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28話 動き出すグレン その1

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 その日、ヨハン国王は緊張していた。隣に立っている妻のリズリットも同じような気持ちだ。

「いよいよ、この時が来たのか……」

「ええ、そうですね。シャルロッテを隠し子だと、世間に公表するときね」


 選挙の準備期間中での隠し子の公表……なぜこのタイミングなのかについては、理由があった。裏ではグレンが動いていたのだ。彼はアレンとの選挙戦を有利に進める為に、父親や母親すらも利用していた。

『少しでも早く王族の犯した失態は、公表するべきだ』


 それがグレンがヨハン国王に投げかけた言葉である。あとは些末な言い回しで日程の調整をしていった。だが、全てはグレン・ハンフリーの計画である。腹違いの子供、シャルロッテの公表とそれに伴う国王の引退宣言により、多少は国民からの信頼は揺らいでしまうはず。

 その信頼の揺らぎは貴族社会全体にも波及するだろう。紳士的な態度で有名なアレン・ハンフリーも実は裏があるのではないか? と疑う者達も出て来るはず。

 そこからがグレンの狙いどころなのだ。グレン自身は最初から評判は悪く、女にもだらしないと通っている為に、特に影響を受けない。そのうえで「武力を使い統率する国家」をスローガンに掲げ、力こそ使うが平和ボケしない国家の樹立を宣言する。

 アレンとは正反対のスローガンではあるが、国民が揺らいでいる時にそれを掲げれば、賛同する者も増えるという寸法だ。

「よし、ユリア。いよいよ動くぞ……同時に裏組織の奴らも展開する仕掛けにはなっている」

「うわ~~~楽しみ……キャハハハハ、リオナ達、どんな反応するのかしら?」

「くくくく……」

 同時並行で裏組織の行動もある。そちらでも票を獲得できれば、自らの勝利は相当に近づくはず……グレンの自信は揺らぐことはなかった。

「しかし、本当に馬鹿な両親だよ。俺の言葉にまんまと引っかかるなんてな……」

「言っちゃ悪いけど、それだけは同感だわ。キャハハハハハ」


 大笑いをしているグレンとユリアの二人。本日の正午過ぎには予定通り、ヨハン国王による隠し子の公表が行われた。それを合図として、グレンの計画は始まりを告げたのだ……選挙戦は前半戦が終了し、中盤戦へと移行していくことになる。
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