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4章 オリジナルリング
75話 自称魔王と他称勇者
しおりを挟む「さあ、第二ラウンドと行こうぜ!自称未来の魔王様よぉ!!」
傷を完全に癒したライヤが足に雷を纏ってルシフェルを蹴り飛ばす。その威力は雷撃による加速も加わり路地裏からルシフェルを吹き飛ばし住宅街のマンションにルシフェルが衝突した。
「やっべ!人がいる方に飛ばしちまった!」
迂闊だった。幾ら気持ちが昂ってしまったと言ってもわざわざ人質がいる方向へルシフェルを飛ばしたのは失態以外のなんでもない。
「でも、ずっと路地裏も戦いづらかったしな。それに」
ルシフェルが人を操るのは傀儡の糸を巻きつけた人間にのみだ。ならば傀儡の糸を巻き付ける暇すら与えなければ良い。
「フハハハ!案ずるな雷鳴の勇者よ。我はこれ以上無駄な民を戦争に巻き込むつもりはない」
吹き飛ばしたルシフェルを追いかけている間にルシフェルの大きな声を聞く。どうやら衝突したマンションの屋上で叫んでいる様だ。ここまで響いてくるという事はかなり大きな声を発しているのだろう。
「変な奴だな」
罪のない人を巻き込むルシフェルのやり方はライヤは間違っていると思う。例え大きな願い、世界の平和の為であったとしても。人を殺して掴む平和は何処か歪なのだ。
「でも」
ルシフェルは間違っている。だが、思想はある。全ての人々を民とし、その民を守る。それは一種の世界平和への道でもある。ルシフェルも、争いは好んでいないのかも知れない。話し合えれば、平和に解決できるのかも知れない。
「いや、それはないな」
ライヤは足に力を入れてマンション下で仁王立ちで待っていたルシフェルの前に着地する。ライヤにはライヤの正義がある様に、ルシフェルにはルシフェルの正義がある。それは、誰かに言われたからと言って変化するものではない。
「先程の我の発言においてこの場が戦場となる事は伝えた。民達は今必死にこの場から逃げているだろう」
「そいつはご丁寧にどうも。お前がいい奴だと勘違いしそうだよ」
ライヤの言葉をルシフェルは鼻で笑い飛ばす。ルシフェルは自分が悪であると自覚しているのだろう。
「というか、雷鳴の勇者って何!?恥ずかしい事口走らないでくれる!?」
それはともかく、先程少し、いやかなり疑問に思った事を赤面させながら問い詰める。雷鳴の勇者。凄く、心惹かれるネーミングだが真顔で真剣に呼ばれるとめちゃくちゃ恥ずかしい。
「我が魔王なのならば、我が野望を食い止めようとする者は勇者でなければならん。故に汝は勇者。伝説のオリジナルリング、雷鳴の指輪を操りし伝説の勇者よ!!!」
「恥ずかしいから大声だすなぁ!!」
羞恥心を剥き出しにライヤはルシフェルに向かって雷撃を放つ。ルシフェルはその雷撃を先程見せた炎で壁を作って打ち消す。
「では、始めよう。魔王と勇者の戦いを!!」
ルシフェルが翼を生やして空を飛び、両手から作り出された火炎球をライヤに投げ飛ばす。
「駆けろっ!」
しかし投げつけられる火炎球は見事にライヤの稲妻により相殺されていく。ルシフェルの炎にならばライヤでも対等に渡り合える。
「降臨せよ、我が魔剣達よ!!!」
「っ!」
しかし当然ルシフェルの真の強さは自らが魔力を持っている点のみではない。ライヤは背後から襲いかかる魔剣と呼ばれる特殊な剣を紙一重で回避した。
「五本の黒い剣。しかも厄介な事に大きさも刃の形もバラバラときた」
「これこそが我がコレクションの魔剣だ。この魔剣の乱舞から、逃れられるか!?」
ルシフェルが腕を振り下ろすと大きさや形の違う魔剣が宙を舞う。真っ直ぐに突進する剣、直角に決められた道を行く様な剣、文字通り踊る様に刃をくねさせながら飛ぶ剣。等しく同じなのはその全ての魔剣がライヤの命を狙っているという点のみである。
「これはあの時のナイフの要領か!」
路地裏でライヤを貫いたナイフは一人でに動いている様に見てたが真実は違う。ナイフの持ち手にはルシフェルの操る傀儡の糸が括り付けられており、ルシフェルが自在に動かしていたのだ。つまり、この魔剣にも柄の部分に傀儡の糸が付けられていることに間違いはないだろう。
「ならやる事は一つだ!」
雷鳴の指輪で放出する雷撃を一点に集めて五本の魔剣の内一つの魔剣へ電撃を浴びせる。
「あの時は人質がいたから全力で焼き尽くせなかったが、今回は躊躇う必要ねえからな!」
ナイフの時より剣の動きが読みづらいし回避も難しいが、代わりに今回は自由自在に電撃を放出することが出来る。これで傀儡化された魔剣は残り四つ。
「甘い」
と、油断したライヤの左足に先程電撃を浴びせた魔剣が突き刺さる。
「がっっ!?」
「ナイフと違うのは動きのみではない。傀儡の糸の強度も、数日かけて作る程念入りに強化している!」
「っ!取り出し!トライアングルシールド!!」
迫り来る魔剣三本をライヤの周囲を守る盾で防ぐ。そして盾のない空間を狙い飛びかかってくる魔剣は左足に突き刺さった魔剣を抜き魔剣同士で衝突させなんとか防いだ。
「戻れ」
「カッ!ハッ。チクショウが」
自分の足を貫いた魔剣を引き抜いた痛みを感じながらライヤはルシフェルを睨みつける。傀儡の糸が焼き切れない。そう決めつけるのは早計だ。先程ライヤが放った電撃は決してライヤの全力の放電ではない。
「休憩時間は終わりだ、舞え、魔剣達よ!!」
「雷鳴足っ」
再び襲いくる魔剣の乱舞に今度は回避する事に集中して対応する。だが予備としてトライアングルシールドは装備したまま。
「回避だけではダメだぞ?我をもっと楽しませて見せよ!」
「うっるせぇ!外野が口出しすんじゃねえ!!」
ルシフェルが魔剣を操作しているのだから全く持ってルシフェルは外野ではないが、そんな事は今はどうでもいい。大切なのはどの程度の電撃で魔剣に絡みつく傀儡の糸が焼き切れるのか。もしくは、全力の放電で傀儡の糸は焼き切れるのか、である。
「恐らく糸自体は雷鳴の指輪の電撃に耐えられる程強くねえ。だが、五本同時ってのが厳しすぎる!」
先程魔剣に電撃を放った時、ライヤは決して何も考えずに電撃を放電させた訳ではない。ライヤはあの時、他の四本の魔剣の回避に電撃を回せる程度残した出力で電撃を放ったのだ。
「でも、結構な威力で放ったのは間違い無いんだよなっ!と」
魔剣の乱舞をすんでのところで回避しながら頭を必死に働かせる。あの時回避にかけていた電撃は約四十%程。つまり一本の魔剣に向けて放出した電撃は約六十%程となる。それ程の威力でも焼き切れなかったとすると。
「っ!!」
魔剣を回避したライヤは数秒前に目にした光景を思い出す。それは電撃を浴びせた魔剣を鼻先で回避したタイミング。その時微かに糸が焦げるような匂いがした。
「効いてはいたって事か、なら」
考えられる作戦は二つ。一つはもう一度六十%で魔剣を感電させる。この作戦ならその後の四つの魔剣の回避は間に合うだろう。しかし、傀儡の糸を焼き切れる保証もない。もう一つの作戦は魔剣三本をトライアングルシールドで防ぎ、魔剣一本に九十%程の電撃を叩き込む。それ程の威力ならば恐らく強度の上がった傀儡の糸ですら焼き切れる。だが、残る一本の回避が不安定な物となる。
「はぁ、はぁっ!」
体力も消耗してきた。持久戦になればライヤが圧倒的に不利。ならば
「何か考察中か?足元が疎かだぞ」
「しまった!」
魔剣の回避と対処法にばかり注意が向いてしまった事を後悔する。ライヤの右足には隙を見て絡みつけられた傀儡の糸が巻き付いていたのだ。
「地面をのたうち回るがいい!」
ライヤの体が宙に浮き、勢いよく地面に叩きつけられる。しかしトライアングルシールドの一つの盾で衝撃を打ち消す。が、盾が衝撃に耐えられず破壊される。このままでは不味い。
「っのやろっ!」
「させん」
「のぉぉぉぉぁぁぁ!?」
右足に絡みつく傀儡の糸を焼き切ろうと雷鳴の指輪を発動させるがその前にルシフェルが糸を操りライヤを振り回す。まるで扇風機の羽の様な回転に目眩と吐き気を覚える。
「ふん!」
「がっっ!!」
そんな状態からもう一度地面に叩き落とされては受け身も取ることは出来ない。ライヤはガードも全くなしの状態で背中から地面に落ち、血反吐を吐き出した。
「ごほっ!がっは!」
「やはり惜しい。これ程まで我を楽しませられる男をここで殺すと言うのは」
ルシフェルがライヤの目を見てそう呟く。ライヤの状態はとても戦える状態ではなかったが、それでも目だけは闘志で満ちていた。「まだ負けていない」と目が叫んでいた。
「いや、だからこそ情けなど掛けるわけにはいかないな」
ルシフェルは決意を決め、魔剣を操作しライヤの心臓目掛けて腕を振るう。
「さらば、我が好敵手」
そう呟いたルシフェルは、
「ガァァァァァ!!!」
突如として現れた巨大な真っ赤な毛並みの凶暴な魔獣、バスターベアーに殴り飛ばされた。
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