2 / 30
2話 求婚
しおりを挟む
「急に呼び立てて済まない。リオナ・ギュスターブ」
「アレン王子様にお呼びいただければ、このリオナ・ギュスターブ。どちらへでも参上する気持ちにございます」
「そうか、感謝する」
シリンガ宮殿、アレン・ハンフリーの私室。リオナは現在、その場所に立っていた。彼女はアレンに挨拶をしているが、自分の言葉遣いが合っているのかわかっていない。本来はもっと尊敬語つかうのでは? などを考えてしまっている。
それほどに、目の前の人物ははるか高みの相手だったのだ。アレン・ハンフリー第一王子。王位継承権は堂々のトップに君臨しており、金髪の髪を綺麗に切り揃えた髪型は清潔感と二枚目な顔にマッチしていた。身体付きも筋肉質であり長身。民を導くのに相応しい外見と言える。
弟のグレンとは違い、女性関係など問題も起こさない紳士として見られている。グレン・ハンフリーよりもリオナとしては子供の頃から親しい間柄ではあった。
「お聞きしてもよろしいですか?」
「ああ、呼び立てた理由だね」
「はい」
リオナはグレンのこともある為、アレンも信用はしていなかった。正確には語弊があるが、リオナはすっかり恐れてしまっている。
「単刀直入に言おう、リオナ」
「は、はい……」
第一王子は真剣な眼差しになっていた。純真無垢なリオナはドキドキと鼓動が早まっていく。なにを言われるのか、とても気になるといったところか。
「私と婚約してくれないか?」
「……えっ? アレン様と……え?」
空耳だろうか? なにを言われたのか、リオナは理解できなかった。「婚約してくれ」と言ったような気がする。
「婚約をしてほしい。私と」
「アレン様と……婚約……?」
リオナは時が止まったような錯覚を起こしていた。何故、自分が第一王子と婚約という話になるのか、わかっていない。1週間前に第二王子である、グレンに振られたばかりなのに。
「私は以前から、其方のことを好いていた。昔から知っている仲でもあろう?」
「た、確かに……それは……」
アレンの言葉におそらく嘘はないのだろう。一応は幼馴染のような関係と言えるのかもしれない。アレンは23歳でリオナは17歳ではあるが。
リオナを好きといった彼の表情は真剣であり、目を逸らすことはしていない。有力貴族の令嬢として、本来であれば力強く頷くのが正解ではあるが……。ちらついているのは、グレンに振られた出来事だ……まだ、あれから1週間しか経っていない……。
「グレンが婚約を破棄したことは知っている。だからというわけではもちろんない。それから、非常識だということも重々承知の上だ」
「……アレン様……」
「グレンの仕出かしたことについては、私から謝らせてほしい。本当に済まなかった」
次期国王であるアレン・ハンフリー。リオナも有力貴族の娘とはいえ、彼が頭を下げることなど早々ないと言えるだろう。他の者に見られては示しのつかない事態と取られる可能性もあった。
しかし、それでも彼は謝ることが、少しでもリオナの悲しみを和らげることだと信じていたのだ。だからこそ臆面もなく実行したのだった。
「アレン様、頭を上げていただけませんか? アレン様のお気持ちはとても嬉しく思います」
「ありがとう。それで?」
アレンは彼女に言われて、頭の位置を元に戻した。回答を聞きたいと考えている。
「お時間をいただけませんでしょうか? 自分の中でも整理をしてみたいのです」
「ああ、もちろんだ。何なら、最初は婚約を前提にというところからでも構わない」
アレンは回答をせびる様子は毛頭ないようだ。リオナも安心した。自分の中で嬉しさや気恥ずかしさなどの感情が渦巻いてしまい、冷静さを欠いてしまっている。
だが、彼からの求婚は嬉しいことには間違いない。婚約破棄をされて1週間程度が経過し、悲しみが脳裏を駆け巡っていた。そんなリオナを照らす明かりが、目の前に降りて来ているのだ。
彼女はそのことをしっかりと胸に刻み、出来るだけ早く回答を出そうと考えていた。
「アレン王子様にお呼びいただければ、このリオナ・ギュスターブ。どちらへでも参上する気持ちにございます」
「そうか、感謝する」
シリンガ宮殿、アレン・ハンフリーの私室。リオナは現在、その場所に立っていた。彼女はアレンに挨拶をしているが、自分の言葉遣いが合っているのかわかっていない。本来はもっと尊敬語つかうのでは? などを考えてしまっている。
それほどに、目の前の人物ははるか高みの相手だったのだ。アレン・ハンフリー第一王子。王位継承権は堂々のトップに君臨しており、金髪の髪を綺麗に切り揃えた髪型は清潔感と二枚目な顔にマッチしていた。身体付きも筋肉質であり長身。民を導くのに相応しい外見と言える。
弟のグレンとは違い、女性関係など問題も起こさない紳士として見られている。グレン・ハンフリーよりもリオナとしては子供の頃から親しい間柄ではあった。
「お聞きしてもよろしいですか?」
「ああ、呼び立てた理由だね」
「はい」
リオナはグレンのこともある為、アレンも信用はしていなかった。正確には語弊があるが、リオナはすっかり恐れてしまっている。
「単刀直入に言おう、リオナ」
「は、はい……」
第一王子は真剣な眼差しになっていた。純真無垢なリオナはドキドキと鼓動が早まっていく。なにを言われるのか、とても気になるといったところか。
「私と婚約してくれないか?」
「……えっ? アレン様と……え?」
空耳だろうか? なにを言われたのか、リオナは理解できなかった。「婚約してくれ」と言ったような気がする。
「婚約をしてほしい。私と」
「アレン様と……婚約……?」
リオナは時が止まったような錯覚を起こしていた。何故、自分が第一王子と婚約という話になるのか、わかっていない。1週間前に第二王子である、グレンに振られたばかりなのに。
「私は以前から、其方のことを好いていた。昔から知っている仲でもあろう?」
「た、確かに……それは……」
アレンの言葉におそらく嘘はないのだろう。一応は幼馴染のような関係と言えるのかもしれない。アレンは23歳でリオナは17歳ではあるが。
リオナを好きといった彼の表情は真剣であり、目を逸らすことはしていない。有力貴族の令嬢として、本来であれば力強く頷くのが正解ではあるが……。ちらついているのは、グレンに振られた出来事だ……まだ、あれから1週間しか経っていない……。
「グレンが婚約を破棄したことは知っている。だからというわけではもちろんない。それから、非常識だということも重々承知の上だ」
「……アレン様……」
「グレンの仕出かしたことについては、私から謝らせてほしい。本当に済まなかった」
次期国王であるアレン・ハンフリー。リオナも有力貴族の娘とはいえ、彼が頭を下げることなど早々ないと言えるだろう。他の者に見られては示しのつかない事態と取られる可能性もあった。
しかし、それでも彼は謝ることが、少しでもリオナの悲しみを和らげることだと信じていたのだ。だからこそ臆面もなく実行したのだった。
「アレン様、頭を上げていただけませんか? アレン様のお気持ちはとても嬉しく思います」
「ありがとう。それで?」
アレンは彼女に言われて、頭の位置を元に戻した。回答を聞きたいと考えている。
「お時間をいただけませんでしょうか? 自分の中でも整理をしてみたいのです」
「ああ、もちろんだ。何なら、最初は婚約を前提にというところからでも構わない」
アレンは回答をせびる様子は毛頭ないようだ。リオナも安心した。自分の中で嬉しさや気恥ずかしさなどの感情が渦巻いてしまい、冷静さを欠いてしまっている。
だが、彼からの求婚は嬉しいことには間違いない。婚約破棄をされて1週間程度が経過し、悲しみが脳裏を駆け巡っていた。そんなリオナを照らす明かりが、目の前に降りて来ているのだ。
彼女はそのことをしっかりと胸に刻み、出来るだけ早く回答を出そうと考えていた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~
深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。
灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。
「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました
黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」
衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。
実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。
彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。
全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。
さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?
追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する
3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
婚約者である王太子からの突然の断罪!
それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。
しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。
味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。
「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」
エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。
そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。
「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」
義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる