original ring

藤丸セブン

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4章 オリジナルリング

78話 裏切り者の裏切り

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「ねぇ、最後に遺言聞いてくれない?」
 ウルに倒されたキョウカはウルに捕まる前にそう言ってウルはそれを認めた。その内容というのが。
「あんたさ。私達の協力者になるつもりはない?」
「は?」
 キョウカの思いもよらない一言にウルは言葉を失った。故郷を破壊した魔族の協力者に、協力の申請をするなど考えてもいなかったからだ。
「いやいや!流石にダメでしょ。ライヤ君が心配でなりふり構ってられないのは分かるけど」
「別にライヤの為じゃないけど!?」
「えー。ここにきてツンデレ発動させるのー?」
 赤面するキョウカに呆れ顔のウル咳払いを一つ。そして真面目な表情で交渉を始める。
「まず第一として、あんたが魔族の協力し出したのはこの世界がつまらなくて何か刺激が欲しかったからなんだよね?」
「まあ、そうかな」
「ならこのままあんたが魔族の協力者であったら、楽しい?」
 キョウカの言う未来を少し想像してみる。このまま行けばキョウカ、ファイアーシスターズの二人は戦闘不能。例えフィンやカゼジロウ、ライヤ達がルシフェルを倒す事が出来たとしても、肝心のオリジナルリングを封印する為に必要なキョウカは魔族側の手にある。ルシフェルが負けるとも思えないが、もし負けた所で敗北は見えない。あの根っからの善人はきっとルシフェルを殺せないから。
「それはさ、つまらなくない?」
「う、うん。確かに?」
「なら、あんたがこっち側に着いたらどう?」
 キョウカの言われるがままにまた未来を想像する。まずキョウカは解放される。これでオリジナルリングの封印は可能となり、更に戦力もウルが入る事で大幅に上がる。ルシフェルはウルより少し強いが、ライヤとの戦いで消耗しているルシフェルならあるいは。
「うーん。簡単には結果が分からないなぁ。私勝てるかなー」
「でしょ?本来人生ってのはそんなもんなんだよ」
 未来は誰にも分からない。それは魔族も人間も同じだ。それから更に追い討ちをかける。
「あんたも冒険者なら、自分が勝てるか分からない壁を、超えてみたくない?」
 その言葉はウルを貫いた様に感じた。ウルは今までまだ見ぬ冒険にワクワクしては失望してきた。それはウルに対峙する壁があまりに低く、脆かったから。しかし、ルシフェルという男をウルは知っている。その男は確実に高く、硬い壁だ。その壁を仲間の冒険者と協力して乗り越え、ぶち壊す。それは。
「私の憧れた冒険だ」
 いつかの少女が夢にみた胸が踊る冒険。それが、今目の前にあったのだ。
「ふっ。アハハハハハハハ」
 ウルは大声で楽しげに笑うと色彩の指輪を操作してキョウカの拘束を解除した。
「負けだ。キョウカちゃんの提案はあまりにも私好み過ぎる!」
  ◇
「って事で私はキョウカちゃんに協力する。文句は受け付けるよ?」
 場面は戻りルシフェルとウルが正面から対面している。その間にキョウカとキュアは瀕死寸前のライヤと気を失ったナズナの治療をする。
「キョウカ、フィンさん達は?」
「分かんない。ファイアシスターズが来てるみたいだから、もしかしたらマキと一緒かも」
「ファイアーシスターズが?」
 キョウカと共にウルと戦っていたネンカとエンカも拘束は解かれたがとても動けそうではなかったので少し申し訳ないがその場に置いてきた。
「成程な。何、問題ない。ちょうどこちらも計画を変更しようと思っていたんだ。人間を皆殺しにし、魔族だけの楽園を築く」
「あら残念。人間も助けてくれるって言うから協力してたのに」
「嘘をつけ。楽しそうだったからだろう?」
「ふふ」
「ハハハ」
 少々の会話の後、二人は唐突に笑い始める。数秒後にその笑いが収まると、それが開戦の合図だ。
「インフェルノ!」
「色彩の指輪、茶色。岩石!」
 ルシフェルの炎が色彩の指輪により作り出された岩に阻まれる。しかしルシフェルは岩石に肉薄し、素手で岩石を破壊してそのままウルを殴り飛ばした。
「ありゃ?なんか力上がってない!?」
「水刃波!!」
「白!氷結!!」
 ルシフェルからの追撃の水の刃を見事に全て凍らせる。と、同時にルシフェルの足も氷の檻に閉じ込める。
「仕返しだ。肌色、格闘!」
 身動きの取れないルシフェルを今度はウルが力強く殴り飛ばす。
「痛い。あんたさぁ、めちゃくちゃ強くなってない!?」
 ウルがルシフェルを見るとその頭には禍々しく黒い光を放つ角を付けており、腕には真っ黒の鱗、爪は鋭く凶悪になっているのが分かった。その姿はまるで伝説の竜を人間に無理やり捩じ込んだような姿だった。
「魔王には第二形態があるものだ。その程度の知識、常識だろう!?」
 再び迫り来るルシフェルの動きを止める為色彩の指輪を紫、毒に変更。しかしルシフェルは全く止まらずウルを殴りつける。その拳をなんとか身を捻って躱すが次の拳の追撃は防げず顔面で竜の鱗を付けた拳のアッパーを受け止める。
「がっ!」
「まだ終わりではない!!」
 アッパーの威力に宙を舞ったウルにルシフェルが追撃の炎を放つ。が、ウルも色を変えて体に水流を纏って相殺した。
「キョウカちゃーーーん!!私だけじゃ勝てませーーん!!援軍下さーーい!!!」
「はぁぁぁ!?あんたが勝てるって言ったんでしょうが!!?」
「言ってないよー!?勝てるかどうか分からないって言ったんだよー!?そんで勝てなかった!このままじゃ私死ぬ!シニタクナーイ」
 棒読みで援軍を頼むウルをルシフェルが恨めしそうに睨む。
「殺し合い中に余所見とは、随分と余裕だな!!!」
「こっち見たね」
 ウルは自分に向けられた視線に気づき指輪の色を変更。色彩、黄色。
「電撃!!」
「がぁぁぁぁ!」
 色彩の指輪で雷雲を呼び、落雷をルシフェルに落とす。雷鳴の指輪と違いこの技は即座に雷雲を作り出せる訳では無いので時間稼ぎをした訳だ。
「ま、援軍が欲しいのは事実だけど」
 ウルが渾身の技を叩き込んだ後とは思えない苦笑いを浮かべて地面に着地。落雷を受け止めたルシフェルは少しダメージを負った程度。全く有効打になっていなかった。
「色彩の指輪。その指輪は色に応じてあらゆる能力を持つ万能型の指輪。しかし、それ故に一つ一つの能力の威力が弱い」
「よく知ってんね。私の指輪の特徴なんて」
「王たるもの、臣下の能力を把握することなど当然の事だ」
 能力を把握している。それはまだ見せていない色彩の能力も知っていると言う事。この殺し合い、確実にウルが不利だ。
「ど、どうしよう!このままじゃウルがやられて私達もやられる!」
「俺が、ウルさんの援護に」
「バカライヤ!馬鹿なの!?あんた生きてるのが奇跡レベルの大怪我なんだよ!?今動いたら死ぬから!!!」
 二回もバカと叫んだキョウカはとある声を聞いた。その声は雄叫びをあげて近づいてくる。
「おおおおおお!!オイラ、さんじょぉぉぉう!!」
「っるせぇ!もっと静かに!そんでもって丁寧に運べってんだ!!」
「カゼジロウ!マキさんも!?」
 そこに来たのは傷だらけのマキを背中に背負った同じく傷だかけのカゼジロウだった。
「はぁー!はぁー!ほれ、封印しろ、オイラ、は、寝る!」
「これは!障壁の指輪!!!じゃあもう一人の魔族に勝ったんだ!!」
「あ?こっちの事情知ってんのか」
 概ねの計画はウルから聞いたのでキョウカは把握している。が、本当にマキがその場に居たとは思わなかったが。
「良いところに!今ウルが戦闘中だから加勢してあげて!!」
「お前、なかなか言う様になったな。今の私達を見てそんな事言えるとは」
 マキの怪我もライヤ程酷くはないがかなり深い。カゼジロウに至ってはもう既に地面に寝転がり意識を失っていた。そしてキョウカではウルを援護するどころかルシフェルに一撃で殺される自信がある。
「嘘。ここまで来たのに!」
「ぐぇっ」
 ライヤの治療をしながら声が聞こえた方向を見る。そこには黒焦げになったウルが。
「キョウカちゃん、やっぱ無理だった。ヘルプミー」
「何処までも我をコケにするつもりか貴様は」
 黒焦げだと言うのに凄く元気そうに見えるのは何故だろう。しかしウルの体へのダメージが深刻なのは分かる。
「ウルよ。最後に言い残す事はあるか?」
「キャー、マダシニタクナーイ」
「ヘルブレイズ」
 ウルのカタコトの命乞いにルシフェルは問答無用で黒炎を腕に纏わせる。
「やっぱ、魔王を倒せるのは勇者だけみたいだね」
 ルシフェルが黒炎をウルの目の前で発射。ウルの体が一瞬で黒焦げになり、灰となった。
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