し去った動きだ。
「変化!」
「っ!成程な!」
 ナズナが変化の指輪を発動。対処は五本の魔剣。ナズナは五本の禍々しい刃を持つ特殊な魔剣をふわふわの綿へ変えた。魔剣が姿を変えた事により傀儡の糸は解けるし、もし操れたとしても綿など当たったところで痛くも痒くもない。
「ライジングフィストォォ!!」
「煉獄の剣!」
 魔剣による防御が無くなったタイミングでライヤが全身に纏った稲妻を右拳にだけ集中させてルシフェルに拳を振るう。そのライヤの電撃の拳をルシフェルは黒い炎の剣で迎え撃つ。剣と拳と言われると拳の方が弱い様に感じるが、そんな事はない。拳と剣というのはあくまで主力の攻撃ではない。あくまで主力は雷と炎だ。
「ぐっ!こっのぉぉぉ!」
「ふっうう!」
 二人の実力は互角。オリジナルリングの出力と互角に戦える程の火力が出せるとはやはりルシフェルは只者では無い。
「変化!」
 しかし、ライヤとルシフェルが互角にぶつかり合っているのはナズナに取ってはチャンス以外の何者でもない。ライヤが打ち勝てれば良し。しかしルシフェルの動きを封じてくれさえすれば後はナズナの番だ。
「アックスレイブン!」
 ナズナの体が羽のあらゆる部分が斧で作られている魔獣、アックスレイブンへと変わる。そして大量に作られた斧による巨大な斧をルシフェルへ振り下ろす。
「絡み付け!傀儡の糸!」
「なっ!」
 しかしナズナが作り上げた巨大な斧は魔剣に巻き付いていた傀儡の糸が絡みつく。
「まずいっ!解除!」
 ライヤを助けるための追撃である斧が傀儡化される訳にはいかない。咄嗟に変化を解除すると斧が姿を消す。すると行き場の無くなった糸が動き出す。
「お兄様!」
「分かってる!」
 ルシフェルとライヤの上空からライヤ目掛けて迫り来る傀儡の糸を回避する為ライヤは電撃を攻撃から移動へとシフトチェンジしてルシフェルから距離を取った。
「では、仕切り直しと行こうか」
 ライヤを捉えられなかった傀儡の糸はそのままの速度で地面に落ちている五本の魔剣に絡みつく。完全に振り出しに戻った。
「決定打がねえな」
「はい。あの傀儡の糸がかなり厄介ですね」
 ルシフェルの武器は指輪を使わずとも炎が放てる点だろう。故にルシフェルは炎と傀儡の糸を切り分けて使える。
「悪いが、作戦を考える暇は与えない!」
 何度目か分からない魔剣による追撃。ただでさえ五本の魔剣を回避するというのは難しいと言うのにその魔剣が自在に動くとなると回避は更に難易度が上がる。
「ナズナ!一旦別れるぞ!」
「了解です!」
 ナズナとライヤは逆方向に走り出し各々でルシフェルを狙う。魔剣の数は五本。そして狙うべき敵は二人なのならば、回避すべき魔剣は少なくなる。魔剣はライヤに三本。ナズナに二本の追撃があった。
「ナズナ!もう一回魔剣を変えられるか!?」
「はい!それは出来ますけど、同じことの繰り返しでは!?」
 またナズナが魔剣を害のないものへ変える事は出来るが先程と同じ結末が見える。
「ああ!だから次は無力化するんじゃなくて魔剣そのものを使い物にならなくする!」
 ライヤの言葉にナズナは頷き魔剣を小石へと変化させる。
「穿て!稲妻!!」
 小石を完全に破壊した後変化を解除する。すると。
「やってくれたな、我がコレクションを粉々にしよって」
 魔剣も糸も砕くことができなかったが、それは魔剣の硬度による物だ。ならば簡単に破壊できる物に変化させてしまえばいい。
「これであんたを守る剣は無くなったぜ!」
「だが、武器が無くなった訳ではないぞ?」
「お兄様!危ない!」
 ライヤがナズナに突き飛ばされる。次の瞬間ライヤが見たのは物凄い勢いでナズナに衝突する家の姿だった。
「なっ!ナズナァァァァ!!」
 血相を変えてナズナの元へと走りナズナを潰す家を雷撃で破壊する。
「うっ、お、にぃさま」
 ナズナは咄嗟に手で家による突進を防いでいたので最悪の事態は防がれたが巨大な物に衝突されたダメージは計り知れない。更にその後地面に体を強く叩きつけられた分も合わせると、とても戦闘を続けられる体ではない。
「テメェ」
「何を怒る?ここは戦場だ。戦場においての戦死など珍しい話ではない」
 ルシフェルの周囲には民家が宙を浮いている。傀儡の糸は物の質量や重量など無関係に傀儡と出来るのだ。糸一本で。
「ナズナ、休んでてくれ。こいつは、俺がぶっ飛ばす」
「怒りに身を任せるのは良くない。理由は簡単、周りが見えなくなるからだ。あくまでも我に刃向かおうというのならば一度落ち着く事を提案するが?」
「・・・何処までもムカつく野郎だな」
 ルシフェルの言っている事は間違っていない。実際ライヤは怒りにより雷鳴の指輪を暴走させてしまった過去がある。しかし、それを敵に指摘されるのがまた腹立たしい。
「すーっ。はぁー」
 しかし、落ち着かなければルシフェルに勝てないことも事実。不本意ではあるが。誠に遺憾だが。冷静さを取り戻す為深呼吸。
「大丈夫だ。いける」
 ナズナは死んでいない。また、致命傷という訳でもない。ならば、ライヤはやるべき事を果たすのみだ。
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