えっ、婚約破棄ですか? 承知いたしました!!

あめり

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4話 オーチョ区画 その2

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「それで? カイル君は今日は来るのか?」

「父さん……なんで、カイルの名前が出て来るのよ?」

 実家での生活に戻ったアミーナだが、なぜかカイルの名前を聞くことが多くなっていた。主に父親であるアゴラ、それから母親であるクラリスからだ。

「あんたのこと、一番していたのはカイル君なのよ? 今度、家に呼んであげなさいよ」

「わかったよ、考えとく」


 彼女がオーチョ区画に戻って来てから数日が経過していた。侯爵の婚約者の一人になっていた時は、ほとんど実家に帰ってくることはなかった。その為、アミーナが不在の間のカイルの状況は当然知らなかったわけだが……アゴラとクラリスは、その時のカイルの様子を熱弁し始めていた。

「時折、家に来てはアミーナは帰ってないかとか……」

「そうねぇ……それから、アミーナにこれ渡してほしいとか……」

 幾つ出て来るんだと言わんばかりに、二人はカイルの思い出を語っていたのだ。その中には、王宮で過ごしていた頃、実家から送られてきた、マフラーなども含まれていた。あのマフラーはカイルが編んだ物らしい。

「女子かっ」

 アミーナは思わず、声に出して突っ込んでいた。こちらに帰ってから、真っ先にカイルとは出会ったが、そんな話は一切聞いていない。父と母の話が嘘でないのなら……アミーナはとても恥ずかしくなっていた。

「私、カイルに会ってくるね」

「それがいいわね。でも、夜はちゃんと帰って来なさいよ?」

「……どういう意味よ」

 クラリスのからかい半分の言葉を適当にスルーし、アミーナは家から出て行った。これ以上、二人からのからかいを受けると、倒れてしまいかねない。それ程に、彼女は照れていたのだ。


-----------------------


 カイルの両親は既に死亡しており、彼は妹と二人で暮らしている。年齢はアミーナと同じだが、苦労具合で言えば、オーチョ区画の中でもトップクラスと言えるのかもしれない。

「カイル、居る~~?」

「あれ? アミーナ?」

「シャンパじゃない、久しぶりね~~」

 アミーナが訪ねたカイルの家……そこには、短めのツインテールをした少女の姿があった。カイルの妹のシャンパだ。年齢は11歳、カイルとはそれなりに離れている。

「アミーナ、久しぶりだね。カイルを探してるの? ……はは~~~ん」

「な、なによ……?」

 見た目は可愛らしい11歳の少女ではあるが、苦労をしているからか、あまり子供という印象はない。なかなか空気を読むことにも長けている子であった。

「べっつに? カイル呼んでくるね、あと私出かけてくるから」

「ちょっとちょっと、なんか勘違いしてない? 11歳が変な気遣うんじゃないわよ」

 アミーナはそう言ったが、シャンパには聞こえていなかった。それから間もなくして、カイルが現れたのだ。

「よう、アミーナ。どうかしたのか?」

「う、うん……まあ、ね」

 出てきたカイルを目の前にして、照れてしまうアミーナ。そんな様子を見たシャンパは、

「それじゃ、ごゆっくり~~~~」

「ちょっ、シャンパ!」

 シャンパはいたずらっぽい笑みを浮かべながら、走り去って行った。残されたカイルとアミーナ……彼らの間にはなんとも微妙な空気が流れていたという。

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