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第四章 対決と真実の暴露
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ミレーユの断罪が終わった直後、審問はもう一つの案件に移った。
クラウス第二王子の処分だ。
クラウスは末席に座ったまま、顔面蒼白で動けずにいた。ミレーユに薬を盛られていたという事実は、この場で初めて知ったのだ。裏切られた怒りと、自分が操られていた屈辱が綯い交ぜになり、思考が追いつかない。
「クラウス・フォン・エルステリア」
国王の声が広間に響いた。
「立て」
クラウスはよろめきながら立ち上がった。
「お前はミレーユの薬によって判断力を損なわれていた。その点については情状酌量の余地がある」
クラウスの顔に一瞬、安堵が浮かんだ。だが国王の言葉は続いた。
「しかし、薬の影響を差し引いても、お前の行いには弁解の余地がない」
安堵が凍りついた。
「聖女を公衆の面前で辱めた行為は、薬のせいだけでは説明がつかない。お前にはもともと、リーゼ嬢を軽んじる心があった。華やかさを求め、本質を見る目を持たなかった。それは薬の問題ではなく、人格の問題だ」
クラウスが唇を噛んだ。
「さらに、ミレーユの素性を見抜けなかった責任がある。聖女の力を検証もせずに信じ、婚約者を切り捨てた。王族としての判断力の欠如は致命的だ」
国王は重臣たちを見渡した。誰一人として、クラウスを擁護する者はいなかった。
かつてクラウスの取り巻きだった貴族たちは、蜘蛛の子を散らすように目を逸らしている。権力の風向きが変わった今、クラウスに味方する利はない。
「以上を踏まえ、クラウス・フォン・エルステリアの王位継承権を剥奪する」
広間にどよめきが走った。継承権の剥奪。それは王族として事実上の死刑宣告に等しい。
「異議は」
「ある!」
クラウスが叫んだ。
「俺は被害者だ! ミレーユに騙されていたんだぞ! それなのに継承権を剥奪だと? 兄上はどうなる! 俺だけがこんな目に……」
「黙れ、クラウス」
フリードリヒが初めて口を開いた。穏やかな兄の声には、今日は鋼のような硬さがあった。
「お前が被害者であることは認める。だが、お前の被害者はお前だけではない。リーゼ嬢がどれほどの辱めを受けたか。王都の民がどれほど苦しんだか。その全ての発端がお前の行動にある。被害者であることは、加害者でないことを意味しない」
クラウスは言葉を失った。
「処分は継承権の剥奪のみとする。王族の身分は維持するが、今後の役職は一切与えない。北方の名も出せぬような辺鄙な離宮で、おとなしく過ごすが良い」
国王がそう締めくくると、クラウスは糸が切れたように椅子に崩れ落ちた。
審問が終わり、貴族たちが三々五々広間を出ていく。
クラウスは一人、椅子に座ったままだった。広間は空になりつつあるのに、誰一人として声をかけに来ない。
ほんの数ヶ月前までは違った。取り巻きが群がり、追従の笑みを浮かべ、第二王子の機嫌を取ろうと必死だった。それが今は、誰もいない。
「殿下」
声をかけたのは、リーゼだった。
広間の出口に立ち、振り返ってクラウスを見ている。アルヴィンがその傍らにいたが、何も言わずに待っていた。
「リーゼ……」
「一つだけ申し上げます」
リーゼの声は穏やかだった。恨みも憎しみもない、澄んだ声。
「私はもう殿下を恨んではいません。あの舞踏会がなければ、私は自分を見つけられなかった。北方にも行けなかった。だから、ある意味では感謝しています」
クラウスの目が見開かれた。
「でも、これだけは覚えていてください。人の価値は、見た目の華やかさでは決まりません。殿下がそれに気づく日が来ることを、祈っています」
リーゼは小さく一礼し、背を向けた。
アルヴィンと並んで広間を出て行く。その背中は真っ直ぐで、光に満ちていた。
クラウスは一人残された広間で、拳を握りしめた。
目の奥が熱い。それが何の感情なのか、クラウス自身にもわからなかった。後悔なのか、悔しさなのか、あるいはもっと別の何かなのか。
ただ一つわかったのは、自分が手放したものの大きさだった。
それを取り戻す術は、もうどこにもなかった。
クラウス第二王子の処分だ。
クラウスは末席に座ったまま、顔面蒼白で動けずにいた。ミレーユに薬を盛られていたという事実は、この場で初めて知ったのだ。裏切られた怒りと、自分が操られていた屈辱が綯い交ぜになり、思考が追いつかない。
「クラウス・フォン・エルステリア」
国王の声が広間に響いた。
「立て」
クラウスはよろめきながら立ち上がった。
「お前はミレーユの薬によって判断力を損なわれていた。その点については情状酌量の余地がある」
クラウスの顔に一瞬、安堵が浮かんだ。だが国王の言葉は続いた。
「しかし、薬の影響を差し引いても、お前の行いには弁解の余地がない」
安堵が凍りついた。
「聖女を公衆の面前で辱めた行為は、薬のせいだけでは説明がつかない。お前にはもともと、リーゼ嬢を軽んじる心があった。華やかさを求め、本質を見る目を持たなかった。それは薬の問題ではなく、人格の問題だ」
クラウスが唇を噛んだ。
「さらに、ミレーユの素性を見抜けなかった責任がある。聖女の力を検証もせずに信じ、婚約者を切り捨てた。王族としての判断力の欠如は致命的だ」
国王は重臣たちを見渡した。誰一人として、クラウスを擁護する者はいなかった。
かつてクラウスの取り巻きだった貴族たちは、蜘蛛の子を散らすように目を逸らしている。権力の風向きが変わった今、クラウスに味方する利はない。
「以上を踏まえ、クラウス・フォン・エルステリアの王位継承権を剥奪する」
広間にどよめきが走った。継承権の剥奪。それは王族として事実上の死刑宣告に等しい。
「異議は」
「ある!」
クラウスが叫んだ。
「俺は被害者だ! ミレーユに騙されていたんだぞ! それなのに継承権を剥奪だと? 兄上はどうなる! 俺だけがこんな目に……」
「黙れ、クラウス」
フリードリヒが初めて口を開いた。穏やかな兄の声には、今日は鋼のような硬さがあった。
「お前が被害者であることは認める。だが、お前の被害者はお前だけではない。リーゼ嬢がどれほどの辱めを受けたか。王都の民がどれほど苦しんだか。その全ての発端がお前の行動にある。被害者であることは、加害者でないことを意味しない」
クラウスは言葉を失った。
「処分は継承権の剥奪のみとする。王族の身分は維持するが、今後の役職は一切与えない。北方の名も出せぬような辺鄙な離宮で、おとなしく過ごすが良い」
国王がそう締めくくると、クラウスは糸が切れたように椅子に崩れ落ちた。
審問が終わり、貴族たちが三々五々広間を出ていく。
クラウスは一人、椅子に座ったままだった。広間は空になりつつあるのに、誰一人として声をかけに来ない。
ほんの数ヶ月前までは違った。取り巻きが群がり、追従の笑みを浮かべ、第二王子の機嫌を取ろうと必死だった。それが今は、誰もいない。
「殿下」
声をかけたのは、リーゼだった。
広間の出口に立ち、振り返ってクラウスを見ている。アルヴィンがその傍らにいたが、何も言わずに待っていた。
「リーゼ……」
「一つだけ申し上げます」
リーゼの声は穏やかだった。恨みも憎しみもない、澄んだ声。
「私はもう殿下を恨んではいません。あの舞踏会がなければ、私は自分を見つけられなかった。北方にも行けなかった。だから、ある意味では感謝しています」
クラウスの目が見開かれた。
「でも、これだけは覚えていてください。人の価値は、見た目の華やかさでは決まりません。殿下がそれに気づく日が来ることを、祈っています」
リーゼは小さく一礼し、背を向けた。
アルヴィンと並んで広間を出て行く。その背中は真っ直ぐで、光に満ちていた。
クラウスは一人残された広間で、拳を握りしめた。
目の奥が熱い。それが何の感情なのか、クラウス自身にもわからなかった。後悔なのか、悔しさなのか、あるいはもっと別の何かなのか。
ただ一つわかったのは、自分が手放したものの大きさだった。
それを取り戻す術は、もうどこにもなかった。
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