博多はつ恋おわらせ屋〜シロヘビさんの幸運結び〜

葉方萌生

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第二章 長すぎた初恋

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「うわぁ……」

 検索結果を目にした姫華が苦い表情を浮かべる。
 
【博多のはつ恋おらわせ屋に行って来たんだけど、初恋を終わらせると初恋の人を忘れるんだって。そんなの聞いてないって笑 詐欺じゃん】

【噂の『はつ恋おわらせ屋』だけど、お店に行ったら白蛇に出会した。びっくりしてそのまま出て来ちゃった】

【友達が『博多はつ恋おらわせ屋』に行ったらしい。でも馴れ馴れしい店員から、初恋の人のことを忘れるけどいいかって聞かれて、イラッとして帰って来たって笑 確かに馴れ馴れしいのはやだな笑 所詮子ども騙しやろ】

 すべて、ここ二週間のうちに投稿された内容だった。
 詐欺。
 子ども騙し。
 皆好き勝手に『はつ恋おわらせ屋』のことを書き込んでいる。良い評判は一つもなくて、ネガティブな内容ばかりだった。

 SNSに疎い凪は「何見とーと?」と興味津々に姫華に問いかける。
 姫華はXに書き込まれた投稿を凪に教えるか迷ったが、お店を良くするためには“お客様の声”から目を逸らしてはいけないと思い、「これ」とスマホの画面を見せた。

 しばらくの間、凪はじっとスマホの画面を食い入るようにして見つめていた。
 そして、すべての投稿を読み終えたのか、無言でスマホから視線を外し、お店の奥のほうへと引っ込んでいった。

 まずい。落ち込ませてしまっただろうか……?
 申し訳ない気持ちになる姫華だったが、凪がほうきとちりとりを手に戻って来た時には「へ?」と間抜けな声が漏れた。

「えっと……大丈夫?」

 何事もなかったかのように床を箒ではき始めた凪に、姫華は恐る恐る声をかける。

「大丈夫って何が?」

「いや、だからさっきの投稿。お店のことネガキャンされとったやん。傷つけちゃったかと思って」

 姫華がそう言うと、凪は姫華のほうを振り返り、きょとんとした顔で姫華を見つめた。
 それから、ふっと真顔で軽く息を吐いて、「あのね、姫華」と彼女の名前を呼んだ。

「私は、私のお店のことを悪く言う人に興味はないよ。心の枷になっている初恋を終わらせたい、本気で救われたいって思う人だけが救われる世界だよ」

 静かな語り口調の中に、凛とした彼女の信念のようなものを垣間見た気がした。

「本気で救われたいと思う人だけが救われる世界、か」

 凪が口にした言葉を反芻して、姫華はテーブルに頬杖をついた。
 SNSで悪口を書かれてもノーダメージで自分の信条を貫く凪のことを、素直に格好良いなと思う。
 凪は、そんな姫華の気持ちも知らず、そのまま掃除を続けるのだった。

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