虚弱体質？の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

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薬草園は花々で満たされていた。白いバラのアーチの下に祭壇が設けられ、その周りを色とりどりの花々が囲んでいる。ラベンダーの紫、カモミールのクリーム色、マリーゴールドの黄金色。すべてセラフィーナが育てた花々だ。

招待客は多くない。セラフィーナとエドウィンは、親しい人々だけを招くことにした。侯爵家の親族、薬草園で働く人々、王立薬学院の同僚たち、そして事業で知り合った医師や薬剤師たち。

質より量を選んだ結婚式は、温かな雰囲気に満ちていた。

ロデリック侯爵に腕を取られ、セラフィーナは薬草園の小道を歩いた。白いドレスの裾が、柔らかな草を撫でる。

招待客たちの視線が集まる。その目には驚嘆と祝福が満ちていた。かつて病弱だった令嬢が、こんなにも健康的で美しくなるとは。

祭壇の前では、エドウィンが待っていた。落ち着いた紺色の礼服を着た彼は、セラフィーナを見つめて微笑んだ。その目には、深い愛情と尊敬が宿っている。

父がセラフィーナの手をエドウィンに渡す。

「娘を頼む」
「必ず幸せにします」

エドウィンの言葉に、ロデリック侯爵は満足げに頷いた。

王立教会から派遣された司祭が、厳かな声で式を始めた。

「本日、我々はここに集い、エドウィン・グレイとセラフィーナ・アルトリアの結婚を祝福する」

司祭の言葉が、静かな薬草園に響く。鳥のさえずりが祝福の歌のように聞こえた。

「エドウィン・グレイ、汝はセラフィーナ・アルトリアを妻とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、共に歩むことを誓うか?」
「誓います」

エドウィンの声は明瞭で力強かった。

「セラフィーナ・アルトリア、汝はエドウィン・グレイを夫とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、共に歩むことを誓うか?」
「誓います」

セラフィーナの声は、三年前とは比べものにならないほど力強かった。

二人は指輪を交換した。シンプルだが美しい銀の指輪。内側には、それぞれが選んだ薬草の名前が刻まれている。セラフィーナの指輪には「ローズマリー」、エドウィンの指輪には「セージ」。

「記憶」と「知恵」を象徴する薬草だ。

「では、誓いのキスを」

エドウィンはセラフィーナの頬に手を添え、優しくキスをした。招待客たちから、温かな拍手が湧き起こる。

セラフィーナは目を閉じた。このキスが、新しい人生の始まりだ。アレクシスに拒絶された過去ではなく、エドウィンと共に歩む未来へ。

拍手の中、二人は招待客たちに向き直った。

父ロデリック侯爵が最初に前に出て、二人を抱きしめた。

「幸せになりなさい、セラフィーナ」
「ありがとう、父上」

侍女頭のマルタが涙を拭いながら祝福の言葉を述べる。老庭師トーマスは、二人のために特別に育てた薬草の鉢植えを贈った。

王立薬学院の院長が進み出た。七十を過ぎた老学者だが、目は知性の光に満ちている。

「グレイ君、セラフィーナ嬢、おめでとう。君たちの研究が、多くの命を救っていることを、我々は誇りに思う」
「ありがとうございます、院長」

エドウィンとセラフィーナは深く頭を下げた。

「そして」

院長は声を高めた。

「二人の共同研究である新型鎮痛剤について、王立薬学院は正式な認可を与える。これは医学史に残る偉業だ」

招待客たちから、再び大きな拍手が起こった。セラフィーナとエドウィンが開発した鎮痛剤は、従来品の三倍の効果がありながら、副作用が少ない画期的なものだった。

「私たちの研究が、人々の役に立てるなら幸せです」

セラフィーナの言葉に、招待客たちは感動の表情を浮かべた。

披露宴は、薬草園の中庭で催された。豪華ではないが、心のこもった料理が並ぶ。セラフィーナが開発した薬草茶も、招待客たちに振る舞われた。

「これは素晴らしい」
「こんなに香り高いお茶は初めてだ」

招待客たちの賞賛の声が上がる。セラフィーナの事業は、もはや王国中に知られていた。

夕暮れ時、セラフィーナとエドウィンは二人きりで薬草園を歩いた。招待客たちは温かく二人を見送り、それぞれ帰路についている。

「素晴らしい一日でしたね」

エドウィンが言った。

「ええ、こんなに幸せな日が来るなんて、三年前には想像もできなかった」

セラフィーナは薬草園を見渡した。夕日に照らされた花々が、黄金色に輝いている。

「あなたと出会えて、本当に良かった」
「私もです、セラフィーナ」

二人は抱き合い、長いキスを交わした。新しい人生が、今ここから始まる。

夜、侯爵邸の窓々に明かりが灯った。セラフィーナとエドウィンのために用意された新居は、本館に隣接する別館だ。そこには研究室も併設されており、二人で薬草の研究を続けられるようになっている。

「ここが私たちの家ですね」

セラフィーナは部屋を見渡した。

「ええ、ここで共に研究し、共に生きていきましょう」

エドウィンはセラフィーナの手を取り、もう一度キスをした。月明かりが窓から差し込み、二人を優しく照らす。

薬草園では、夜風が花々を揺らしていた。明日からまた、セラフィーナとエドウィンの新しい日々が始まる。