ネクラヒーローですんません

藤丸セブン

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三話 ブレイブルー

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「ほんと!ふざけたタイミングで現れる奴らだよ!!行くぞ!」
「うっす!」
 カラオケに遊びに来ていた透輝と零士は始まった曲も飲みかけのジュースも置いてスマホを取り出す。否。それはスマホに見えるがスマホではない。この機械こそが、防衛戦隊ブレイバーの変身アイテムなのである。
「「変身!!!」」
 二人が変身アイテムの電源を入れるとアイテムは軽快で勇敢な音楽を流しながら起動。二人の体へヒーロースーツを身につけさせていく。それはさながらプ⚪︎キュアの変身シーン、ではなく。光の輪が二人の体を包み込むとその数秒後には既に二人の姿はブレイバーのものとなっていた。どちらかというと仮面のヒーローのそれだ。
「夢と誠実の戦士、ブレイグリーン!」
「自由と友情の戦士!ブレイブルー!!」
 ブレイバーとなった二人は勢いよくカラオケの一室から飛び出して近場の窓を開けてそこから外へと飛び出た。
「ん?なあ、さっきこの部屋からブレイバー出てこなかった?そんなコスプレうちにあったっけ?」
「そんなもんあらへんよ?本物やったんとちゃうー?」
「マジかよ!?サイン貰っときゃ良かった!!そうすれば女の子にモテモテだったのによー!!!」
「それモテモテなのブレイバーの方やん」
 カラオケ店員の悲しい声を聞きながら透輝は申し訳なさに包まれる。
 (ブルーはともかく俺なんかのサインに価値はねえ。後でブルーにサイン送らせるか。いや、でも個人個人を大切にするのはいいけどそれは贔屓にもなるって司令官言ってたしな)
「何考え込んでんだ地面着くぞ!?」
「あ、おっす!」
 変身する前は普通の大学生と変わりない身体能力の二人も、ブレイバーとなったのならば話は違う。二人の身体能力は極限まで高められ、例え三階から落下しても階段をジャンプした時と同じくらいの負担しかかからない。つまり。
「痛ってぇ!時短の為に窓から飛び降りるなんてせずにエレベーター待てば良かった!」
「・・・ヒーローがそんなんじゃカッコ悪いっすよ」
「言ってくれるな!俺もそう思う!!」
 申し訳ないがブルーは、零士はとても身体能力が高いとは言えない。その為階段からジャンプして着地すると痛いのだ。少し不安になってきた透輝に無線による通信が入った。
『ブルー、グリーン。聞こえていますか?』
「聞こえてるよ司令」
「いけませんね。こういう時はママと呼ぶ様に」
「逆だろ!!?というか俺母さんの事ママなんて呼んだ事ないだろ!!?」
 無線はブレイバーになると自動で装着される。故に変身さえしてしまえばスマホなどで連絡を取らずとも他のブレイバーや司令官の冷華と連絡が取れるのだ。
「愉悦団が出たのは!?」
『付近のマークです。懐かしいですね。零士はマークのラッキーセットが大好きで、あの時の笑顔は今でもすぐに思い出せます』
「もうやめて!?行くぞ透、コホン。グリーン!!」
 大丈夫だろうかこのヒーローと司令官。特に司令官。
「つーかマークってこっから大分遠くねえか?走っても三〇分はかかるぞ」
「何の為に変身したと思ってんだよ」
『かっこよく飛び降りる為でしょう?ふふ、いつまでも可愛いですね』
「そんな訳ねえだろ!!」
 ブルーは変身アイテムを掲げて叫ぶ。
「来い!ブレイワンド!!」
 ブルーの呼び掛けに答え、光がブルーの手の中に生まれる。そしてその光がゆっくりと消えると、そこには青いラインが入れ込まれた一振りの杖があった。ブレイワンド。ブレイブルーのウェポンである。以前ブルーは爆弾をメインに戦うと言ったが、正式な武器はこちらのワンドだ。このブレイワンドはブルーの思い描く武器やアイテム、道具を生成する事が出来るという最強にぶっ壊れ性能の武器である。
 (俺のはよく切れる以外何もない普通の剣なのに)
 グリーンの手にも当然緑のラインの入った武器が握られているがこのブレイブレイドに特別な効果はない。否、ある事はあるのだが。その効果は壊れない事。誠実に生きるグリーンには何より大切な事だが、とてもヒーローらしい力を出す事は出来ない。
「行くぜ!ブレイバイク!」
 ブルーがバイクを作り出し、グリーンもさっさと後ろに乗る。そしてマークへ向けて走り出した。
「後ろに乗せるなら女の子が良かった」
「今度イエローでも乗せてあげて下さい」
「何でそこでイエローが出てくるんだよ」
 ブルーの言葉に若干驚きながらも、ブルーがそんな人間である事はグリーンも把握しているので声に出して驚きはしない。
「やべ、渋滞してる!?」
 グリーンが驚いたのはそちらよりも交通渋滞の方だ。このままでは目的地に着くのが遅れてしまう。
「しゃーね!ブレイワンド!」
 ブルーが再度ワンドを展開して、今度はメガホンを作り出した。
「ブレイバーでーーーーす!愉悦団を止めに行く為道を開けて下さ~い!!」
 ブルーがそう呼びかけると道が開き、という事はなくそのまま渋滞は続いた。
「・・・走ります?」
「皆さんが非協力的だと人が死ぬかも知れませーん!!そうなったらその人が死んだのはブレイバーが現場に到着出来なかった為、つまり皆さんの責任になる可能性がありまーす!!」
 車は一斉に縁に寄った。
「ご協力感謝しまーす!!」
「ごめんなさい!!うちのバカがごめんなさい!!!何も皆さんの責任じゃないので!!!」
 このヒーローはブレイバーが民間人の支援のお陰で活動できている事を知らないのだろうか。どうしてこうも敵を作る様な事を平気で言えるのか。
「しゃーねーだろ。愉悦団は自分達の為なら平気で人を殺すぞ。そんな奴らを渋滞のせいで逃しましたなんて洒落にならない」
「その正義感は立派だと思いますけどね」
 しかしブルーもグリーンの言い分が分からない程馬鹿ではない。
「次はもうちょいマイルドに言うわ」
「そうしてくれ」
 そんなこんなでブルーとグリーンはマークというハンバーガー店に着いた。
「ちなみにレッド達は!?」
『付近に沸いた愉悦団を捕らえています。その為その道が通れなくなり』
「なるほど、渋滞もあいつらの仕業だったんすね」
「なら、二人で行くしかねえな」
 二人はマークの扉を勢いよく開け放った。
「開けろ!デ⚪︎ロイト市警だ!!」
「こんな時にふざけてる場合じゃぬぇえだろ!!それにもう開けてるって!!?」
 ブルーの悪ふざけは幸いにも誰も気に留めなかった。店内は多くの愉悦団団員のせいでてんやわんやだった為声も上手く通っていなかったのだ。数は三十人ほどだろうか。そしてその愉悦団の目的は。
「ここにあるラッキーセットのおもちゃを全て寄越せぇぇぇぇ!!」
 これに尽きた。
「「しょーもな!!!」」
 ラッキーセットとは、説明しなくても分かるかも知れないが子供向けのメニューである。それを頼むとおもちゃが一つ付いてくる。この大の大人達はそのおもちゃをラッキーセットを買わずに手に入れようとしていたのだ。
「おいお前ら!そんな下らない事で店の人やお客さんに迷惑をかけるな!!」
「下らないだと!?今のラッキーセットに付いてくるパケモンカードは一枚五百円で売れるんだぞ!!?」
「転売ヤーは殺す。それがこの国の法律だ」
 先程まで呆れが勝っていたブルーの目に急に殺意が生まれる。そう、実を言うと彼も転売ヤーの被害を受けた事がある。
「転売ヤーが新発売のゲームを買い占めない様に抽選販売になったせいで俺はゲームが買えなかった!!!」
「直接的な被害ではねえんすね」
「直接的な被害だろ!!!?」
 ブルーの怒りは最もだがここにはマークの店員もお客さんもいるのだからあまりブレイバーのカッコよさなどを汚さないで欲しい。支援など貰えなくなる。
「ブレイバーも意外と庶民的なのね」
「なんか親近感湧いてきた」
「あれ!?なんかいい方に進んでる!?」
 ブレイブルーはブレイバーの中でも人気のメンバーである。その理由の大半が面白いから。ブレイブルー程自分の欲望に忠実な人間はいないのではないかと言われる程である。その為アンチも多いが。
「ええい鬱陶しい!とにかくだ!貴様達を倒せば我らはラッキーセットのおもちゃを全て盗める!ならば話は簡単だぁ!!」
 愉悦団団員達が叫びを上げると人間である彼らを黒い霧が包む。その霧が数秒後に晴れるとその姿は黒い怪物へ姿を変えていた。
「怪物化したか」
 愉悦団は全員人間で構成されている。しかし愉悦団ボスが作り出した怪人化装置により自身の体を怪人へと変化させる事が出来る。その為愉悦団には警察などでは太刀打ちできず、同じく特殊な力を使う事の出来るブレイバーでないと対処出来ないのだ。
「とりあえず俺は民間人を避難させる!グリーンはそいつらの相手頼む!!」
「え?」
 そう言うが早く、ブルーは店員や客を一箇所に集め始める。すると当然ブレイバーを倒す事を目的にシフトした愉悦団の怪人達は。
「五人揃っていない状態で、しかも我らの相手は一人だけだと?舐めやがって!ここで滅多打ちにしてやる!ブレイグリーン!!!」
「俺はあんたやレッドみたいに派手にこいつらを倒す手段なんて無いんですけどーー!!!?」
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