選ばれなくてよかったと、今は思います

たくわん

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クロードから手紙が届いたのは、案件成立から四日後のことだった。

差出人の名前を見た瞬間、セシルは少し間を置いてから封を開けた。

文面は短かった。
先日の文書院での様子を見て、改めて話がしたいと思った。
時間を作ってもらえないか。
個人的に、大切な話がある。

セシルは手紙を折って、机の引き出しにしまった。


二日後、クロードが王都の茶館を指定してきた。

断ることもできた。
でも、答えを引き伸ばすことが自分に誠実かどうかと考えて、行くことにした。

茶館は静かな通り沿いにあった。
クロードはすでに来ていて、入口でセシルを見つけると立ち上がった。

「来てくれてよかった」

向かい合って座ると、クロードはすぐに切り出した。

「復縁を申し込みたい」

セシルは紅茶のカップに手を伸ばして、それから止めた。

「理由を聞かせてください」

「先日、文書院での君を見た。長官に名前を呼ばれていた。……正直に言う。君があそこまでやれる人だとは、思っていなかった」

「知らなかっただけでしょう」

「そうだ。私が見ていなかった。だから……やり直したいと思っている」

クロードの目は真剣だった。
嘘をついているようには見えなかった。

でも、セシルはその真剣さを受け取りながら、自分の中に何があるかを静かに確認した。

嬉しいか。
胸が動くか。
あの五年間に戻りたいか。

どれも、なかった。

「考えさせてください」

その日は、それだけ言って別れた。


帰り道、夕暮れの石畳を歩きながら、セシルは自分に問いかけた。

クロードが必要だったのか。
それとも、誰かに選ばれることが必要だったのか。

五年間を振り返ると、後者だった気がした。

選ばれていることで、自分の場所があると思っていた。
仕事の話ができなくても、意見が合わなくても、隣にいてくれるだけで安心していた。
それは愛情だったのか、それとも安全への依存だったのか。

今はもう、その問いが怖くなかった。

文書院に行けば仕事がある。
やり遂げた案件がある。
エドワードに名前を呼ばれた記憶がある。

選ばれなくても、自分の場所はもうここにあった。

夕風が吹いて、木の葉が道に落ちた。

セシルはそれを踏みながら、まっすぐ歩き続けた。
答えは、もうほとんど出ていた。
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