第二王子に婚約破棄されたと思ったら、第一王子様から求婚されていた件

あめり

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2話 求婚

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「急に呼び立てて済まない。リオナ・ギュスターブ」

「アレン王子様にお呼びいただければ、このリオナ・ギュスターブ。どちらへでも参上する気持ちにございます」

「そうか、感謝する」


 シリンガ宮殿、アレン・ハンフリーの私室。リオナは現在、その場所に立っていた。彼女はアレンに挨拶をしているが、自分の言葉遣いが合っているのかわかっていない。本来はもっと尊敬語つかうのでは? などを考えてしまっている。

 それほどに、目の前の人物ははるか高みの相手だったのだ。アレン・ハンフリー第一王子。王位継承権は堂々のトップに君臨しており、金髪の髪を綺麗に切り揃えた髪型は清潔感と二枚目な顔にマッチしていた。身体付きも筋肉質であり長身。民を導くのに相応しい外見と言える。

 弟のグレンとは違い、女性関係など問題も起こさない紳士として見られている。グレン・ハンフリーよりもリオナとしては子供の頃から親しい間柄ではあった。

「お聞きしてもよろしいですか?」

「ああ、呼び立てた理由だね」

「はい」

 リオナはグレンのこともある為、アレンも信用はしていなかった。正確には語弊があるが、リオナはすっかり恐れてしまっている。

「単刀直入に言おう、リオナ」

「は、はい……」

 第一王子は真剣な眼差しになっていた。純真無垢なリオナはドキドキと鼓動が早まっていく。なにを言われるのか、とても気になるといったところか。

「私と婚約してくれないか?」

「……えっ? アレン様と……え?」

 空耳だろうか? なにを言われたのか、リオナは理解できなかった。「婚約してくれ」と言ったような気がする。

「婚約をしてほしい。私と」

「アレン様と……婚約……?」

 リオナは時が止まったような錯覚を起こしていた。何故、自分が第一王子と婚約という話になるのか、わかっていない。1週間前に第二王子である、グレンに振られたばかりなのに。


「私は以前から、其方のことを好いていた。昔から知っている仲でもあろう?」

「た、確かに……それは……」

 アレンの言葉におそらく嘘はないのだろう。一応は幼馴染のような関係と言えるのかもしれない。アレンは23歳でリオナは17歳ではあるが。

 リオナを好きといった彼の表情は真剣であり、目を逸らすことはしていない。有力貴族の令嬢として、本来であれば力強く頷くのが正解ではあるが……。ちらついているのは、グレンに振られた出来事だ……まだ、あれから1週間しか経っていない……。


「グレンが婚約を破棄したことは知っている。だからというわけではもちろんない。それから、非常識だということも重々承知の上だ」

「……アレン様……」

「グレンの仕出かしたことについては、私から謝らせてほしい。本当に済まなかった」

 次期国王であるアレン・ハンフリー。リオナも有力貴族の娘とはいえ、彼が頭を下げることなど早々ないと言えるだろう。他の者に見られては示しのつかない事態と取られる可能性もあった。

 しかし、それでも彼は謝ることが、少しでもリオナの悲しみを和らげることだと信じていたのだ。だからこそ臆面もなく実行したのだった。

「アレン様、頭を上げていただけませんか? アレン様のお気持ちはとても嬉しく思います」

「ありがとう。それで?」

 アレンは彼女に言われて、頭の位置を元に戻した。回答を聞きたいと考えている。

「お時間をいただけませんでしょうか? 自分の中でも整理をしてみたいのです」

「ああ、もちろんだ。何なら、最初は婚約を前提にというところからでも構わない」

 アレンは回答をせびる様子は毛頭ないようだ。リオナも安心した。自分の中で嬉しさや気恥ずかしさなどの感情が渦巻いてしまい、冷静さを欠いてしまっている。

 だが、彼からの求婚は嬉しいことには間違いない。婚約破棄をされて1週間程度が経過し、悲しみが脳裏を駆け巡っていた。そんなリオナを照らす明かりが、目の前に降りて来ているのだ。

 彼女はそのことをしっかりと胸に刻み、出来るだけ早く回答を出そうと考えていた。
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