虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん

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陣痛は一晩中続いた。セラフィーナは前世の知識を活かし、呼吸法で痛みに耐えた。エドウィンは一睡もせずに、ずっと手を握っていてくれた。

「もう少しです、奥様」

助産師が励ました。

「もう一度、力を入れてください」

セラフィーナは歯を食いしばり、力を込めた。前世で多くの出産に立ち会ってきたが、自分が産む側になると全く違う。

「見えました! 頭が見えています!」

助産師の声に、セラフィーナは最後の力を振り絞った。

そして―

「おぎゃあ! おぎゃあ!」

力強い産声が響いた。

「男の子です!」

助産師が赤ちゃんを抱き上げた。小さな命が、力いっぱい泣いている。

「セラフィーナ、よく頑張りました」

エドウィンの目に涙が光っていた。

「まだです、もう一人いますよ!」

助産師の言葉に、二人は驚いた。双子だったのだ。

数分後、もう一度産声が響いた。

「女の子です!」

二人目の赤ちゃんも、元気に泣いていた。

「双子...」

セラフィーナは疲労の中で、微笑んだ。

「男の子と女の子」

清められた赤ちゃんたちが、セラフィーナの胸に抱かれた。小さな手、小さな足、柔らかな肌。二つの新しい命。

「こんにちは」

セラフィーナは優しく語りかけた。

「私があなたたちのママよ」

赤ちゃんたちは泣き止み、母親の顔を見つめた。まだ焦点の合わない目だが、確かに何かを感じているようだった。

「私が父親です」

エドウィンも赤ちゃんたちに語りかけた。

「二人とも、よく来てくれました」

数時間後、ロデリック侯爵が部屋を訪れた。厳格な父も、孫たちの顔を見ると表情が緩んだ。

「立派な跡継ぎだ」

男の子を抱き上げた。

「そして美しい令嬢だ」

女の子にも触れた。

「セラフィーナ、よくやった」
「ありがとうございます、父上」

名前は数日かけて決めた。男の子は「リオン」、女の子は「エリア」。どちらも、希望と光を意味する名前だ。

最初の数週間は、セラフィーナにとって試練の連続だった。夜泣き、授乳、オムツ替え。双子の世話は想像以上に大変だった。

でもエドウィンが献身的に手伝ってくれた。夜中の授乳も交代で行い、オムツ替えも積極的にやってくれる。

「学者としての仕事は?」

セラフィーナが心配して尋ねた。

「今は父親であることが最優先です」

エドウィンは微笑んだ。

「研究はいつでもできます。でも、この子たちの成長は今だけです」

侍女たちも総出で手伝ってくれた。マルタは経験豊富な母親として、的確なアドバイスをくれる。

「奥様、たまには休んでください」
「でも...」
「私たちが見ていますから」

セラフィーナは感謝の気持ちでいっぱいだった。一人では到底できないことを、多くの人が支えてくれている。

三ヶ月が過ぎると、リオンとエリアは随分と大きくなった。よく笑うようになり、親の顔を認識するようになった。

「パパですよ」

エドウィンがリオンに語りかけると、赤ちゃんは笑顔を返した。

「ママよ」

セラフィーナがエリアを抱くと、小さな手が髪を掴んだ。

育児と並行して、セラフィーナは徐々に研究にも復帰し始めた。授乳の合間に論文を読み、赤ちゃんが寝ている間に実験の計画を立てる。

「無理していませんか?」

エドウィンが心配した。

「大丈夫よ。これが私のペースだから」

セラフィーナは微笑んだ。母親であることと研究者であること、両方を大切にしたい。

半年が過ぎた頃、リオンとエリアは寝返りを始めた。

「見て、エドウィン!」

セラフィーナが興奮して呼んだ。リオンが初めて寝返りに成功したのだ。

「すごい!」

エドウィンも喜んだ。

数日後、エリアも寝返りに成功した。双子は競うように成長していく。

一歳の誕生日には、小さな祝賀会を開いた。家族と親しい人々だけの、温かな集まりだ。

「大きくなったものだ」

ロデリック侯爵が感慨深げに言った。

「あっという間でした」

セラフィーナも同じ思いだった。この一年、大変だったけれど、かけがえのない時間だった。

リオンとエリアは、それぞれの個性を見せ始めていた。リオンは好奇心旺盛で、何でも触ろうとする。エリアは慎重派で、よく観察してから行動する。

「お兄ちゃんと妹、性格が違うわね」

セラフィーナがエドウィンに言った。

「それがいいんです。個性があるということは、健康に育っている証拠です」

二歳になると、二人は歩き始めた。最初は不安定だったが、すぐに走り回るようになった。

薬草園が二人の遊び場になった。花々の間を走り回り、土を触り、虫を観察する。

「危ないから気をつけて」

セラフィーナは注意深く見守った。でも、あまり過保護にはしたくない。自分で経験することも大切だ。

ある日、リオンが薬草の葉を摘んで持ってきた。

「これ、ママが使ってるやつ?」
「そうよ、よく覚えていたわね」

セラフィーナは驚いた。まだ二歳なのに、研究室で見た薬草を覚えているのだ。

「リオンは観察力があるわね」

エドウィンが感心した。

「将来は研究者になるかもしれません」

エリアは絵を描くのが好きだった。色鉛筆を持たせると、何時間でも集中して描いている。

「上手ね、エリア」

セラフィーナが褒めると、エリアは嬉しそうに微笑んだ。

「これ、お花」
「そうね、とても綺麗に描けているわ」

三歳の誕生日、二人は初めて社交界のパーティーに参加した。子供向けの小さな集まりだったが、リオンとエリアは他の子供たちとすぐに打ち解けた。

「社交性もあるわね」

セラフィーナは安心した。自分が子供の頃は病弱で社交が苦手だったが、二人は健康で活発だ。

夜、寝る前の絵本の時間。セラフィーナは二人に読み聞かせをした。

「むかしむかし、あるところに...」

リオンとエリアは真剣な表情で聞いている。絵本が終わると、必ず質問してくる。

「ママ、どうして主人公は勇気を出せたの?」
「大切な人を守りたかったからよ」
「ふーん」

リオンは考え込んだ。エリアは眠そうにあくびをした。

「さあ、もう寝ましょう」

セラフィーナは二人にキスをして、ベッドに寝かせた。

隣の部屋で、エドウィンが待っていた。

「二人とも寝ましたか?」
「ええ、すぐに寝入ったわ」

セラフィーナはエドウィンの隣に座った。

「いい子供たちですね」
「本当に。私たちは幸運だわ」

窓の外を見ると、薬草園が月明かりに照らされていた。あの場所から、すべてが始まった。

「エドウィン」
「なんでしょう?」
「幸せ?」
「これ以上ないくらいに」

エドウィンはセラフィーナの手を取った。

「あなたと出会えて、家族を持てて、研究も続けられて。夢のようです」
「私もよ」

セラフィーナは微笑んだ。婚約破棄から五年。今の幸せを、あの日想像できただろうか。

いや、想像以上だ。復讐など考えなくて良かった。ただ自分らしく生きること、それが最高の人生だった。

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