私はもう、あなたの所有物ではありません

たくわん

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第四章 対決と真実の暴露

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リーゼが完全に回復するまでに、さらに一週間を要した。

魔力枯渇の後遺症は重く、最初の数日は起き上がることもままならなかった。エルザが付きっきりで看病し、アルヴィンは一日に何度も様子を見に来た。ただし扉を開けてリーゼの顔を確認すると、「寝ていろ」とだけ言って去る。不器用なのは相変わらずだった。

体が動くようになった頃、二度目の使者が王都から届いた。

今度は前回とは全く異なっていた。使者は国王直属の侍従長で、携えていたのは勅令ではなく、国王エルンストの親書だった。

アルヴィンの執務室で、リーゼも同席して親書が読み上げられた。

「リーゼ・フォン・ヴァイセン嬢に対する王家の非礼を深くお詫び申し上げる。第二王子クラウスの行為は王家の恥であり、その責任は国王たる私にもある」

リーゼは目を見開いた。国王自らの謝罪。これは前例のないことだった。

親書は続いた。

「王都の結界は消失し、民が苦しんでいる。これを修復できるのは貴女の力のみと承知している。王家として正式にお力添えをお願い申し上げる。ノルトハイム公爵にも、同道をお願いしたい。貴女の安全と名誉は、国王の名において保証する」

侍従長が頭を下げた。

「陛下は心からの謝罪と要請であると仰せです。ご返答はいつでも結構です」

アルヴィンは腕を組んで黙っていた。前回の勅使とは違い、今回の使者には敵意を向けなかった。だが表情は硬い。

使者が退室した後、二人きりになった。

「どうする」

アルヴィンが訊いた。

リーゼは窓の外を見た。雪原の向こう、遥か南に王都がある。かつて自分が捨てられた場所。

「行きます」

声は静かだったが、迷いはなかった。

「王家への義理ではありません。あの街には何の罪もない人たちがいます。子供がいて、お年寄りがいて、毎日を懸命に生きている人たちが。その人たちが魔物に怯えているのを知っていて、見て見ぬふりはできません」

アルヴィンはしばらくリーゼを見つめていた。

「わかっていた。お前はそう言うと思っていた」

「すみません」

「謝るな。それがお前の強さだ」

アルヴィンが窓辺に歩み寄り、南の空を見た。

「約束通り、俺も行く。騎士団の精鋭を連れて同行する」

「ありがとうございます」

「一つ条件がある」

「何でしょう」

アルヴィンが振り返った。蒼い瞳が真剣だった。

「結界を修復したら、北に帰る。王都には残らない。お前の居場所はここだ」

リーゼの胸が温かくなった。

「はい。必ず帰ります」

アルヴィンは小さく頷いた。その横顔に安堵が滲んだのを、リーゼは見逃さなかった。


出発は三日後と決まった。

ハインリヒが手配を進め、アルヴィンの精鋭騎士団二十名が同行することになった。エルザも「リーゼ様のお世話は私が」と譲らず、随行が認められた。

出発の前夜、リーゼは自室で荷造りをしていた。

手袋を手に取り、掌に当てる。アルヴィンがくれた、魔石の手袋。

この手で、王都の結界を蘇らせる。そして終わったら、ここに帰ってくる。

この雪の大地に。この屋敷に。この人の隣に。

リーゼは手袋を丁寧に鞄に仕舞い、母のブローチを胸元につけた。

「行ってきます、お母様」

窓の外で、北方の星が冷たく輝いていた。


出発の朝、屋敷の前に領民たちが集まっていた。

ヴィンターフェルトの人々が、リーゼを見送りに来たのだ。広場で蕪をくれたおかみ、膝を治してやった女の子とその母親、パン屋の主人。見知った顔が並んでいる。

「リーゼ様、行ってらっしゃいませ!」
「王都の奴らに目にもの見せてやってください!」
「必ず帰ってきてくださいね!」

声援が雪原に響く。リーゼは馬車の窓から手を振り、涙をこらえた。

「必ず帰ってきます」

その言葉を胸に刻んで、馬車は南へ向かって走り出した。振り返ると、手を振る人々の姿が白い景色の中に小さくなっていく。

隣のエルザが、リーゼの手をそっと握った。

「大丈夫ですよ。みんな待っていますから」

リーゼは頷き、前を向いた。南の空は、まだ遠い。
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