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第二章 長すぎた初恋
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瞳が自宅から出ていって、どれぐらいの時間が流れただろうか。
別れても、職場では相変わらず顔を合わせる。光一ははじめ、仕事に行く気も起きないと思ったが、逆に仕事をしていると少しは気が紛れた。
だが、視界の端に映り込む瞳の姿に、どうしても彼女と過ごした長年の記憶が走馬灯のように蘇ってしまう。瞳は光一と目が合っても、さっと目を逸らしてしまう。
「忘れたい」
瞳のことを忘れて、前に進みたい。まだ次の恋をしようなんて気にはならないけれど、瞳にとらわれたままでは、仕事にも支障が出る。それに、いつまでも未練がましい毎日を送るのにも、心が限界に達していた。
「忘れたいなぁ」
瞳がいなくなった自宅で、ぽつりとつぶやく。
自分はたぶん、この先一生瞳のことを忘れることができない。
自分の中の瞳の亡霊とともに、他の誰も愛せぬまま時間だけが過ぎて老いていくだけだろう。
それならばいっそのこと、彼女のことを記憶から消してしまいたい。
最初は後ろ向きな気持ちで、スマホを手に取り、「初恋を忘れるには」「呪い」などというワードで検索をしてみたのだが、もちろんそんなオカルトめいた儀式のようなものはこの世に存在しないことが分かった。
「あるわけないよな」
非科学的な儀式なんかで記憶を消せるなら、それはビッグニュースになっているはずだし、もっと話題になっていてもおかしくない。
はあ、とため息を吐いた光一は、手慰みにSNSのXを開いた。
検索窓にまた、「初恋」「忘れたい」と今の気持ちを打ち込む。
【博多の中洲らへんに、初恋を忘れられるお店があるんだってー。本当に?笑 でも忘れたい人がいるならダメ元でも行ってみたいかも】
ぼんやりとした頭に閃光が駆け抜けるかのように飛び込んできたその一文を見て、目玉が飛び出すぐらい驚いた。
慌てて指を画面の上で滑らせて、情報収集を始める。現代の検索機能を使えば、そのお店を特定するのは簡単だった。
「『博多はつ恋おわらせ屋』……店主は白石凪さん」
細かく調べていくと、なんと店主の凪さんはシロヘビに変化するのだとかどうとか。
さすがに光一もそこまで信じたわけではない。きっと、シロヘビの着ぐるみでも着るのだろうと適当に想像をしていた。シロヘビって縁起がいいし。シロヘビの着ぐるみを着た女性が大真面目に初恋を忘れる儀式をしているところを思い浮かべて、ふっと笑みがこぼれた。
そして今。
光一は本当にシロヘビに変化した凪の前で、儀式を受けている。
胸の痛みと向き合いながら、瞳との過去を思い出し、瞳のことを忘れようと強く決心した。
「瞳……」
たくさん、嫌なこと押し付けてごめんな。
価値観が合わない俺とずっと一緒にいてくれてありがとう。
俺は瞳のやさしさに甘えてたんだ。
だからこれからは、瞳がいない世界を自分の足で歩いていく。
「さようなら」
その言葉を口にした途端、光一の心がくしゃりと泣いた。
ずっと忘れたいと思っていたのに、いざ忘れるとなると寂しくて仕方がなかった。
それでも、自分を奮い立たせるために拳を強く握りしめる。
瞳がこの先幸せに生きてくれることを願って、俺は俺の幸せを探しにいく——と。
別れても、職場では相変わらず顔を合わせる。光一ははじめ、仕事に行く気も起きないと思ったが、逆に仕事をしていると少しは気が紛れた。
だが、視界の端に映り込む瞳の姿に、どうしても彼女と過ごした長年の記憶が走馬灯のように蘇ってしまう。瞳は光一と目が合っても、さっと目を逸らしてしまう。
「忘れたい」
瞳のことを忘れて、前に進みたい。まだ次の恋をしようなんて気にはならないけれど、瞳にとらわれたままでは、仕事にも支障が出る。それに、いつまでも未練がましい毎日を送るのにも、心が限界に達していた。
「忘れたいなぁ」
瞳がいなくなった自宅で、ぽつりとつぶやく。
自分はたぶん、この先一生瞳のことを忘れることができない。
自分の中の瞳の亡霊とともに、他の誰も愛せぬまま時間だけが過ぎて老いていくだけだろう。
それならばいっそのこと、彼女のことを記憶から消してしまいたい。
最初は後ろ向きな気持ちで、スマホを手に取り、「初恋を忘れるには」「呪い」などというワードで検索をしてみたのだが、もちろんそんなオカルトめいた儀式のようなものはこの世に存在しないことが分かった。
「あるわけないよな」
非科学的な儀式なんかで記憶を消せるなら、それはビッグニュースになっているはずだし、もっと話題になっていてもおかしくない。
はあ、とため息を吐いた光一は、手慰みにSNSのXを開いた。
検索窓にまた、「初恋」「忘れたい」と今の気持ちを打ち込む。
【博多の中洲らへんに、初恋を忘れられるお店があるんだってー。本当に?笑 でも忘れたい人がいるならダメ元でも行ってみたいかも】
ぼんやりとした頭に閃光が駆け抜けるかのように飛び込んできたその一文を見て、目玉が飛び出すぐらい驚いた。
慌てて指を画面の上で滑らせて、情報収集を始める。現代の検索機能を使えば、そのお店を特定するのは簡単だった。
「『博多はつ恋おわらせ屋』……店主は白石凪さん」
細かく調べていくと、なんと店主の凪さんはシロヘビに変化するのだとかどうとか。
さすがに光一もそこまで信じたわけではない。きっと、シロヘビの着ぐるみでも着るのだろうと適当に想像をしていた。シロヘビって縁起がいいし。シロヘビの着ぐるみを着た女性が大真面目に初恋を忘れる儀式をしているところを思い浮かべて、ふっと笑みがこぼれた。
そして今。
光一は本当にシロヘビに変化した凪の前で、儀式を受けている。
胸の痛みと向き合いながら、瞳との過去を思い出し、瞳のことを忘れようと強く決心した。
「瞳……」
たくさん、嫌なこと押し付けてごめんな。
価値観が合わない俺とずっと一緒にいてくれてありがとう。
俺は瞳のやさしさに甘えてたんだ。
だからこれからは、瞳がいない世界を自分の足で歩いていく。
「さようなら」
その言葉を口にした途端、光一の心がくしゃりと泣いた。
ずっと忘れたいと思っていたのに、いざ忘れるとなると寂しくて仕方がなかった。
それでも、自分を奮い立たせるために拳を強く握りしめる。
瞳がこの先幸せに生きてくれることを願って、俺は俺の幸せを探しにいく——と。
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