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第四章 対決と真実の暴露
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結界修復の準備が進む中、もう一つの決着がつこうとしていた。
ハインリヒが北方から持参した証拠書類一式が、宮廷魔術師団長オルトヴィンの手に渡された。工作員の証言調書、ミレーユからの指示書の写し、そしてグレーテルを通じて流出したリーゼの私信。
「これは決定的ですな」
オルトヴィンは書類を読み終え、深い息をついた。
「聖女詐称に加えて、北方への工作活動。しかも禁術書の知識を用いた疑いまである」
「禁術書?」
リーゼが訊き返した。オルトヴィンの執務室で、アルヴィンとハインリヒも同席していた。
「ミレーユ・パーシヴァルが王子に取り入る際に使った知識の一部が、教会の禁術書に記載された内容と一致しています。一般には流通していない文献です」
「前世の知識とやらの正体か」
アルヴィンが低く言った。
オルトヴィンが頷いた。
「彼女が本当に転生者なのか、あるいは何らかの方法で禁術書を入手したのかは不明です。しかし禁術書の内容を利用したこと自体が重罪にあたります」
リーゼは眉をひそめた。ミレーユの「前世の知識」が禁術書の受け売りだったとすれば、転生者という主張すら怪しい。あるいは転生者であっても、この世界での行いが許されるわけではない。
「調査の過程で、もう一つ判明したことがあります」
オルトヴィンが新たな書類を広げた。
「ミレーユは王子に聖女と認めさせるために、微量の魔法薬を使用していた形跡があります。幻惑の効果を持つ薬で、服用させた相手の判断力を鈍らせ、言葉を信じやすくさせるものです」
「王子に薬を……」
「茶や食事に混ぜていたと推測されます。クラウス殿下が急にリーゼ嬢を蔑ろにし始めた時期と、ミレーユが宮廷に出入りし始めた時期が一致しています」
リーゼは複雑な感情に襲われた。クラウスの豹変が薬の影響だったとすれば、あの残酷な言葉の全てが本心ではなかった可能性がある。だがそれで許せるかと言えば、話は別だ。薬の影響があったとしても、根底にあった見下しの感情は本物だっただろう。
アルヴィンが口を開いた。
「証拠は十分だ。いつ動く」
「明日、宮廷の正式な場で。国王陛下の許可はすでに得ています」
オルトヴィンの目が静かな怒りを湛えていた。この老魔術師もまた、真実を蔑ろにされたことに我慢がならなかったのだろう。
その夜、リーゼは客室の窓辺に立っていた。
王都の夜景は以前より暗い。結界がないため、夜間の灯りを最小限に抑えているのだ。魔物は光に引き寄せられる性質がある。
「明日で全てが明らかになります」
背後にアルヴィンの気配があった。いつの間にか部屋の入口に立っている。
「ミレーユの断罪は、お前にとっても区切りになるだろう」
「はい。でも、少しだけ複雑な気持ちもあります」
「薬のことか」
「クラウス殿下が操られていたのだとしたら、あの方もある意味では被害者です。もちろん、だからといって私に対する仕打ちが帳消しになるわけではありませんが」
アルヴィンは少し考えてから言った。
「あの王子が薬なしでも同じことをしたかどうかは、誰にもわからん。だが一つ確かなのは、お前が北方に来たことは結果として正しかった」
「そう、ですね」
「あの舞踏会がなければ、俺はお前を迎えに行く口実を得られなかった」
リーゼは驚いてアルヴィンを見た。彼は窓の外に視線を向けたまま、ぽつりと続けた。
「不謹慎かもしれんが、あの王子には感謝している部分もある。お前を手放してくれたことに」
リーゼの胸が熱くなった。
「アルヴィン様」
「何だ」
「明日、一緒にいてくださいますか」
「当たり前だ」
短く、だが揺るぎない返事だった。リーゼは微笑んだ。
明日、全ての偽りが暴かれる。
ハインリヒが北方から持参した証拠書類一式が、宮廷魔術師団長オルトヴィンの手に渡された。工作員の証言調書、ミレーユからの指示書の写し、そしてグレーテルを通じて流出したリーゼの私信。
「これは決定的ですな」
オルトヴィンは書類を読み終え、深い息をついた。
「聖女詐称に加えて、北方への工作活動。しかも禁術書の知識を用いた疑いまである」
「禁術書?」
リーゼが訊き返した。オルトヴィンの執務室で、アルヴィンとハインリヒも同席していた。
「ミレーユ・パーシヴァルが王子に取り入る際に使った知識の一部が、教会の禁術書に記載された内容と一致しています。一般には流通していない文献です」
「前世の知識とやらの正体か」
アルヴィンが低く言った。
オルトヴィンが頷いた。
「彼女が本当に転生者なのか、あるいは何らかの方法で禁術書を入手したのかは不明です。しかし禁術書の内容を利用したこと自体が重罪にあたります」
リーゼは眉をひそめた。ミレーユの「前世の知識」が禁術書の受け売りだったとすれば、転生者という主張すら怪しい。あるいは転生者であっても、この世界での行いが許されるわけではない。
「調査の過程で、もう一つ判明したことがあります」
オルトヴィンが新たな書類を広げた。
「ミレーユは王子に聖女と認めさせるために、微量の魔法薬を使用していた形跡があります。幻惑の効果を持つ薬で、服用させた相手の判断力を鈍らせ、言葉を信じやすくさせるものです」
「王子に薬を……」
「茶や食事に混ぜていたと推測されます。クラウス殿下が急にリーゼ嬢を蔑ろにし始めた時期と、ミレーユが宮廷に出入りし始めた時期が一致しています」
リーゼは複雑な感情に襲われた。クラウスの豹変が薬の影響だったとすれば、あの残酷な言葉の全てが本心ではなかった可能性がある。だがそれで許せるかと言えば、話は別だ。薬の影響があったとしても、根底にあった見下しの感情は本物だっただろう。
アルヴィンが口を開いた。
「証拠は十分だ。いつ動く」
「明日、宮廷の正式な場で。国王陛下の許可はすでに得ています」
オルトヴィンの目が静かな怒りを湛えていた。この老魔術師もまた、真実を蔑ろにされたことに我慢がならなかったのだろう。
その夜、リーゼは客室の窓辺に立っていた。
王都の夜景は以前より暗い。結界がないため、夜間の灯りを最小限に抑えているのだ。魔物は光に引き寄せられる性質がある。
「明日で全てが明らかになります」
背後にアルヴィンの気配があった。いつの間にか部屋の入口に立っている。
「ミレーユの断罪は、お前にとっても区切りになるだろう」
「はい。でも、少しだけ複雑な気持ちもあります」
「薬のことか」
「クラウス殿下が操られていたのだとしたら、あの方もある意味では被害者です。もちろん、だからといって私に対する仕打ちが帳消しになるわけではありませんが」
アルヴィンは少し考えてから言った。
「あの王子が薬なしでも同じことをしたかどうかは、誰にもわからん。だが一つ確かなのは、お前が北方に来たことは結果として正しかった」
「そう、ですね」
「あの舞踏会がなければ、俺はお前を迎えに行く口実を得られなかった」
リーゼは驚いてアルヴィンを見た。彼は窓の外に視線を向けたまま、ぽつりと続けた。
「不謹慎かもしれんが、あの王子には感謝している部分もある。お前を手放してくれたことに」
リーゼの胸が熱くなった。
「アルヴィン様」
「何だ」
「明日、一緒にいてくださいますか」
「当たり前だ」
短く、だが揺るぎない返事だった。リーゼは微笑んだ。
明日、全ての偽りが暴かれる。
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